• 様々な本、様々な資格の話が盛りだくさん(の予定)

【フランス7つの謎】レポート

【フランス7つの謎】
小田中 直樹 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4166604279/

○この本を一言で表すと?

 社会学者の視点によるフランスに関すること、フランスと日本の違いに関することのエッセイ

○この本を読んでよかった点、知ることができた点

・各章末の読書案内が充実していました。かなり読みやすい本ですが、フランスだけでなく日本についての本などもしっかり読んで咀嚼された上で書かれた本なのだなと思いました。

第1の謎 なぜ政教分離をめぐって延々と議論が続くのか

・日本の政教分離とフランスの政教分離は正反対の性質を持っていることが書かれていました。
日本では宗教に対して寛容であることを意味しますが、フランスでは宗教的なものを厳密に禁止することを意味するそうです。

・少し前にイスラム教徒の女生徒がスカーフを着用して登校することが禁止されたニュースがあり、日本ではイスラム教を排する行動のように報道されていましたが、あれは宗教的なものを公立学校では禁ずるという意味で、キリスト教の十字架やユダヤ教の帽子も禁止されているそうです。
背景としては、旧体制(フランス革命より前)のフランスではキリスト教の教会が政府に対して強い力を持っていて、フランス革命を主導した共和派が旧体制を否定するために徹底的に政治から宗教を排するということになったそうです。

・「共和国の価値」として「反人種主義」があり、フランス国民と言う国民形成のために異質な文化(多様な宗教)に不寛容ということに繋がっているそうです。
日本の場合は「単一民族国家」という神話が人工的に作られたために文化的には多様でも国民形成ができるという背景があり、結果として多民族に対して不寛容になっているそうです。

第2の謎 なぜいつでもどこでもストに出会うのか

・フランスではかなりストが多いそうですが、それには歴史的な背景があるそうです。
19世紀末にフランスで労働運動が活発化して、労働者が生産手段を持つ「社会主義国家」の実現を目指し、その実現手段が「ゼネラル・ストライキ」という革命・・・という「革命的サンディカリズム」という思想が広まったそうです。
この思想にはソ連のような「国家による管理」ではなく、「労働者による管理」を目指すという方向性があり、フランスの個人主義にも繋がっているそうです。
そして個人主義の限界から団体主義に繋がり、団体主義が直接行動としてのストライキに繋がっているそうです。

・ストライキに反対の声があまり上がらないそうですが、「いつか自分もストライキをする番が来る」という「おたがいさま」の心性があるからなのだそうです。

第3の謎 なぜ標識がバイリンガル表記なのか

・フランスではフランス語と英語・・・ではなく、フランス語とブルトン語のバイリンガル表記などがあるそうです。
この表記は「地域主義」に基づくものだそうですが、そこに至るまでは中央集権が長い間中心的だったそうです。

・元々フランスが各領主によって治められる領地の集まりでフランス国王もその一人だったころから、フランス国王が王権を強化する「絶対主義」政策で中央集権を図り、1539年にフランソワ一世が「ヴィレル・コトレの勅令」ですべての表記をフランス語に統一したそうです。
それからフランス革命で国民国家となり、その国民形成のために中央集権がより進み、ようやく第二次世界大戦後に地域主義が見直され、1980年代にバイリンガル表示がやっと認められたそうです。

・地域主義には地方分権と地方文化の尊重という2面がありますが、日本では地方文化の尊重があまり語られることはないそうです。

第4の謎 なぜマクドナルドを「解体」すると拍手喝采されるのか

・1999年にミヨの建設中のマクドナルドの店舗にデモ隊がおしかけ、建物の一部が「解体」されるという事件が起き、しかもそれを肯定するかどうかの大論争が起きたそうです。
この背景には、他者の経済活動や所有権に介入してもよいという「経済介入主義」という思想があるそうです。
この適用例として18世紀の「小麦粉戦争」という食料騒擾が挙げられていますが、これは社会的に妥当な「公正価格」を求めて介入する「代執行」という観念に該当するそうです。

・市場メカニズムとは別に存在する民衆の経済観念を「モラル・エコノミー」といい、「経済介入主義」を認める考え方も含まれるそうです。
また民衆だけでなく、政府が経済に介入する政策や思想を「ディリジズム」とうそうですが、これもフランスでは認める風潮が強く残っているそうです。
日本の米騒動がこれに当たるそうですが、戦後の日本では「モラル・エコノミー」的な観念が跡形もなくなっているそうです。

第5の謎 なぜアメリカを目の敵にするのか

・フランスはアメリカと距離を置く戦後の大統領ドゴールの路線「ゴーリスム」で距離を置いたり、感情的にもアメリカに対抗意識を持っていたりするそうです。
その過程には、アメリカ建国時からアメリカをフランスより理想的な国家だとする考え方、産業的に強国となったアメリカに対する羨望と危機感からマイナスイメージだけが残ったと説明されていました。
その表れとしてアメリカの英単語をそのまま受け入れず、フランス語を開発するという行動があるそうです。
例えば「コンピュータのソフトウェア」は「オルディナトゥールのロジシエル」と訳語を作るのだとか。

第6の謎 なぜ大学生がストライキをするのか

・フランスでは大学生が大学の設備が悪劣であるとしてストライキを起こしたりするそうです。
その原因として日本以上の学歴主義があるそうです。
フランスでは通常の大学ではなく、グランドゼコールと言われるエリート養成校を卒業しないとエリート路線に乗れないというかなりの狭き門になっていて、そこから漏れると就職困難にさえなってしまうそうです。

・日本も戦前は「すえは博士か大臣か」と高学歴になればエリートの道が開ける超学歴社会でしたが、今はだいぶ事情が変わっているそうです。

第7の謎 なぜ美味しいフォーやクスクスが食べられるのか

・フランスではフランス料理以外のベトナムのフォーやマグレブ地域のクスクスなどを提供する店がたくさんあるそうです。
その原因として過去のフランス植民地からの移民や難民という太い繋がりができ、各地域との結びつきが強いことがあるそうです。