【医学全史 ――西洋から東洋・日本まで】レポート

【医学全史 ――西洋から東洋・日本まで】
坂井 建雄 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4480073612/

○この本を一言で表すと?

 古代から現代までの医学の歴史の本

○よかったところ、気になったところ

・医学の歴史が、古代から中世、16~18世紀、19世紀以降と3区分で説明され、最後に日本の医療についてまとめられていました。

・古代ギリシャ・ローマのヒポクラテスやガレノスの見識や解剖の記録が、ルネサンス時代に再度見直され、実際に解剖まで行われていてもハーヴィーの血液循環論が出るまでは三大内臓説のパラダイムから抜け出せなかったというのは、基本的な考え方が誤っていれば、どんな事象も誤った解釈で判断してしまうという典型的な事例かなと思いました。

・麻酔や衛生の考え方、技術など、今の時代に生まれてよかったなと思える記述が何度も出てきました。
医学の研鑽は身近なレベルでも国家・世界という大きなレベルでも重要なことだなと改めて実感しました。
それだけに、医学的な事実以外の政治的な関与や宗教的な判断等は望ましくないことが多いのだろうなと改めて考えさせられました。

・日本の医学の歴史がまとめられていて、興味深かったです。
日本の医療制度の変遷等も興味深いなと思いました。
時折著者の所属する順天堂がクローズアップされているのも面白かったです。
華岡青洲が日本発ではなく世界初で全身麻酔の手術をしていたことはすごいなと思いました。

○つっこみどころ

・同じ内容が何度も出てくるところがありました。
時系列で触れている章と分野別で触れている章で重複するところは仕方ないのかなとも思いますが、なんとかできたのではないかなとも思いました。
ひどいところだと次のページで全く同じ内容が出てくるところもあり、編集者があまり関与していないのかもしれないなと思いました。

・専門用語や医学に触れていないとわからないような文脈が結構あり、一般向けではないなと思えました。
「疾患ではなく身体症状について分類されていた」などと書かれていても何が問題なのか最初はわからずその後の文脈でようやく理解できたようなところもあり、注釈などがほしかったなと思いました。
また、各記述が現代医学から見て誤った解釈なのか正しい解釈なのか、現代医学の知識がないと判断できないところも結構あったように思いました。

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