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【感染症の世界史】レポート

【感染症の世界史】
石 弘之 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/404400367X/

○この本を一言で表すと?

 感染症の仕組み、感染経路、歴史等の様々な視点から感染症について述べた本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・感染症の原因であるウイルスの仕組み、感染経路等の感染症自体に関する説明や、どのような感染症が歴史上どのような結果をもたらしたのかなど、様々な視点から感染症について説明されていていろいろ勉強になりました。

・日本人が書いた本なので、日本のトピックが多く、テレビ番組で取り上げられた話題なども出てきて、海外の翻訳本とは違った意味で面白みのある本だなと思いました。

序章 エボラ出血熱とデング熱

・エボラ出血熱とデング熱という、この本が書かれた当時で最新の感染症のトピックが挙げられていました。

・エボラ出血熱の致死率等は知っていましたが、防護服を着ていた医療関係者にまで感染したり、空気感染する変異を起こした可能性があったり、今までに聞き知った以上に恐ろしい感染症になっていたことが書かれていました。
オオコウモリが感染源であること、ブッシュミートとして野生動物を食べる習慣のあるところでかかりやすいということなども初めて知りました。

・デング熱について、感染源のヒトスジシマカが他の蚊を圧倒する繁殖力を持っていること、生存北限が年々北上していることなど、ある意味で身近になっていく可能性があることがわかりました。

第一章 人類と病気の果てしない軍拡競争史

・微生物も生存するために宿主に宿っているのであって、宿主を殺すために存在しているのではないこと、人間と微生物の共生関係などについて書かれていました。

・通常、母親と体内の子供では遺伝子が異なるので母親の免疫反応で子供が攻撃されるところ、体内のウイルスがつくった細胞膜で母親のリンパ球から胎児を守る仕組みがあるなど、人間の種として必要なウイルスもあることなどが書かれていました。

・細菌と抗生物質の争いでも、耐性菌が次々と生まれていること、抗生物質が濫用されたり、家畜の飼料に使われたり、下水に流されたりすることで、より耐性菌が生まれやすい環境ができていることなども書かれていました。

第二章 環境変化が招いた感染症

・定住化、農業中心への移行、産業革命、戦争の大規模化・長期化などの様々な環境変化が、感染症が伝染しやすい環境を作り出していることが事例を挙げて説明されていました。

第三章 人類の移動と病気の拡散

・文化、物資を交換し合ったシルクロードを通した東西交流が病気も交換し合ったとして、中国初のペストがヨーロッパで猛威を奮った話が書かれていました。

・ヨーロッパの新大陸進出でも天然痘やハシカによって現地民が大量に死亡し、新大陸からは梅毒がヨーロッパに伝来して猛威を奮ったことが書かれていました。

・SARSや西ナイル熱、SARSに似た中東発のMARSなど、近年においては容易に海を越えて感染するなど、感染症が拡散しやすい状況になっていることが書かれていました。

第四章 ピロリ菌は敵か味方か

・胃潰瘍や胃ガンの原因となるピロリ菌が常在菌であり、感染していても発症しなければ過剰な胃酸を中和して逆流を防ぐなど、有益な点もあることなどが書かれていました。

・細菌や寄生虫に感染するような環境で育つと、花粉症等のアレルギーになりにくくなることなど、トレードオフの関係にあることも書かれていました。

第五章 寄生虫が人を操る?

・ネコの寄生虫「トキソプラズマ原虫」が人間に感染すると脳にまで到達してドーパミンを分泌させたりして性格が陽気になったり、ポジティブになったり、社交的になったりするそうです。
一方で感染者は交通事故や自殺等も増加するとか。

・猫に魔性を感じたりするのは、猫が近くにいることでトキソプラズマに感染して人が変わってしまうからというのもあるかもしれない、とのことでした。
最後に猫好きの歴史上の有名人を挙げて、猫のせいでかわったかも、と示唆しているのは面白いなと思いました。

第六章 性交渉とウイルスの関係

・性行為で感染するウイルスで最も感染者が多いのはHPV(ヒトパピローマウイルス)なのだそうです。このHPVは男性では発症しにくいため、男性経由で女性に感染することが多く、ガンの原因にもなるそうです。

第七章 八種類あるヘルペスウイルス

・ヘルペスはよく聞きますが、口唇ヘルペスだけでなく水痘ヘルペスなどもあり、水痘ヘルペスは水ぼうそうや帯状疱疹を引き起こす原因だそうです。

・水ぼうそうにかかって治っても、神経節の中に隠れたまま潜在し、体調が悪化したときや老化したときなどに帯状疱疹として再発するそうです。
免疫は20年ほどで効果を失うそうで、水痘ヘルペスウイルスに感染した子供に接する機会の多い小児科医や保育士は免疫記憶細胞が増強されるために帯状疱疹を発症しにくいそうです。

・ストレスなどで弱っている時にはヘルペスウイルスが活性化しやすいのだそうです。

第八章 世界で増殖するインフルエンザ

・鳥インフルエンザは型の種類がかなり多いそうで、水鳥から家鶏等に感染していくそうです。
また、豚を経由して人間に感染するそうで、鶏と豚を生活場所の近くで飼っている中国等のアジア圏で人間に感染することが多いそうです。

・世界で8000万人の死亡者を出したと言われるスペインかぜもインフルエンザで、中国起源説とフランス起源説があるそうですが、情報統制をしていなかったスペインだけが発症状況を公開していたために「スペインかぜ」という名前がつけられてしまったそうです。

・農地転換や開発によって湿地が失われ、水鳥の過密化が進むことでインフルエンザの感染も進んだこと、畜産革命で過密な環境で家畜を育てるようになったことなどもインフルエンザが感染する要因になっているそうです。

第九章 エイズ感染は100年前から

・エイズが当初はゲイしか感染しない病気として見られていたこと、アフリカから感染爆発したこと、感染源はチンパンジー等の類人猿・霊長類とみられること、感染爆発の原因が当時の環境から陰謀説まで諸説あることなどが書かれていました。

・HIVウイルスの元になっている猿のSIVウイルスは猿に対しては感染しても特に何も影響がないそうですが、類似する人間に感染すると猛威を奮うそうです。

第十章 ハシカを侮る後進国・日本

・ハシカ(麻疹)の感染について日本は後進国で、他の先進地域から10年以上遅れて排除宣言を出すレベルだったそうです。
日本人が原因でアメリカにハシカの三次感染まで引き起こしたり、日本への渡航者にハシカを持ちかえらないようにと注意がされたりしているそうです。

・日本ではMMRワクチン(ハシカ、おたふくかぜ、風疹の三種混合ワクチン)が摂取されていたところ、おたふくかぜワクチンに使われたウイルスが弱毒化されていなかったために無菌性髄膜炎を引き起こす原因になり、ワクチンの接種者数が減少したことなどが理由でハシカ撲滅が遅れたそうです。

・今でこそ先進国ではハシカにかかってもほとんど死亡することはないですが、キューバにスペイン人がもちこんだハシカで人口の三分の二が死亡するなど、環境によっては猛威を奮う可能性もある危険な感染症なのだそうです。

第十一章 風疹の流行を止められない日本

・日本は2014年に風疹流行ワースト3にランクインしたほど風疹流行については後進国で、来日する外国人へも注意されることが多く、観光立国としてもマイナス要因なのだそうです。
風疹は妊婦がかかると胎児に影響を与えることが多く、危険な病気なのだそうです。

第十二章 縄文人が持ち込んだ成人T細胞白血病

・成人T型細胞白血病という血液のガンを引き起こすHTLVウイルスは日本でも感染者が100万人以上いるものの、発病するものは少なく、しかし発病すると死亡率が高いそうです。
このHTLVウイルスもアフリカ起源だそうですが、人類の移動に伴って変異しているため、グレートジャーニーの経路の証拠になっているそうです。
日本の場合は縄文人経由だそうで、縄文人の系統のアイヌ人や沖縄人にこのHTLVウイルスを持つ人が多いそうです。

第十三章 弥生人が持ち込んだ結核

・既に亡くなったと言われた結核の集団発生が、日本でも2000~2012年でも毎年37~49件発生するなど再燃しているそうです。
高齢化・未感染者の増加・貧困層の増大・外国人の増加・多剤耐性の結核菌の拡大などが理由だそうです。

・弥生時代以降から既に感染者がいた病気で、飢饉や過労などが原因で日本でも感染が拡大したことが何度もあるそうです。

終章 今後、感染症との激戦が予想される地域は?

・中国が経済成長したことで大人数が大移動するようになったこと、中国の食品スキャンダル、アフリカ開発、実験動物の輸入、世界の高齢化など、特定地域が原因の感染拡大も考えられ、また世界のどこでも感染源となる原因もある、という話で締められていました。