【ネパールを知るための60章】レポート

【ネパールを知るための60章】
日本ネパール協会 (編集)
https://www.amazon.co.jp/dp/4750313289/

○この本を一言で表すと?

 ネパールに関するトピック集

○この本を読んで面白かった点・考えた点

・全体的にまとまりはなかったですが、情報量が多い本でした。

・私が購入したのは初版第5刷で2012年7月5日発行でしたが、初版第1刷発行の2000年9月25日から全く情報が更新されずに12年経っても発行されているというのは、それだけネパールの情報に詳しい者が少なく、本が少なくないのだろうなと思いました。

Ⅰ 変わりゆく生活習慣

・ヒマラヤ、エベレストの観光資源としての価値が産業の発達していないネパールでは大きな位置を占め、ゴミ問題などが発生しているというのは仕方のない面であり、今はどうなっているのだろうかと気になりました。

・自力で徐々に発展したのではなく、開発援助などで一気に発展したカトマンズで廃棄物や環境汚染の問題が発生するのは当然の帰結かなと思いました。

・伝統建築が人口過多による住宅事情により壊されていくというのは、何を優先するかという問題で当然起こり得る話だなと思いました。

・グルカ兵の評価の高さとずっと扱いが悪く傷病保証金等も本国の者に比べて格段に低い話は前に聞いたことがありましたが、具体的な数字等が分かってよかったです。

Ⅱ 民主化後の社会変化

・1990年にネパールで民主化運動による革命がおこり、憲法改正等の大きな動きがあったことは初めて知りました。その結果できた憲法が国王派、コングレス党(連合政党)、共産党の妥協の産物でありながらも全体としては民主的な憲法となったのは十分に大きな動きだと思います。

・1962年憲法で政党禁止になって1990年憲法でようやく解除されたという流れも初めて知りました。

・1998年時点で一人当たりGDPが200ドル程度というのはかなりの低さだなと思いました。購買力平価に換算すると5倍以上になるそうですが、それでも厳しい状況だと思います。

・インド西部のジャイナ教徒であるマルワリ族がネパールの経済を牛耳っているのはインドでも富裕層が多いジャイナ教徒の活動範囲の広さを感じさせます。

・日本のNGO団体が数多くネパールで活動しているそうですが、日本のNGO団体の活動や援助等が実を結んでいない理由として、交流と協力の同一視、緊急援助を開発へ広げる、当初から現地とのゴール設定の大きな差がある、事業評価における誤解(効率と効果の混同、思い込みを定性的評価とする)、国内運営と現地運営のギャップ(日本国内からの過剰な統制)、と挙げられているのは今でも継続していそうなことだなと思いました。

Ⅲ マイノリティの諸相

・ネパールでは少数民族が多数存在していて、ネパール国民としての立場と各民族での立場で、言語や生活習慣などが大きく違い、ハンデとなっているのは多民族国家ではどこでもこういったことになりかねないのだなと思いました。

・カーストによる差別、男女差別が大きい中で、スクォッター(無権利居住者)という立ち位置が他に比べて平等になるというのは、こういった差別は高学歴層で緩くなるイメージがあり、ありそうで今までにあまり聞いたことのない事例だと思いました。

・子供が労働者としての扱いを受け、学校に通えない、ストリートチルドレン化する話は、これもそれほど改善はされていないのかもしれないなと思いました。

・ネパール人の少女が夫・親族・隣人・赤の他人に騙されてインドに売られ、エイズに罹患して戻ってくるという実情、女性の相続権自体が守られていないこと、障害者が人口の一割以上を占めながらもひどい扱いを受けていることなど、生き辛い国、生きていくだけでも大変な国という印象を受けました。

Ⅳ 権利としての健康を求めて

・ネパール人が病気になる確率となった時の治るために必要なことを考えると、病気になりやすく、病気になると即命に係わるという国の生き辛さが生々しくイメージさせられます。

Ⅴ 明日への架け橋

・子供が労働力として見られる子供の立場からの教育との距離と、教育できる者が少ないという政府側の事情で、少しずつ変わりつつはあるものの、国民全体の教育レベルを上げることができるのはまだまだ先だろうなと思いました。

Ⅵ 変わりゆく生活の基底

・ネパールにおける「生活」はほぼ「農業生活」とイコールということは、まだまだ土台を築かないと次の段階にステップアップできない状況だったのだろうなと思いました。

Ⅶ 変わりゆくメディアと精神世界

・ネパールで根強く法定すらされている「クマリ」信仰の話、そのクマリになった少女のその後の話はそれだけで後進的というわけではないものの、そういった側面を象徴しているように思えました。釈迦が生まれた地がネパールのルンビニーだという話は前に聞いたような気がしますが、ヒンズー教が大多数のインドやヒンズー教が国教と定められているネパールに仏教の聖地があるというのは不思議な気がします。

○つっこみどころ

・60章が7つのテーマに分けられていましたが、あまり統一性がなく、全体像が見えにくかったです。

・地名やカタカナの用語の説明がないケースが多く、どこの話なのか、何の話なのかがわからないところが結構ありました。

・著者のほとんどがNGO団体の人だからか、各著者の携わった狭い範囲の活動の話が多かったです。

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