【文系と理系はなぜ分かれたのか】レポート

【文系と理系はなぜ分かれたのか】
隠岐 さや香 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4065123844/

○この本を一言で表すと?

 日本の文系・理系と西洋の自然科学・社会科学・自然科学の区分について考察した本

○よかったところ、気になったところ

・「はじめに」にあるように自分も「海外には日本のような文系・理系の区分はない」というようなことをよく聞いた気がしますが、実際には自然科学・社会科学・人文科学のように日本の文系・理系のような区分があって、似たような状況なのだなと思いました。

第1章 文系と理系はいつどのように分かれたか?―欧米諸国の場合

・哲学に関する本で、まず哲学が全体を包含するもので、その中から自然科学などが分岐していったというようなことが書かれていて、まず人文科学が最初にあったものと思っていましたが、近代の学問としてはまず自然科学の概念ができ、次に社会科学の概念ができ、最後に人文科学の概念ができたことを知って意外に思いました。

第2章 日本の近代化と文系・理系

・世界で初めて大学に工学部を設立したのが日本だというのは日本近代史の本でよく出てきますが、工学に対する固定観念の有無がその理由だったのだなと改めて思いました。

・日本で社会科学系でないと政府で出世できなかったこと、戦争での需要で科学技術が求められたこと、戦後になっても科学技術優先の考えがあることなどは興味深い流れだなと思いました。
日本では人文科学分野はかなり弱く、社会科学分野もあまり強くない印象がありますが、このような経緯からかなと思いました。

第3章 産業界と文系・理系

・産業界の求める像と日本の大学での教育のギャップについて書かれていて興味深いなと思いました。
極端な方向の「文系不要論」や、理系でも分野が一致していなければそれほど企業にもメリットがないことなど、なかなか難しい問題だなと思います。
大学は産業界のためにあるわけではないと思いますし、大学で学ぶこととそれ以外で学ぶこと、本人の資質等もあると思いますが、採用側がそれを見極めるのは難しいでしょうし、状況は今後もしばらくあまり変わらないように思いました。

第4章 ジェンダーと文系・理系

・ジェンダーと文系・理系の関係は日本では結構な割合で持っている偏見があり、社会が「女性は理系に向かない」という方向にあれば、そういったジェンダーステレオタイプの考えから、実際にはそうでなくても自然とそういう方向に向かってきて、今に至っているのだなと思いました。

第5章 研究の「学際化」と文系・理系

・よく「日本の大学の専攻は細分化しすぎてタコツボ化している。学際的な研究ができていない」というようなことが様々な本で書かれていますが、西洋の大学でもその状況はあまり変わらず、また学際的な学部では分野をまたぐために教育が難しく、あまりうまくいっていないと書かれていて、現状がよく分かったように思いました。

○つっこみどころ

・第3章と第4章の内容が第1章と第2章に比べて薄く感じました。
歴史や経緯は述べやすく、現在の状況は推測や著者自身の考えがメインになるからでしょうか。

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