• 様々な本、様々な資格の話が盛りだくさん(の予定)

【太平洋戦争】レポート

【太平洋戦争 (上)】
児島 襄 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4121000846/

【太平洋戦争 (下)】
児島 襄 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4121000900/

○この本を一言で表すと?

  太平洋戦争の開戦から終戦までの流れを詳細に追った本

○面白かったこと・考えたこと

・文書をベースに客観的に書かれた本ですが、ところどころ熱くなるところがある本でした。臨場感があり戦争の推移がイメージできて手に汗を握りました。

・太平洋戦争について「失敗の本質」などである程度知っていましたが、太平洋戦争に突入するところから終戦まで(中国に関するところ以外)網羅している本は初めて読みました。
後半の日本軍が負けるところはよくクローズアップされますが、前半で勝利していることがその敗北の要因でもあることがよく分かりました。

・太平洋戦争の前半は連合国側が日本をなめてかかって負け、後半は日本が連合国側をなめてかかって負けるという、成功体験が失敗を呼ぶ典型的な例だなと思いました。

・「失敗の本質」に書いてあった内容とかなり違っているところが見受けられました。
「失敗の本質」の批判として内容の正確性がいまいちというのがありましたが、「失敗の本質」より前に書かれた「太平洋戦争」の方が正しいのかなと思いました。

・「失敗の本質」でよく登場する辻政信がいろんなところで顔を出しているなと思いました。
日本軍の作戦本部は現場を知らないトップの弊害が大きく出ていますが、辻政信の行動は現場の一部しか知らない参謀の弊害がよく出ているなと思いました。

・日本でも欧米でも、艦長が艦船の沈没の時に退出しないというケースがよく見られました。
現行の船員法でも船長は最後まで退出してはいけないというニュアンスに近い条文が定められていましたが、この時代の名残なのかなと思いました。

・日本が短期間で物資が尽きると分かっていながら戦争に踏み切ったことがよくわかりました。(上P.3)

・日本軍は、前半数ヶ月はかなり綿密に計画を立て、事前訓練も積んで連戦連勝で、その計画以降は割と行き当たりばったりでした。
このあたりは、個別戦略はそれなりにうまくやれども全体戦略は立てることすらできない今のほとんどの日本企業にもそのまま当てはまる気がします。

・「自ら人間アンテナ」「工兵隊の奮闘」など、今でも「日本人らしい」とか「大和魂」とか言われる型の日本人像が出ているなと思いました。

香港、シンガポール攻略

・「シンガポールを知るための62章」を読んだ時に出てきた日本軍の華人虐殺の話の経緯を詳しく知ることができました。
イギリス人やマレー人に比べて徹底的に抗戦したことが日本人に恐怖を与えたというのは、太平洋戦争後半の日本人の奮闘がアメリカ人に恐怖を与えたことと似ているなと思いました。

・マッカーサーの「I shall return」は自分のなかでは日本での発言というイメージだったのですが、フィリピンだったということを初めて知りました。
マッカーサーがフィリピンで出世し、日本軍に落とされる前に脱出しているところなど、かなり幸運な人だと思いました。

東京空襲とミッドウェー海戦

・真珠湾攻撃の復讐戦として最初の東京空襲があり、それが本土防衛を意識させることになってミッドウェー海戦に繋がり、そこが日本が負けていく起点になるというプロセスは、戦争は何がきっかけになって別の要因を引き起こすのか、事象も関係性も複雑すぎて当事者は読めないのだろうなと思いました。

・「AF」がミッドウェーを指すという予測を確定させるために、「ミッドウェーは水が不足している」という情報をわざと流して確認するアメリカ情報部の手腕はすごいなと思いました。

ガダルカナル島の死闘

・「失敗の本質」ではガダルカナル島について、米軍占領後から書かれていましたが、その前の経緯を初めて知りました。
ガダルカナル島にフェルディナンド(オーストラリア人スパイ)がいて、常に情報を流していたために米軍が優位に立てたというのは日本軍が軽視した情報の重要性を思わせます。

・ガダルカナル島で日本軍側の兵站が尽きた後の惨状はすさまじいの一言だなと思いました。
その後同じようなことを繰り返す日本軍の作戦本部が現場を知らないまま終戦まで行ってしまうことの弊害が思い切り出ているなと思いました。

悲劇のインパール作戦

・「失敗の本質」でインパール作戦は牟田口廉也の強引で成功可能性のない作戦を無理やり遂行したことが書かれていましたが、「太平洋戦争」ではいきあたりばったりではあるものの、勝ち目が全くない賭けでもなかったように書かれていました。

・第三十一師団の佐藤師団長の独断退却の判断は、何が正しいかの基準によって意見が変わりそうだなと思いました。
戦争全体からみると余計に日本軍の被害を大きくした行為ですし、第三十一師団だけをみると上からの無理な命令を撥ね退けた愛情ある行為ですし。
現代社会において、無能な上司の下で働くときに同じような判断を求められそうな気がしました。

サイパン島失陥

・サイパンについては放棄すると割とあっさり決定してしまったのは、だいぶ追いつめられたからかなと思いました。
市民も自決に走るという状況を目の当たりにしたアメリカ兵の姿のショックが印象的でした。

・日本人がアメリカ軍に6,000人ほど参加していたこと、暗号解読などに貢献していたことなどは、他の本で書かれていた日本人の特性として上が変われば素直に従う性質とぴったり符合しているなと思いました。

・サイパン島失陥以降、日本軍はやること為すことほとんどが裏目を打つようになっているなと思いました。
失敗することでより条件が悪くなって更なる失敗を呼ぶということと、実際以上に余裕をなくして思考の選択肢を狭めるためにより失敗を加速させていく状況の典型例だなと思いました。

比島沖海戦

・レイテ湾海戦の「栗田謎の反転」が客観的に書かれていました。
ミッドウェー海戦以降ずっとあった戦争目的の不徹底がここまで典型的に出るのは逆に珍しいなと思いました。

最後の戦闘

・沖縄戦での多数の市民の死亡、個人が責任を取らない政府ゆえの降伏の遅れなど、知っていてもやるせないものだなと思いました。