【[新装版]陸奥宗光とその時代】
岡崎 久彦 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4569775888/
○この本を一言で表すと?
陸奥宗光が生きた時代を陸奥宗光の伝記と時代背景の描写で描いた本
○面白かったこと・考えたこと
・陸奥宗光は、学校の授業では「治外法権を改正した人物」としてしか出てこず、幕末・明治を舞台とした映画では坂本龍馬の腰巾着のようなキャラとして描かれていたくらいでしたが、もう少し踏み込んだ歴史の本ではかなり評価されていて気になっていました。
思っていた以上にいろいろな挫折を重ね、いろいろな実績を残し、周りにも認められていたことを知ることができました。
・陸奥宗光が紀州藩の上士の家の出身ということは知っていましたが、父親が栄達したのちに失脚していたり、紀州藩を強国化したり、クーデーターを図って牢獄に入れられたりしていたことは初めて知りました。
生まれが良い素性ながら、そこから没落してまた這い上がって有力な人物になっていったというのはすごいなと思いました。
・陸奥宗光が牢獄に入っている間にベンサムを完訳したり、様々な知識を身につけたことは、陸奥宗光が見出した小村寿太郎が閑職で貧乏生活をしている中で様々な知識を身につけつづけたことと似ていて、不遇な時にこそ人の真価が問われるという一例になっているなと思いました。
・陸奥宗光が外交に力を尽くしたことは知っていましたが、立憲政治・政党政治を確立するために注力していてかなり重要な位置を占めていたというのは初めて知りました。
内政と外交の両方に力を発揮できるというのは能力面で当時の政府の要職にあるものの中でも頭が抜きんでていたように思いました。
・日露戦争について書かれている本は何冊か読んだことがありますが、日清戦争に至るまでの話、日清戦争における経過の話、日清戦争後の話が詳しく書かれていて、想定していることや進め方がかなり綿密に考えられ、戦争以外の列強各国の影響や国内世論の動きなども織り込まれた上で進められていたというのはかなりの構想力、実践力だと思いました。
・陸奥宗光がいるかいないかで日本がどのような歴史を歩むかが大きく変わったのではないかと思います。
必要な時代だからこういった人物が場を得たのか、こういった人物が時代をつくり上げていったのか、一人間の影響力の大きさを考えさせられました。
○つっこみどころ
・同じ著者の「小村寿太郎とその時代」では小村寿太郎についてかなり客観的に書き、厳しく批判するところは批判していましたが、著者が陸奥宗光を好き過ぎるのか、著者が陸奥宗光の親族だからか、陸奥宗光かなり偏った描写になっていたように思いました。