【差別論スペシャル―ゴーマニズム宣言】レポート

【差別論スペシャル―ゴーマニズム宣言】
小林 よしのり (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4877286225/

○この本を一言で表すと?

 「差別」について著者の体験談をベースに述べたマジメなマンガ+エッセイ

○面白かったこと・考えたこと

・「差別」ということについて、自分なりの考えをもっていたつもりでしたが、一度見直して考えを改めるところもあり、読み易さと併せてかなり良い本だと思いました。

・著者について、「おぼっちゃまくん」の著者であることと、たまにニュースでAKBについて語っていることくらいしか知らず、また極端な意見を「ゴーマニズム宣言」で書いていると伝え聞いていたので内容のマジメさに驚きました。

・著者の自分の誤りや知らなかったことを認める態度は素晴らしいと思います。
「過ちて改めざる、これを過ちという」を正に実践している人だなと思いました。

・この本が最初に出版されたのが1995年なので、今はどうなっているのかを知りたいなと思いました。

・P.14の完全な平等などいらない、才能もない努力もしない者とははっきり差別化してほしいということについては全く同じ意見です。
ただ、私はスタートラインが平等であることは望ましいとは思いますが、それも含めて天与の才能みたいなものだと思っています。
それでも生まれによる差別については否定したい気持ちがあります。

・糾弾会という会が昔からあって運営されているということを初めて知りました。
糾弾される者が拒否できるのか、どういう条件が揃えば開催されるのか、想像では思いつかなかったので調べてみたいです。

・「寝た子を起こすな」という態度については、私も「部落差別とかを学校で教えなかったら自然消滅するのでは?」と思っていました。
この本を読んで中途半端にではなくしっかり学ぶことが大事なのかもしれないと思いました。
ただ、どちらがよいのか、どの程度がよいのかはまだ判断できないなと思います。

・不良の頭で学生時代の著者を助けたSが、親友に輸血のための血を提供したときにその親友が「Sの血は入れてほしくなかった」と言っているのを聞いた時、たまらなかっただろうなと思いました。
ただ、自分も状況が変わればその親友のように理不尽な非難をするのかもしれないとも思いました。
昔読んだ「GO」という小説で主人公が彼女に自分が在日コリアンだと明かした時に拒絶されたシーンを思い出しました。
結婚の話もそうですが、普段は「そんな差別はバカらしい」と思っている人も、当事者になれば変わるということは大いにあり得そうです。

・家系図じまんの話は書かれた時から何年経っても大いにある話だなと思いました。
自分も含めて、自分の肩書やステータスにこだわってしまうところはほとんどの人が持っていて、何も持たない人が自分より下の人を作ろうと貶める話もあまり認めたくはないですが人間らしいなと思います。

・マンガの自主規制はこれほどまでに厳しかったのだなと、その世界を気にしたことがなかったので新鮮でした。
どう移り変わっているのか、今では自主規制以外に倫理規制なども厳しそうですし、現状を調べてみたいなと思いました。

・どんな文章であれ、マンガであれ、誰かを励ますこともあれば傷つけることもあるというのは、確かにそうだと思いました。
どんな前向きな文章でもそれによって追い詰められる人もいたり、全ての人に配慮するというのは制約が大きくなりすぎて中身がなくなってしまいそうです。
逆に言えば、誰かを傷つけるために書いた文章も一部の人はそれを面白がるでしょうし、それもOKなのかというと、それはどうだろうかと思ってしまいます。
これらの境界線をどこに引くかはむずかしいなと考えさせられました。

○つっこみどころ

・過激な内容だと聞いて購入しましたが、意外とまともでその点では拍子抜けでした。

・最後の読者の反響に答えるコメントは面白いですが、著者があまり真面目に答えていない印象を受けました。そういう役割分担にしたのかもしれませんが。

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