【新興国20ヵ国のこれからがわかる本】
株式会社レッカ社 (著, 編集), 門倉 貴史 (監修)
https://www.amazon.co.jp/dp/4569676774/
○序章 存在感を強める新興国経済
・新興国がGDP順位を上げている。2050年には上位のほとんどが新興国に。2030年には中国がアメリカを抜き、インドが日本に並ぶ目算。
・新興国は不況からの立ち上がりが早く、伸びしろも大きい。
・新興国で貧困層が減少し、中間層が増加していることで「世界の工場」から「世界の市場」に。
・新興国経済が急成長している理由・・・「巨大な人口規模」「豊富な天然資源」「外資の導入」
・食品の値上がりは新興国における消費が一つの要因に(例えばコーヒーの現地消費)
・新興国の括り方。
BRICs・・・ブラジル、ロシア、インド、中国
VISTA・・・ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン
MENA・・・UAE、イスラエル、エジプト、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、トルコ、バーレーン、モロッコ、ヨルダン
NEXT11・・・イラン、インドネシア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジェリア、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、メキシコ
・主要国首脳会議もG8からG20へ。
○第1章 BRICs4か国の「いま」と「これから」
・ブラジル
鉱業と製造業、コーヒーや大豆などの農業が経済成長を支えている。
エタノールも燃料にできるフレックス燃料車の需要が高い。(エタノールの原料となるサトウキビは環境負荷が低く、ガソリンより安価)
インフレ抑制に成功し、経済が安定。IMF主導の緊縮政策により財政赤字を削減。
アマゾンの熱帯雨林破壊、福祉の充実・保険制度の整備・治安問題等の課題もある。
・ロシア
主要産業が原油や天然ガス等の一次産業資源。旧ソ連時代の政策により、軍需産業や宇宙科学以外の経済の発展が遅れている。
83の共和国や州で構成された連邦国家で世界最大の国土を誇る。
中国、韓国と協調路線をとり、ASEANを含めた東アジアを重視した外交政策を展開。
資源産業依存から脱却できるかが今後の成長のカギ
・インド
日本はインドにとって最大の援助国。
輸入代替工業政策を長く取っていたことによる経済停滞。
綺麗なピラミッド型を描く年齢層の分布が成長のカギ。都市部で中産階級が増加。
工業化の遅れに対し、IT産業が大きく成長。映画産業も発展。
カースト制度、貧困層が多いことによる共産党の勢力大(外資導入に反対)、パキスタンとの紛争が課題。
・中華人民共和国
1978年に改革開放路線へ、1990年代には多くの先進国企業が進出し「世界の工場」に。
世界に住む5人に1人が中国人という圧倒的な人口による労働力と、その労働力を安価に抑えている人民元の固定相場制。
輸出依存度が高いが、近年減少傾向にあり内需主導型の経済へとシフトしつつある。
観光業が「黄金の10年」を迎えたといわれている。(2020年には中国が世界最大の観光地に)
現在不動産バブルの状態にあり、弾けると同時に経済が破たんするという説もある。
○第2章 VISTA5ヶ国の「いま」と「これから」
・ベトナム社会主義共和国
つねに支配されてきた歴史がある。(秦の始皇帝の侵攻、千年中国の領土拡大の標的に、フランスの植民地に、アメリカの介入でベトナム戦争に)
1986年に制定されたドイモイ(刷新という意味)政策により改革・開放路線へ転換、経済発展へ。
中国の30~60%の人件費を狙って先進国の製造業が進出。
人口の3分の1が35歳以下の若年労働者。識字率90.3%と非常に高い。初等教育就学率も90%超。
2007年にWTOに加盟。ベトナム最大の製油所が2014年に完成。貿易赤字解消が今後の課題。
・インドネシア共和国
人口2.4億人で世界第4位。年平均6%前後の経済成長を誇る。(人口の増加を経済成長に結びつけている)
1945年に国家として独立し、憲法を発布したが内乱、内戦、議員汚職等により政情が安定しなかった。
2004年のユドヨノ大統領就任以後政情が安定。
広大な国土を持ち、日本にも大量のエネルギー資源を輸出している。
ヨドヨノ大統領のバイオ燃料関連の国家プロジェクトにより、パーム油の生産量はマレーシアに次いで世界第2位の状態から世界第1位に。
2007年3月末に可決された新資本投資法により海外からの投資を促進。
インドネシアと日本の間で2008年7月1日からEPAが発行。
・南アフリカ共和国
1991年にアパルトヘイト撤廃。1994年に民主政権発足。1996年に世界で最も進んだ憲法と言われる新憲法を制定。「七色の国民(レインボーネーション)」という別称も。
主要産業は鉱業。金やプラチナの産出が経済を支える。慢性的な電力不足等のインフラの解決が今後の課題。
20%を超える高い失業率(2011年4月は24.8%)。特に黒人の失業率が高い。失業率の高さから治安が悪化し、2002年の調査で殺人による被害者の数が世界ワースト3位に。
・トルコ共和国
1038年に勃興したセルジューク朝、15世紀にビザンツ帝国を壊滅させたオスマン朝が礎を築く。
第一次世界大戦で敗戦して領土を分割されるが、1923年に国民国家となり、1934年に共和国制を宣言し、ケマル大統領が就任。
農業人口40%の農業大国であり、また工業輸出率の高い工業国でもある。
慢性的なインフレに悩まされてきたが、構造改革により改善に成功。
日本とは1890年のエルトゥールル号沈没事件への対応により厚い友好関係で結ばれている。
資源に恵まれていないため、大幅な貿易赤字を計上している。
EUへの加盟を申請しているが、イスラム教国が加盟することへの反発から、いまだ実現していない。
・アルゼンチン共和国
天然資源とバイオ燃料としてのトウモロコシの生産が大きい。近年ではワイン生産量が増加し、世界5位に。
スペインの植民地時代から300年を経て1862年に独立。
政策による移民の積極的な流入により労働人口増加を図っている。
2003年以降現在にいたるまで好景気。自動車産業が好調。国内向け投資が堅実に伸びている。
日本からは技術協力による援助が際立っている。
高い経済成長と好景気ゆえの問題・・・ブエノスアイレスの人口の25%が高血圧(一人当たり牛肉消費量世界一であることも理由)
○第3章 次に注目すべき11ヶ国の「いま」と「これから」
・バングラデシュ人民共和国
国連のPKO活動に力を入れ、要員派遣数は常に上位3位以内。
大変な親日国。(「好きな外国はどこか」「重要だと思う外国はどこか」で1位)
天災により大規模な被害をよく受けており、長らく貧困国の一つとして数えられている。
縫製品の輸出による高成長。海外労働者からの送金額がGDPの10%を上回る。
NGOやグラミン銀行などの活躍がよく知られる。
・エジプト・アラブ共和国
主要な収入源は、観光業、石油輸出、スエズ運河通行料、海外労働者送金。
投資環境整備により海外直接投資が伸びている。
ヨルダンとのガス・パイプラインが開通し、EU向けの液化天然ガス輸出も実施。
経済成長に比べて失業率や貧富の格差が解消されなかったため、大規模な反政府デモが発生。新政権樹立後も未解消。
・イラン・イスラム共和国
アメリカや国連安全保障理事会から長期にわたって経済制裁措置を受けているが、中東地域で最も経済発展を遂げている。
政府主導で市場環境が整えられつつある。
サウジアラビアに次ぐ世界2位の石油埋蔵量、世界4位の生産量。だが石油精製施設が発展していなかったため、原油を輸出し、ガソリンを輸入していた。施設の改良で状況は改善されつつある。
放射性医薬品と核融合装置の核利用技術は先進的。軍事産業と農畜産業も快調。
・大韓民国
一時はアフリカ並の最貧国とさえ言われたが、パク・チョンヒ政権の「漢江の軌跡」により発展を続け、1996年にアジアで2番目のOECD加盟国に。
1997年のアジア通貨危機で大打撃を受けてIMFの経済支援を受けるが、2005年には借入金を完済。
政治主導で政府が民間企業を直接指導するスタイルを確立。
対外輸出が増加しているが、それに伴って資材輸入や特許使用料で日本への支払いも増加。
家電・情報通信機器・自動車で世界的大メーカーが台頭。
・メキシコ合衆国
1609年に千葉に漂着したメキシコのフィリピン総督代理を助け、徳川家康自らが新船を提供したことで、400年にわたる日本との友好関係。
アメリカ依存度が高いため、リーマン・ショックによる影響が大きかったが、基本的には経済成長を続けている。
2050年には世界第5位の経済大国になると見られている。ただし、懸念事項として、公共の安全問題・構造改革の欠如・国際金融の不安定・海外市場と世界経済の脆弱性・国際政治の不安定。
アメリカと隣接した立地を活かした自動車産業等の輸出が堅調。
世界有数の天然資源国であり、製塩や精銀も重要な外貨獲得資源となっている。
・ナイジェリア連邦共和国
人口が1億5800人以上でサハラ以南のアフリカ全体の20%の人口を擁する。日本の約2倍のガソリンを消費。
ゴールドマン・サックスの予測で、人口一人当たりGDPが2009年の1,140ドルから2050年に37,080ドルに跳ね上がるといわれている。
1993年にクーデターによる軍事政権成立、1999年に大統領選挙が実施され民政移管。
学校教育のレベルが高く、電子機器やプログラム技術に優れた学卒者が多い。しかし失業率が高い。
原油依存の経済構造であり、総歳入の71%、総輸出額の88%が原油となっている。
・パキスタン・イスラム共和国
2000年から2010年にかけて5,000万人ほど人口が増えている。(1億8,000万人超)。2050年には世界第4位になると考えられている。
※P.201の図を見ると1億6,000万人弱から2,000万人増加。
隣国インドと建国当時(1947年)から対立関係。1970年代には対抗して核開発に着手。
第一次産業中心の農業大国。燃料等は輸出に頼っている。
異なる民族が集まっており、最大派閥のパンジャブ人が政治的な発言力を持つ。⇒他民族からの反発アリ
隣国アフガニスタンの政情不安によりテロリストが潜伏する地域となっている。
親アメリカ国家で中東諸国の義勇兵の訓練を実施していたが、その義勇兵が反アメリカのテロリストと化した。
・フィリピン共和国
国名は1542年にスペイン人皇太子のフェリペの名にちなんで島に名づけられたことに由来している。
16世紀にスペインの植民地とされ、19世紀後半の独立後にアメリカの自治州とされ、第二次世界大戦時に日本に占領され、1946年に独立を果たした。
農業が輸出にも貢献する農業国。米が主食であるが、自給率が不足して世界最大の米輸入国に。(2013年に解消する目標を立てている。)
人件費の安さから大手電機メーカー等が進出し、輸出品の大部分を占めている。
元占領国のアメリカ、日本との関係は良好。中国と南沙諸島の領有関係で対立。
・マレーシア
マレー半島南部とボルネオ島北部はもともと別の国家であったが統合。その名残で国内であっても両島を行き来する際にはパスポートが必要となる。
ヤシ油産出量はインドネシアに次いで世界第二位。原油・石炭・天然ガス等のエネルギー資源の産出国。オーストラリアの大手探鉱企業ライナス社の出資により世界最大規模のレアアース精錬工場の建設計画が予定されている。
2003年まで首相を務めたマハティール氏が海外資本の積極亭な導入と国内産業育成に努め、インフラ整備や大手企業誘致に成功している。⇒一人当たり国民所得も東南アジアではトップクラスに。
人種による格差が発生している。(華人系>インド系>マレー系)
・アラブ首長国連邦
7首長国から構成されている。(アブダビ、ドバイ、シャールジャ、アジュマーン、ウンム・アル=カイワイン、フジャイラ、ラアス・アル=ハイマ)。歴代大統領はアブダビから、副大統領はドバイから選出される慣例となっている。また連邦の最高意思決定機関である最高評議会でアブダビとドバイは拒否権を有している。
人口507万人のうち8割以上が国外からの出稼ぎ労働者。
建国以来政情不安がない中東では珍しい国家。アブダビが国土の8割以上を占め、オイルマネーを有している。
経済特区設立によりドバイが驚異的な繁栄を遂げる。⇒2009年のドバイ・ショックで傾くもアブダビにより救済。
・サウジアラビア王国
中東最大の面積を誇り、世界の原油埋蔵量の22%を占める国家。天然ガスの確認埋蔵量も世界第五位。
日本の最大の石油供給元。(30%)
絶対王政の国家であり、政府の要職も王族が独占している。但し、オイルマネーによって国民に医療費無料化、住宅無償提供、学費支給などの福祉を供給しているため国民からの不安はほとんどない。
外国人に対して個人的な観光ビザを発行していないなど、入国が制限されており、外資の導入もほとんどない。
産業について石油産業以外は脆弱であり、若年層の失業率が20%に達している。
○第4章 日本と新興国
・日本の貿易相手は中国が突出。新興国では次いで韓国。他はこの2カ国に比べれば少ない。
・近年、経済的に力をつけ始めた新興国から日本への投資が行われるようになっている。
・日本企業の現地法人のうち約47.6%は新興国。但し大部分は中国が占めている。
・アジアの個人消費は2020年にはアメリカと肩を並べるレベルに達する。
・今でも日本製品の評価は高い、が市場に進出し需要に繋げるまでには至っていない。
・EUやNAFTAをしのぐ東アジア共同体構想が実現するかもしれない。
・新興国の三つの問題点(環境問題、医療問題、経済格差の拡大)