【デジタルで変わる子どもたち ――学習・言語能力の現在と未来】レポート

【デジタルで変わる子どもたち ――学習・言語能力の現在と未来】
バトラー 後藤 裕子 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4480073965/

○この本を一言で表すと?

 デジタルと子供の言語学習との関連について、最新の研究や知見を紹介した本

○よかったところ、気になったところ

・デジタルと言語学習の関係について、様々な方向から研究結果が紹介されていました。
何となくそうかなと思っていた内容だけでなく、意外な内容もあり、新たな知見が得られたように思いました。

・動画やテレビなどのメディアの情報が複雑であり、また現実の世界とは異なるため、2歳以前の子供にはあまり良くない影響があること、メディアを活用する場合でも生身の人間との相互のやり取りが重要であるというのは、興味深い内容で、あまり知られずに子どもをメディアに晒している家庭は結構ありそうだなと思いました。

・日本語と英語などのアルファベットを使用する言語で、前者は「拍」、後者は「音素」の言語であり、学習プロセスが異なる話と、デジタルとの関連性が変わってくる話、SNSのようなツールではその違いから「音素」の言語ではプラスになっていることなど、興味深いなと思いました。

・子どもたちに教育用デジタル・ゲームを開発させる話は、授業内容や実際にゲームを作成するところまでやっていて贅沢で羨ましいなと思いました。
その授業自体で得るものが大きいと思いますし、その授業を実験としてみた場合の知見も大きかったように思いました。

・AI、ロボットについて、ある程度の年齢にならないと単なるモノであって友人とは思えず、社会的な能力を獲得する役にも立たないという話は、人間が世界を認知するプロセスと捉え方の変化のプロセスがよく分かる話だなと思いました。

・言語能力を分解して、基本的言語知識とその応用能力である「自律的言語使用能力」「社会的言語使用能力」「創造的言語使用能力」にわけて考えているのは興味深く、教育内容がどこに注力してどこをフォローできていないのかがわかりやすい考え方だなと思いました。

○つっこみどころ

・海外の大学教授だからか、日本語が微妙な箇所が散見されました。
「早速」を「拙速」や「早計」のような文脈で使用したり、「データー・ベース」「データ・ベース」などの表記ゆれがあったり。

・各章の内容を読んでから各章の最後のまとめを読んで、「そんな内容だったかな?」と思うことが結構ありました。
様々な相反する事例も紹介される中で単純なまとめにしようとしたような印象を受けました。

・第1章でジェネレーションZは他の世代の定義と違って一般的に1990年以降に生まれた世代を指す、と明確に書かれていましたが、別のZ世代をメインテーマに据えた本ではZ世代の定義が様々であることが書かれていて混乱しました。

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