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【日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実】レポート

【日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実】
吉田 裕 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4121024656/

○この本を一言で表すと?

 兵士の立ち位置から見たアジア・太平洋戦争の状況を数値と出来事で述べた本

○面白かったこと・考えたこと

・アジア・太平洋戦争については、今までに何冊か読んだことがありますが、どれも上層からの視点で、ガダルカナル島や沖縄島での戦闘など、一部ではその悲惨さが語られていたものの、武器も食料も乏しい状態を強いられていたという程度でしたが、この本では様々な面での悲惨さがリアルに書かれていて、戦争を知らない者が戦争に対して感じる華々しさの面を打ちのめすような一面を知ることができました。

・特に印象に残ったのはいじめの文化でした。
現代でも日本以外でもあるものの、日本特有とも思えるいじめのあり方が、当時だと当たり前のようにいじめ殺すレベルでどこでも行われていたということが、他の本でも書かれてはいたものの、この本ではその頻度や他国の視点での分析なども載っていて、思っていた以上の陰惨さと日常に染みついている感覚が印象深かったです。

・様々な物資が足らなかったことは知っていましたが、それがどのような結果に繋がったのか、その結果までが克明に書かれていて印象深かったです。

序章 アジア・太平洋戦争の長期化

・中国での戦争とそれに続くアメリカとの戦争を俯瞰すると、4期ほどに区分でき、死者の数でみると1944年以降で全体の91%を占めたというのは、戦力差が絶望的になった後も戦争を止めることができなかったことのが、加速度的に被害を増すことになったということがよく伝わってきました。
止めどころ、落としどころを見つけて着地させることの重要性がよくわかります。
当時の日本ではそれを見つけることができても実行することが困難だったのかもしれませんが。

第1章 死にゆく兵士たち

・戦病死、戦争中に病死していく兵士の数が相当数いたことが書かれていました。
栄養が足らずに抵抗力を失っていったことも含めて、餓死者やマラリアにかかったものなどの病死などがとてつもない数だったようです。
戦死よりも病死の方が圧倒的に多かったそうです。

・戦争栄養失調症患者の絵が挿絵として挿入されていましたが、かなりリアルで迫力がありました。

・海没者の話もかなり悲惨な状況が語られていました。
鈍足の船を使用せざるを得なかったことからほとんどが沈没させられ、爆発等に巻き込まれる死に方が詳細に書かれていましたが、かなり悲惨だなと思いました。

・特攻で死なせられた人も多くいたようですが、飛行機の形状自体が特攻に向いておらず、途中で爆弾を切り離した方がまだ効果があったというのは報われない話だなと思いました。

・日本軍の自殺率の高さ、頻発する様子、戦えなくなり、どうにもできそうになければ医者が傷病者を殺していく話、軍を離脱して軍を襲って物資を得ようとした事例もあった話など、追い詰められた人間がどのような行動をとるかの実例としてリアルであり、悲惨だなと思いました。

第2章 身体から見た戦争

・日本の軍隊に所属する人の数がアジア・太平洋戦争の途中から急増したこと、その理由として徴兵基準が大きく引き下げられ、身体的にも精神的にも適さない人が徴兵されるようになり、また教育も省かれて前線に送り込まれたことが書かれていました。
結核を患っていても兵士になり、軍でも蔓延していたそうです。

・食料を含めた物資の支給が薄くなり、現地で略奪するための手引きまでつくられるようになるほどで、新兵は古参兵に私的制裁を受けてさらに体を弱くするという悪循環が続いていたようです。

・中国人農民や捕虜を使った刺殺訓練を受けた新兵や劣悪な環境から戦争神経症と呼ばれる症状を示す人が多く出たそうです。

・空軍のパイロットは集中力を増す薬として濃度の高いヒロポンを打たれて中毒症状になったり、生還すれば責められるような異常な状況に置かれていたようです。

・装備も十分に支給されなくなり、みすぼらしい装備になっていき、靴もボロボロなものを使い続けるようになり、無鉄軍靴と呼ばれる行軍に耐えないような靴が当たり前になるなど、大変な状況だったようです。

第3章 無残な死、その歴史的背景

・異常なほどの精神主義、敵の過小評価と自軍の過大評価、機械化におけるかなりの劣位、上層部の統制のなさなどがそれぞれ詳細に述べられていました。

・いじめで新兵が殺されても問題にならない文化や、機械化が伴わないために痩せ細った身で自分の体重と同じくらいの荷物を運ばされる重労働、施設の設営能力の差などが全て前線の兵士の重荷になっていたようです。

・最後に靴の紐や糸の品質が悪いために皮が無事でも靴が破損する事例が述べられていましたが、生産能力等の差が様々なところで不利に働いたのだろうなと思いました。

終章 深く刻まれた「戦争の傷跡」

・戦後においても、マラリアに感染した者が再発したり、平成になるまで塹壕足になって強度の水虫にかかって平成になってようやく完治できた話、戦中に本人に知らされずに使用されたヒロポン等の麻薬の中毒症状に悩まされた話など、悲惨な状況が終わっていなかった人たちがいたことが書かれていました。

・戦争を美化して日本人が勇敢だったことや、日本軍と敵になった軍の被害の差を見ずに与えた被害の数だけを強調して褒め称える文章などが出てきたこと、戦争の悲惨さが軽視される傾向にあることへの警告で締められていました。

○つっこみどころ

・詳細、実態についてはかなり調べられてあり、文句なしだったのですが、大きな視野で見た結論などは短絡的すぎて内容が微妙で、この部分は書かない方がよかったのではと思えました。