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【農業がわかると、社会のしくみが見えてくる 高校生からの食と農の経済学入門】レポート

【農業がわかると、社会のしくみが見えてくる 高校生からの食と農の経済学入門】
生源寺眞一 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4259518372/

○この本を一言で表すと?

 食料・農業についてわかりやすく噛み砕いた本

○この本を読んでよかった点

・元東京大学農学部部長、現名古屋大学農学部教授の著者が、平易な言葉で食料や農業についてわかりやすく書いていて、食料や農業についてのいろいろな見方を知ることができました。

一限目 食料危機は本当にやってくるのか?

・米・小麦・トウモロコシの三大穀物と大豆とイモ類の5品目が基礎的な食料であり生活必需品で、供給量の変化に対して価格が大きく触れること、2007年・2008年の値上がりは1.投機資金が流れ込んだこと、2.トウモロコシが燃料として消費され穀物の需要を押し上げたこと、3.輸出禁止措置を講じた国が最大12ヶ国にもなったこと、の3つの要因が重なって起きたことが分かりやすく書かれていました。

・1990年代半ばの食料需給予測はほとんどが価格低下を示していたところが、2008年の食料危機で一転して価格上昇を示すようになったのは、一つの要因で予測が大きく変わることを示していて不安定だなと思いました。

・人口増加率が穀物生産の増加率を上回っている現在の状況はマルサスの食料危機の悲観論を思わせます。豊かになると穀物を食べなくなること、肉は数倍の穀物が必要になること、今後発展途上国の生活が向上することから、食料消費量が加速することは「食の終焉」という本でも書かれていましたが、かなり根深い問題だなと思いました。

二限目 「先進国=工業国、途上国=農業国」は本当か?

・穀物は国内で生産した分の大部分が国内で消費される構造になっていて、他地域に輸出可能な余剰分が存在するのは先進国側だというのはなるほどなと思いました。
先進国では日本や韓国のように輸入の方が大きい例外もありますが、発展途上国ではほぼ輸入超過になっていること、その原因は人口増加に対して食料の生産性が追い付かないことなどは因果関係がはっきりしているなと思いました。

・EUとアメリカの農業保護政策の成立理由と対立状況、GATTのウルグアイ・ラウンドの背景などもよく理解できました。
発展途上国では工業化を志向し、農業に対して酷な政策を採りがちだと書かれていましたが、国際情勢系の本を読んでいても確かにそうだなと納得できました。

三限目 自給率で食料事情は本当にわかるのか?

・「自給率」という言葉はよく聞きますが、「カロリー自給率」「生産額自給率」「穀物自給率(重量ベース)」と何を基準にして考えるかで数値も意味合いも変わってくることがよく分かりました。
必需品である穀物の穀物自給率が高いからといって栄養不足でないとは限らないという点も、計算式が「自国供給量/時刻消費量」なので、消費自体が足りていなければ数値が高くなってしまうためにバングラデシュの98%で栄養不足という例でよく理解できました。

・「自給率」より「自給力」が必要であるという話も、国民全体が必須カロリーを摂取できる生産能力が存在するかという食料安保の考え方から考えれば納得です。
外交がうまくいっていれば貿易が途絶えることがないのでは、という話も聞いたことがありますが、何かあったときに対応できるか対応できないかの違いが危機に対する安心度合いに関わってくるという話も納得できます。
農業保護政策の必要有無・程度の問題は「自給力」を満たせるかどうかで図り、過剰でも不足でもだめだという著者の考え方には説得力があるなと思いました。

四限目 土地に恵まれない日本の農業は本当に弱いのか?

・日本の農業全体が強いか弱いかではなく、どこが強いか弱いかという話に踏み込んでいてわかりやすく納得できるなと思いました。
農業を土地利用型農業と土地集約型農業に区分して別に議論するのはその強み・弱みが異なることから有用だと思いました。
日本の農業では水田などの土地利用型農業が弱いようです。
収益が乏しい小規模な農家が多く、また経営主の平均年齢が65歳を超えていたり、世代交代が進まなかったり、稲作農業自体の持続可能性が危ぶまれているそうです。
欧米のように大規模にやればいいのではと私は今まで考えていましたが、日本の土地形成上、10ヘクタールを超えると効率性向上が止まるという話を初めて知りました。
改善策として、1.集約型農業と兼ねる、2.生産物の価値を高める、3.農産物の加工や販売への取り組み、の3つが挙げられていますが、こういった改善策を実施していかないとこれからも先細りになってしまうのだろうなと思いました。

五限目 食料は安価な外国産に任せて本当によいのか?

・貿易を進める比較優位の法則によると、海外に食料生産を任せてしまった方がよいとなるけれど、農業の外部性に着目して日本の農業が必要だという話はなるほどと思いました。

・水源涵養、洪水防止、景観形成に合わせて農村コミュニティ自体も重要であるという見方はそういう一面もあるのだなと改めて考えさせられました。