• 様々な本、様々な資格の話が盛りだくさん(の予定)

【トルコを知るための53章】レポート

【トルコを知るための53章】
大村 幸弘 (著, 編集), 永田 雄三 (著, 編集), 内藤 正典 (著, 編集)
https://www.amazon.co.jp/dp/4750335711/

○この本を一言で表すと?

 トルコの歴史について半分以上割いて、その後で生活習慣や国内・国外の情勢について触れた本

○この本を読んで興味深かった点

第2~5章コラム1

・トルコでいろいろな年代の遺跡が存在しているというのはシュリーマンの「古代への情熱」などで書かれていましたし、オスマン帝国が排他的で許可を取ることに苦労した話もありました。
トルコ共和国になっても自国の力で発掘する傾向だったというのは初めて知りました。
ケマル・アタテュルクが自国のアイデンティティ確立のために率先して遺跡の発掘に携わっていたというのも初めて知りました。
国家を設立したばかりの状態で内政等もいろいろ手がかかったと思いますが、その中で優先していたというところに国家アイデンティティ確立がどれほど必要であったかが分かるような気がします。

第12章

・オスマン帝国と西欧世界が密接に交流していて、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロが橋の建設で営業をかけていた証拠が残っているのは面白いなと思いました。

第16章、第33章、第34章、コラム6

・トルコ音楽の音階の繊細さ(ドとレの間を9分割)に驚きました。それだけ音楽文化が違う中で西欧の音楽を取り入れ、またトルコが西欧に音楽の影響を与えたというのは面白いなと思いました。

第25章

・エルトゥールル号事件でトルコが親日国になったという話はいろいろな本で知りましたが、それだけのバックボーンがありながら、日本がトルコに不平等条約を締結させようとしていて国交が樹立できず、事件から50年近い歳月が過ぎた第一次世界大戦の講和条約でやっと樹立できたというのはある意味当時のアジアの強国意識が強かった日本らしいなと思いました。

第27章

・ケマル・アタテュルクの、敗戦で国土が占領されるところを食い止め、臨時政府を樹立し、攻めてきたギリシャとの戦争に勝利し、オスマン帝国を滅亡させ、国民のほとんどがイスラム教徒である中で「世俗主義」や「トルコ国民主義」を体制原理としたトルコ共和国を建国した、という業績はとてつもないなと思いました。

第28章

・ケマル・アタテュルクが側近に命じて、19世紀のヨーロッパの「中央アジアで最古の文明を築いたのはアーリア人である」という考え方をそのままトルコ人にすり替えた「トルコ史の基本路線」を1930年に出版させたというのは面白いなと思いました。
韓国でも「孔子は韓国人」という説を公表したりしていましたが、国家統合のイデオロギー形成はどこも同じようなやり方をするのだなと思いました。

第30章

・トルコではイスラム教徒の割には酒が飲めるのは不思議だと思いましたが、それも世俗主義の一環だったのかなと思いました。
今の与党である公正・発展党がイスラム志向であり、閉鎖空間での喫煙を禁止するなど、世俗主義からイスラム主義に徐々に移行しようとしている動きは面白いなと思いました。

第41章

・1994年で消費者物価上昇率125.5%、2001年2月の金利4018.6%という高インフレ高金利から順調に成長レベルまで引き戻した現在の首脳の手腕はとてつもないなと思いました。

第43章

・今までに読んだ新興国の本ではトルコは農業国のイメージでしたが、かなりの工業国(自動車生産16位、白物家電生産4位、アパレル輸出7位、鉄鋼生産10位、貴金属生産3位、など)ということを初めて知りました。
ただ、日本人と同じでオリジナルの発想に弱いというのは何となく納得できました。

第44章

・憲法2条で世俗主義、3条で国民と領土の絶対不可分が定められていて、その改正の発議すら憲法で禁じられているというのは、憲法改正が非常に困難な日本と状況が似ているなと思いました。

第46章

・最大の護憲勢力が軍で、今までに何度も憲法違反だった政府を解体してきたというのは珍しい国だなと思いました。
建国の父ケマル・アタテュルクが軍で国家を築き上げたことから現在に繋がっていて、実績と世論からこれまで軍の優位が乱されなかった状態から現在は政府優位になっているというのは面白いなと思いました。
インドネシアやエジプトなどの国家だと軍の力が強く、そちらにコネクションがないと政治を行うのも難しい状況ですが、トルコの現在の首脳に軍に関わりがある者がほとんどいないのは珍しいなと思いました。

第48章、第49章

・トルコのEU加盟問題で、ずっと加盟が悲願だった状態からむしろ冷静に見ることができるようになっていること、EU側は今なおトルコを見下していることなど、いろいろな考えや思い込みが入り乱れていて複雑だなと思いました。