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【バブル:日本迷走の原点】レポート

【バブル:日本迷走の原点】
永野 健二 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4103505214/

○この本を一言で表すと?

  バブルの前後を含めた大きなトピックを当時の記者の視点と後の観察者の視点で描いた本

○面白かったこと・考えたこと

・バブル以前の日本の経済状況からバブル崩壊後まで、その前後にあった出来事もしっかり書かれていたのでバブルの背景がより理解できたように思いました。

・バブル当時、日経新聞の経済関係の記者だった著者の当時の取材に関する話と、後の考察が書かれていて臨場感やその時点だけではない経緯や後日譚もあって各出来事を深く掘り下げられているなと思いました。

第1章 胎動

・今では当たり前になっている便宜置籍船を作り始めた三光汽船が外航海運の6大会社の1つジャパンラインの買収に挑戦し、興銀の介入で阻止されてしまったこと、オイルショック後にタンカー運賃が激減し始めると、トップ企業だった日本郵船は社長菊池庄次郎の意思決定でタンカー事業から撤退したこと、ジャパンラインの経営陣には興銀の幹部人材が投入され、ジャパンラインは結局格下の山下汽船に吸収合併されて資金投入した興銀が2000億円を上回る損失を出したがだれも責任を取らなかったことは、以後の興銀の没落に繋がる話として興味深いなと思いました。

・仕手グループの動きで、他の本でも出ていた加藤暠の誠備グループと渡り合った是川銀蔵の話など、今では考えにくい兜町の動きの激しさが伝わってきました。
投資顧問業法の成立で仕手グループの居場所がなくなっていったという話は初めて知りました。

・元野村財閥の大和銀行と野村証券が大蔵省と戦ってきたこと、大蔵省の行政指導を受け入れないことから苛め抜いてきたこと、野村・モルガン信託構想が1983年に成立しかけたものの、大蔵省が握りつぶしたことなど、当時の行政の強さが伝わってきました。
その官僚の中でも問題意識を持って動いていた大蔵官僚佐藤徹の三局合意廃止や無担保社債発行や格付け機関新設などの改革が、本人が病に倒れることで成立せずに終わった話は迫力がありました。
もしそのままこの人物が生きていたらその後のバブルの様子も変わっていたかもしれないと思いました。

第2章 膨張

・1985年のプラザ合意を境目に大きく日本経済が変わった印象がありますが、それ以前の80年代前半から金融自由化で財テクが盛んになっていたこと、プラザ合意後に冷静に金融政策を行っていたドイツに比べて日本は金融引き締めをしなかったこと、時価主義の不徹底から土地の含み益で利益を実現させずにそれを担保として融資し、更に投資する拡大循環に繋がっていったことなど、バブルが膨れ上がる仕組みが説明されていました。

・山一證券の副社長だった成田芳穂が著者の京都大学の先輩で、会長と社長を追い落とすと告白したこと、総会屋を巻き込み、三菱重工業の転換社債を割り当てようとしていたことが東京地検特捜部に追及されそうになり自殺したこと、東京地検特捜部はロッキード事件の後で一息ついている頃でその後の追求をやめ、山一證券の自主廃業まで自浄作用が働かなかったことも印象的でした。

・1987年のNTTの株式上場で、1986年11月の申し込み時には申込者数が1060万人で株主数165万人の公開企業になったというのは壮大だなと思いました。

・大蔵省がバブル拡大の大きな要因である特金・ファントラの損失を表面化しないでいいという政策を1988年1月5日に打ち出し、財テクを継続させたというのは、当時の大蔵省官僚の迷走ぶりが際立っているなと思いました。

・三菱商事で「商社は銀行借り入れに依存し過ぎている」という健全な見方でプロフェッショナルな財務戦略を覆鳴った太田信一郎が、利回り保証型のファンドトラストに負けてしまったというのは、時代の流れとしてバブルに向かう大きな潮流に健全な動きが勝てないという異常な時代だったことが感じられました。

・鉄鋼商社の阪和興業が総資産10兆円を上回る財テク企業になったという話はスケールが大きいなと思いました。その阪和興業が90年代に鉄鋼商社として本業回帰できたというのもすごい話だなと思いました。

第3章 狂乱

・消費税導入とNTT株式公開に参加できなかった庶民の不満がリクルート事件で噴出したという話は興味深いなと思いました。

・秀和のスーパー統合の話や不動産の話は初めて知りましたが、秀和の不動産や統合の話のあったスーパーはよく知っているので面白いなと思いました。

・住友銀行とイトマン事件の話は「住友銀行秘史」で知りましたが、光進の小谷光浩の話は詳しく書かれていなかったので補完できてよかったです。

第4章 清算

・尾上縫のことは他の本でも登場して軽く知っていましたが、詳しく知れてよかったです。
料亭の女将がなぜバブルの話で大きく取り上げられるのかよく分かっていませんでしたが、興銀の難波支店長と結びついて「行」という宗教儀式で株占いをして金融資産の時価が数千億単位になっていたというのはすごいなと思いました。

・特金とファントラという同じような「利回り保証」の仕組みで、営業特金は証券局の問題として摘発し、ファンドトラストは銀行局の問題として「利回り保証はなかった」というダブルスタンダードはおかしな話だなと思いました。

○つっこみどころ

・著者の造語「渋沢資本主義」がバブルまで続いた、というのはかなり無理があるなと思いました。
代表的な企業の経営者の一部で渋沢栄一を尊敬し、その教えを実行しているような人はいたかもしれませんが、日本経済全体がその仕組みの下にあったというのはかなり突飛な話だと感じました。
著者が渋沢栄一をリスペクトし過ぎていて、かなりのこじつけで結び付け、総括している気がします。

・日経新聞の記者だったり日経ビジネスの編集長だったりした著者が、なぜ新潮社から出版しているのかが気になりました。