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【現代フィリピンを知るための61章【第2版】】レポート

【現代フィリピンを知るための61章【第2版】】
大野 拓司 (編集), 寺田 勇文 (編集)
https://www.amazon.co.jp/dp/4750330566/

○この本を一言で表すと?

 フィリピンの各トピックを扱った入門本(歴史・文化寄り)

○この本を読んで面白かった点

・経済など、もう少し深掘りしてほしいなと思った分野もありましたが、フィリピンに関する基礎的な知識がある程度得られたように思いました。

Ⅰ 歴史を見直す

・フィリピン人はスペインに支配されてそう名付けられただけで、昔からそういった民族だと思っていましたが、全く異なる別の民族がたまたまそういう風にまとめられ、一部はスペインには支配されずにイスラム教国として独立していてアメリカの植民地支配に取り込まれたという歴史も初めて知りました。

・スペインの支配に対する独立運動が起こったらすぐにアメリカの支配を受け、アメリカに10年後の独立の約束を取りつけたら日本に支配され、と被支配の歴史が500年も続いた後で今があるというのはすごい話だなと思いました。

・アメリカの植民地だったフィリピンがなぜカトリックが主な宗教になっているのか、昔から疑問に思っていましたが、まずスペインがカトリックを広め、アメリカは宗教にはそれほどタッチせずに現地を間接支配する形を取ったから今でもカトリックが多いことが理解できました。

Ⅱ 社会と文化を読み解く

・フィリピンは教育水準が高い国だと認識していましたが、それは統計上の話で、実態としては小学校を卒業できない者が30%以上、高校に入学しても卒業できない者が50%いて、その理由としてまだ子供が労働力と見られる構造が残っていることが挙げられ、また教員不足や教員の給料遅配などの要因も挙げられていて貧富の格差が教育の格差に繋がっているというのは、なかなか根深い問題だなと思いました。

・フィリピンは英語とタガログ語が公用語で、言葉には不自由していない国だと思っていましたが、首都のマニラ近辺で話されていたタガログ語が他の地域に強制されただけで、他の地域では公用語ではない非タガログ語が使われているというのは初めて知りました。
島嶼国家で各地域が海で隔てられていることを考えれば当たり前の話かなとも思いました。

・フィリピンのカトリックが、聖地すらフィリピン国内に移転したことにしてしまったり、元々あった精霊信仰と習合したり、さらに独自の最後の神の使いをフィリピン人とするあたりは、日本の神仏習合や韓国のキリスト教に似ていて、これもアジア全体の特徴なのかなと思いました。

・マルコム独裁を市民革命で打倒した文化から市民社会が発展し、NGO出身の政治家が出たり、社会の活動の大きなステークホルダーになっているというのは面白いなと思いました。
フィリピン女性は一般的に発言力が高く、その理由として女性が労働力としての社会参加を阻止されたことがないということ、またその分、女性が社会的な負担を男性よりも多く請け負うこともあることなど、ある面では理想に見えることが実態としては裏があるのだなと考えさせられました。

・フィリピンのジャーナリズムが、政府や政治家に度々弾圧されながらも根強く生き残り、ラジオ局のリポーターが立てこもり犯と交渉するようなバイタリティを持っているというのは日本のマスコミなどとは違って面白いなと思いました。

・フィリピンでは警察と犯罪者の境界線が曖昧というのは昔から聞いたことがあり、この本で実例を読んで想像以上だなと思いました。
警察が強盗団を皆殺しにして盗んだ金をさらに強奪する話などを知ると、日本の警察のクリーンさに改めて感心します。

Ⅲ 政治を分解する

・大統領に誰がなるかによって、議会の議員が政党を移籍することが当たり前という国はあまり聞いたことがなく、面白いなと思いました。

・今はどうかわからないですが、昔はフィリピンの選挙でお金を渡すことが大丈夫だったという話を聞いたことがあります。
権益が大きいだけに大きなお金が動くのだろうなと思いました。

・地方政治家が自治体の職員の採用を決定し、中央からの利益の配分を決めるということで、ある意味政治主導だと思いますが、大いに権限濫用されることが多く、「政治主導」ということが良いことに直結するわけではないことがよくわかる事例だなと思いました。

・戦後に独立した国ではどこでも独裁者が出てきますが、マルコスは他国の独裁者に比べたらまだマシかなと思えました。

・民族主義的なナショナリズムによって、少数民族や中国系移民が不利な立場に置かれたり、多数派に攻撃されたりするのは、他の国について書かれた本でもよくみられることで、どこでもあるのだなと思いました。

Ⅳ 経済の実態を知る

・フィリピンの経済構造が、農業従事者と非農業従事者で人数の割合はそれほど変わらずに収入の割合が大きく変わるのは第二次産業、第三次産業に移行していく国ではどこでもみられることだなと思いました。

・サリサリ・ストアなどの小売店による小口経済や地場産業が各地に残っていることとは、都市部との違いが大きく出ているなと思いました。

・東ASEAN成長地帯と一部としてミンダナオ等を発展させるという計画で、工業化ではなく農業の更なる発展としているのは、仮にこの一帯が成長してもフィリピンが受けられる恩恵は少ないのではと思いました。

・マルコスが進めた農地改革がマルコス政権期にはそれほど進まず、それ以後に実を結んだというのはなかなか興味深かったです。

・フィリピンが鉱山資源に富んだ国だということは初めて知りました。金3位、銅4位、ニッケル5位、クロム6位はなかなかすごいなと思いました。
まだ見つかってない海洋資源や中国等と係争中の地域も合わせるとさらにすごいことになりそうだなと思いました。

・ピナトゥポ山の噴火、台風の直撃など、自然災害に何度も襲われることとその対策が取れていないというのは、なかなか大変な話だなと思いました。
経済がバブルではなかったことでアジア通貨危機のダメージが小さかったというのは皮肉な話だなと思いました。

Ⅴ 国際関係から知る

・フィリピンが侵略されていたアメリカや日本との貿易で成り立っていること、ASEAN内でもアメリカに最も近い国ということで発言力を保っているというのは、ある意味柔軟な国なのかなと思いました。

・フィリピンは他の国の本で出稼ぎに来ている人としてよく登場していましたが、総人口の8分の1ほどの人が海外で働き、海外からの送金がGDPに与える影響が大きいというのはすごいなと思いました。

・フィリピン人が「エンターテイナー」として日本に流入し、今では日本人と結婚して流入する人が多いという実態は、なかなか考えさせられる話だなと思いました。