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【タックス・ヘイブン――逃げていく税金】レポート

【タックス・ヘイブン――逃げていく税金】
志賀 櫻 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4004314178/

○この本を一言で表すと?

 タックスヘイブンの取締りに直接かかわってきた人の告白本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・タックスヘイブンの現場で起こる出来事が著者の実体験として書かれていて刺激的でした。
日本の政策立案にかかわった人の思考プロセスや起こした行動について当事者が伝えているというのは貴重な内容だなと思いました。

・一般市民がタックス・ヘイブンやマネー・ロンダリングによって被害を現に受けており、それを知ることが重要としています。
迂遠な話だなと思いつつも、まず数多くの人が知るところからしか手を付けられない、タックス・ヘイブンを取り締まることによる国民のコンセンサスが取れないと取り締まる方向にもっていくことが困難、ということは分かるような気がします。
ある業界の談合等を取り締まる際に、その取締りによる利益が大きくても一般人一人ひとりにとっては微小な利益しかないため、取締りに対する協力のインセンティブが発生しない、という話に似ているなと思いました。

第1章 タックス・ヘイブンとは何か

・タックス・ヘイブンやオフショアについての定義が分かりやすく説明されていました。

第2章 逃げる富裕層

・武富士事件、フィルム・リース事件、航空機リース事件、ハリポタ事件、UBS事件、LGT事件など、実際にあった事例を元に結果としての納税者側の勝敗まで書かれていて面白かったです。

・日本のジニ係数が先進国の中で高いことは知っていましたが、所得税負担率の図は高額所得者の方が中間層より負担率が低いこと、また見えない数字を入れるとさらに格差が広がることがよくわかり、興味深かったです。

第3章 逃す企業

・日本のケイマン諸島への直接投資の額がアメリカ、オランダに次いで3位と租税回避が盛んな国であることが書かれていました。

・オウブンシャ・ホールディング事件、大手銀行の外国税額控除余裕枠事件、オリンパス事件、AIJ事件が事例として挙げられていましたが、明らかに意図的に操作を行っていてかなり悪質だなと思いました。

・移転価格税制について初めて知った時、「どうやって各国の税の取り分を切り分けるのかな?」と疑問に思いましたが、実際にその取り分で揉めている事例が書かれていて納得できました。
税制自体が異なる様々な組み合わせの2国間の切り分けはかなり大変そうだと思いました。

第4章 黒い資金の洗浄装置

・五菱会事件、BCCI事件、北朝鮮秘密口座事件、HSBCマネロン疑惑事件について書かれていてそれぞれ生々しく、また大規模な組織が実行していると追及して清算させることができないこともあるなど、厳しい世界だなと思いました。

・マネー・ロンダリングの仕組みも併せて書かれていて面白かったです。テロの現場で何度も命の危険があった著者の体験談が書かれていて、その日本にいると非現実的な内容が面白かったです。

第5章 連続して襲来する金融危機

・過去20年のおもな金融・通貨危機についてそれぞれ流れを含めて説明されていて分かりやすかったです。
マネーの動きが大きな要因で、その動きを助長しているのがヘッジファンドとタックス・ヘイブンだと説明されていました。

・著者自身が国際会議で日本の金融危機について他国から協力を申し出られたことなど、現場の雰囲気や「世界が連動している」という感覚がよく伝わってきました。

第6章 対抗策の模索

・タックス・ヘイブンへの規制策、ヘッジファンドの規制策、銀行・証券・保険への規制策等がざっくりですが書かれていました。
税制策のあり方もいくつか触れられていました。
どういった思想で税の設計をするかは難しく、自国だけでなく他国のことも考慮すると一筋縄ではいかなさそうです。