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【FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実】レポート

【FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実】
ボブ・ウッドワード (著), 伏見 威蕃 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4532176522/

○この本を一言で表すと?

 実力派ジャーナリストによるトランプ政権の内幕の本

○面白かったこと・考えたこと

・以前同じようなコンセプトの「炎と怒り」を読みましたが、「炎と怒り」はスティーブ・バノンを中心に描かれていて、かなり偏った内容が多かった印象がありますが、この本はトランプ以外が原因の時はそれを明示していたり、ある程度客観的な視点が保たれていると思いました。
「炎と怒り」の内容が真実ならすぐにでもアメリカがとんでもない方向に行ってしまいそうでしたが、この本が真実だとしても、行政の仕組み等はうまく回っていて、現在のアメリカの状況に確かに繋がっているという印象を受けました。
この本はかなり事実に近い内容を述べているように思えました。
この本の第36章の冒頭で「炎と怒り」について触れていて、スティーブ・バノンが主な情報源だとされていて納得しました。
「炎と怒り」では、スティーブ・バノンと対立していたラインス・プリーバス等がかなり否定的に、あまりなにもやっていないように描かれていましたが、この本では大統領首席補佐官としての仕事をかなりこなしているように描かれていました。

・イヴァンカ・トランプの評価はいろいろな本やニュースでもあまり変わらないですが、ジャレッド・クシュナーの評価は本によって結構変わるなと思いました。
「炎と怒り」ではイヴァンカと同様の政治を何も知らない無能扱い、「ピーター・ティール」ではIT業界にも政治にも精通した類まれな有能扱い、この本ではある程度能力があり、サウジアラビア等への人脈を辿って問題を解決するところなども描写されていました。

・トランプの命令で作成した指示書を隠すことで、やり過ぎな外交政策等を回避してきた流れは面白いですが、大統領の権限の侵害等かなり綱渡り的な危なさがあるなと思いました。

・辞任する人に対しての配慮等が欠けるところが、おそらく事実に近い形で描写されていましたが、これは辞めた後のトランプ政権の情報のリークが、悪意のある形で流れてもおかしくないなと思いました。
配慮よりトランプが最初に情報を流す、という自己顕示欲だけでツイッターを流したり、周囲の人間が唖然とする様子が目に浮かびました。

・貿易赤字に対する感覚、外交政策、誰を優先するかなど、トランプ政権になってから優先順位が変わっていますが、アメリカ大統領の歴史ではその優先順位が変わることは結構あったように思いました。
トランプ政権になってからの変化の幅がかなり大きいのは確かだと思いましたが。
選挙の時から主張していたことを実行している、というだけのことだったりしますが、選挙で投票する人たちがある政策を採った時にどうなるか、因果関係等まで考慮できていたのか、民主主義的な体制の中でのわかりやすいポピュリズムに流されるということの怖さも感じました。

・最終的な決定だけではなく、ある問題についてどのような意見が出て、どのように議論されているかも各章で書かれていたので、意見を提示している人たちがそれなりに根拠をもって発言し、対立していたりしているのは、国際情勢や地政学の知識に繋がって興味深いなと思いました。

・「これだけは譲れない」というところを侵害すると、それまで耐えてきた人が辞めていく、そういう一線を越えるシーンが何度か出てきたのが印象的でした。
特にゲーリー・コーンが辞任状を持っていくところが印象に残りました。
いじめの加害者と被害者の関係のように、行った側がそれほどのことをやったと思っていなくても、行われた側の受け止めたことが非常に大きなことだったりすることは日常でもあり、気を付けないといけないなと改めて思いました。

・この本は2018年9月11日にアメリカで出版された本ですが、数ヶ月経過すると既に古い内容になってしまっているところもあり、トランプ政権の動きの速さには改めて驚かされるなと思いました。
ラインス・プリーバスの後継で大統領首席補佐官になったジョン・ケリー、国防長官のジェームズ・マティスなど、この本では最後まで耐えていた人物が辞任していたりして驚きました。

・AFPの「【特集】トランプ政権を去った高官たち」というWEBページを見て、元広報部長のソニー・スカラムチの顔がコメディに出てきそうな詐欺師みたいで笑いました。

○つっこみどころ

・語句の順番が少し変で、真逆の意味に捉えてしまいそうな文章もありました。直訳の雰囲気を残しているのか、アメリカで出版されてから急いで翻訳していたのでこだわっている時間がなかったのかもしれませんが。

・巻末の「情報源について」でプロローグも含めて全ての章に「本章の主な情報は、・・・ディープ・バックグラウンド・インタビューによる。」が書かれていました。
アピールしたいのかもしれませんが、冒頭で書けばいいのにと思いました。

・各章の関係が、ある程度各章ごとに内容がまとまっているのは分かりますが、ぶつ切りになっていて、時系列でもなくトピック別でもなく並べられているので、一気に読み通せば問題なさそうですが、背景を知らない人が時間をかけて読むと、何が書いてあったか分かりづらくなりそうだと思いました。

・各章の最後の文がどれも印象の強い内容になっていましたが、後の章でその続きが書かれてひっくり返されそうな書き方がされてあって、最後まで特に触れられていなかったりして、紛らわしいなと思いました。