• 様々な本、様々な資格の話が盛りだくさん(の予定)

【町工場・スーパーなものづくり】レポート

【町工場・スーパーなものづくり】
小関 智弘 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4480426647/

○この本を一言で表すと?

 ものづくりにずっと携わってきた著者が出会ったものづくりの事例集

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・私は元々ものづくりに携わる人の技術ってすごいな、と思っていた方ですが、どのような考え方をして、具体的にどのような工夫をしているか、いろいろなタイプや事例を通して知ることができてよりそのすごさがわかるようになった気がします。

・「最新の」「ハイテクの」という修飾詞がつくと自然とコンピュータや大型の機械を思い浮かべますが、最高精度を誇るような技術はまだ手作業によって行われていて、その技術が標準化されてようやく機械が追い付いてくるという事情がわかってイメージが大きく変わりました。
この本が書かれてから十年以上経っていますが、実情はそれほど変わらないのかなと思いました。

第一章 技術はだれのため、なんのため?

・伊勢神宮の遷宮が20年に一度というのは技術の継承のためでもあるというのは聞いたことがありますが、そこで使う和釘など、道具の継承までは生計を立てることができない業者がでてきて、それを全く別の地域で継承していったプロセスが書かれていて、時代を経ても継承されている技術はその裏でいろいろな苦労があるのだなと思いました。

・電力会社の技術者が台風の時などに命を懸けて仕事する様は本当に「仕事人」として生きていて格好いいなと思いました。
そんな技術者との比較で「風と共に去りぬ」に登場する奴隷がその奴隷より位置づけが下の牛乳を搾る仕事を自分でやるという考えが及ばず、「お嬢さま、それで牛乳は誰が搾るんだね」と尋ねるシーンがあり、現代の若い社会人もこの奴隷の方に近づいていないかというのは私も同様の印象を受けました。

第二章 手先が器用でないと、工場で働くのは無理か

・P.45の基盤的技術・中間技術・特殊技術の技術の集積構造の図は、基盤的技術の幅がその応用としての技術の進化に対応するために必要だということがうまく説明できているなと思いました。
ただ、この構造は日本の基盤的技術が薄くなることで優位性が落ちていくのではないかという危惧も覚えました。

・鉄の性質「可融性」「展延性」「切削性」に対応したそれぞれの職人がいること、それぞれの職人が他の職人が容易に参入できないほどの技術を持っていることは、職人の技術の幅広さ、多様さを感じます。

・不器用であればそれだけ工夫する、という道具を工夫することで不器用さを補う職人の言葉はすごく説得力があると思いました。
器用さという職人にとって重要な資質がなくてもそこで諦めずに他の手段を検討するのはすごいなと思いました。

第三章 いまも生きている技術・技能

・サイコロに効率的に彩色する方法として、全部染めて里芋の皮を削るように彩色した塗料を削って塗りたいところだけ残すという発想の転換はすごいなと思いました。

・ヘラ搾りのようなある意味手作業的な、機械の動きのイメージがしない動きで鍋・釜を作る技術がそのカーブを見事に作る技術として他の物の製造にも利用されていること、神社の鈴を作っている会社が同じ技術でH2ロケットのパーツを作っていることは、技術というものの応用の可能性を感じさせるなと思いました。

第四章 人の感性と手の技、超精密機械はいまも人の手で

・百分の一ミリという世界を人の感性で理解できることを確かめるために人間の髪の太さの違いがちょうどそれくらいでだれでもその世界を判別できるというのは面白く、このことを教えられた高校生が興奮したのもわかる気がします。

・フェラーリ社が岡山市の中小企業が制作しているMC(マシニング・センタ)を採用したという話は初めて知りました。圧倒的な精密性を備える機械を製作できる日本企業の力はすごいなと思いました。

第五章 知恵と勇気とちょっぴりのお金

・非球面レンズの効率性と、製作の難しさゆえにプラスチックでしかできなかったことを初めて知りましたが、その難しさを乗り越えてガラスで大企業が研究してもできなかったことを小さな工場の人が完成させたこと、さらに量産化に向けて先を見て開発を続けているというのはすごいなと思いました。

・指が切れないプルトップも開発したのが日本の一工場だったというのは初めて知りました。

・金型を作る技術を磨き続け、2つの大きな障害を負っても技術者として大企業にも望まれる力を持った人の話には、「芸は身を助く」という言葉を思い起こされました。

第六章 あっと驚く工夫のかずかず

・全て手作業が望ましいわけではなく、必要であれば機械で自動的に精度が良いものを作る必要ができ、古い人たちが働きにくくなることがあるそうです。
ニーズにあった能力を持っていないといけないのは職人でもそれ以外でも変わらないのだとも思いました。

・最新の機械も使いこなしてこそ、使いこなせれば手足として、強力な武器となる、というのは機械でなくてもそういう面があるなと思いました。

・月の重力が原因で精度が狂っていた話は、機械を扱う時の条件の多さや狭さなどが自然環境までが影響するレベルになるのだなと思いました。

第七章 工場の“工”は“たくみ”

・捨鐘の話で時刻を知らせるための鐘を人びとの注意を促すために小さく数回ならすことや、真冬の東北では鐘を温めるために10回軽く打つなど、鐘をつくだけでもいろいろな事情や考え方があるのだなと思いました。

・「旋盤師⇒旋盤工⇒旋盤要員」という流れが道具を大事にすることと使い捨てることの意識の違いから生まれてくるというのはなるほどと思いました。