【99%対1% アメリカ格差ウォーズ】レポート

【99%対1% アメリカ格差ウォーズ】
町山 智浩 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4062179962/

○この本を一言で表すと?

 2009年~2012年半ばまでのアメリカを現地のニュースを中心に取り上げた本

○面白かったこと・考えたこと

・日本でもよくニュースになっているアメリカの状況について、現地のニュースとそのニュースを配信しているところの背景も含めて取り上げているところが、様々なトピックに対してどう取り上げて、アメリカ人がどう捉えているかがよく分かってよかったです。

序章 オバマ大統領就任式―「自由」と「平等」のハルマゲドン

・オバマ大統領が就任演説ではかなり慎重な内容で話していたというのは初めて知りました。
日本のニュースでは話の内容についてはほとんど触れていない印象ですが、自国でもニュースではそれほど深く触れたりしないくらいなので、当然かもしれません。
「自由」と「平等」が大きく対立しながらオバマ就任以降は「平等」に向かおうとしていた流れも初めて知りました。

第1章 医療保険改革とティーパーティーの誕生

・FOXニュースの言いがかりに近い報道の仕方や裏を取らずに報道するというところ、そしてその視聴率の高さと影響力は、アメリカの「大衆」が一部の人間の恣意的な判断に左右されそうで怖いなと思いました。

・差別発言や格差を助長するような意見が、被差別側にも支持されたり、なんとなく弱者の抵抗運動・草の根運動のようなものと思っていた「ティーパーティー」がむしろ富裕層の利権確保の方向に活動している団体だったり、意外な事実を知ることもできました。

・医療保険改革のような大多数に支持されそうな政策も「アメリカ的でない」というもやっとしたイメージで十分に反対勢力をつくり上げることができるというのは「アメリカ的」だなとも思いました。

第2章 保守vsリベラル 壮絶メディア・バトル

・根拠のない意見等を垂れ流すメディアに対して、その根拠のなさなどを指摘したり茶化したりするメディアもあるというのは、少しは健全な方向にメディアを引き戻す話だと思いました。
保守派のFOXニュースに対して過激左派のニュースが逆方向に極端な意見を出したり、メディア同士の対決やそれに乗っかる大衆の動きなど、全部まとめて一つのイベントのようなものかもしれないなと思いました。
そのイベントの趨勢で世論、さらには政治が動くという流れも怖い気がしますが。
メキシコ移民に対する差別的な法案が通ったり、州ごとの人権意識も異なっていて、「自由」だけではない国だなと思いました。

第3章 オバマがイスラム教徒だと信じるアメリカ人

・オバマの出生について攻撃するバーサーズや、ガセネタ記事をつくり上げるプロの存在は、非正規な手段を取る人物やグループが割と堂々と動いているイメージでした。
いろいろな思想的に対立する人物を襲撃するように示唆する団体やニュース番組まであるというのは、過剰に「自由」なのかもしれないなと思いました。

第4章 1%が動かす茶会と99%の占拠運動

・ティーパーティーにしても99%占拠運動にしても、その時々の中心人物の行動によって大多数の思惑とは違う動きになっているのは興味深いなと思いました。
アメリカがデフォルトになる直前になっていたニュースを覚えていますが、それを主導していたのが富裕層側のティーパーティーだったという自己矛盾が結実するところまでいきかけていたといのは、誰かの思惑で始まってもその誰かの利益に常になるわけではないということが分かって面白いなと思います。

第5章 「ハゲタカ」ロムニーと「ヘタレ」のオバマ

・ロムニーがモルモン教徒というのは有名で知っていましたが、ファンド側で活躍していた人物というのは知りませんでした。
PAC(政治活動委員会)の設立が合憲になったという流れと、そのPACが利益誘導の温床になるという事実は、当たり前の流れながら、利益を得たい者が得やすい方向に流れているなと思いました。

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