【自省録】レポート

【自省録】
マルクス・アウレーリウス (著), 神谷 美恵子 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4003361016/

○この本を一言で表すと?

 古代ローマ皇帝、哲人皇帝のストア学派的日記・メモ帳の本

○面白かったこと・考えたこと

・マルクス・アウレリウスの名前は世界史の本や哲学に関する本でよく見ていましたが、いろいろな本で触れられていたものの、具体的な考えはあまり出てこず、その著作に触れることができてよかったです。

・様々な哲学の師がいて恵まれた環境にいたとはいえ、哲学的な考えを背景に様々な深い考察がなされていて、いろいろ考えさせられたり、納得させられたりする文言がたくさんありました。

・パッとどのページを開いても「なるほど」と思うような話が出ているので、『なにかに迷ったときに読む本』という書評も納得できるように思いました。

・自分に対して自問する内容が多いから「自省録」と呼ばれるのだと思いますが、自問の内容や口調に波があって、かなり激しく問い詰めている箇所もあり、その時々のマルクス・アウレリウスの状況や感情が溢れ出ていて面白いなと思いました。

・自分に起こったことは自分の責任であること、周りの何者も自分に対して自分が認めない限りは影響を与えないこと、自分次第で周りをコントロールできなくても自分自身はコントロールできることが何度も出てきましたが、これについては自分でも心がけていることでもあり、同意できるなと思いました。

・ローマやアジアも宇宙から見ればわずかな一部、という記述など、当時の宇宙観、感覚などが知れてよかったです。

・ところどころイソップ童話が元になった記述があり注釈されていましたが、イソップ童話が紀元前6世紀くらいのアイソーポスという奴隷やそれ以前の寓話などからできていて、この本が著された当時も知られていたというのは興味深いなと思いました。

・時折皮肉が効いている言い回しがセンスにあふれていて面白かったです。
第十二巻二十七章の「まったく、自分にうぬぼれのないことを自負して、それでうぬぼれている人間は、誰よりも一番我慢のならないものである」等。

○つっこみどころ

・メモ書きのように各巻の各章の内容がバラバラで、違う巻で参照されたりしていて、かなり読みづらかったです。

・第七巻の一章で「古代史も中世史も近世史も」とありましたが、これは当時から見てそのような時代区分のようなものがあったのでしょうか。
歴史学上の中世史・近世史と混同しないように別の翻訳にするなどの工夫をしてほしかったなと思いました。

・マルクス・アウレリウスは人に見せるつもりで「自省録」を書いたのではないだろう、と書かれていましたが、かなり人に読まれることを意識している文章に見えますし、しっかり保存されて文章が現代にまで引き継がれていることからも、どこか世に出したくて書いていたのでは、と思いました。

・「自省録」に見るマルクス・アウレリウスの考え方は「公益のみ優先せよ」ですが、ここまで徹底されると為政者としてはいいのかもしれませんが、食事や遊びなどを全否定されてしまうと友人づきあいや家族としての付き合いはかなりし辛い人物ではないかと思えました。
同じ人であるから全ての人を愛し、許すような話が多かったですが、よく言われる「全ての人に平等な人は全ての人に冷たい」という人物像と重なるように思えました。

・Wikipediaでマルクス・アウレリウスやその家族のページを見てみましたが、実子を次の皇帝にしないことが続いていた中で若年のコモンドゥスを次期皇帝として扱い、かなり優遇したようでした。
コモンドゥスはその後、姉に暗殺されそうになったり寵臣に専横されたり、剣闘士になったりした後で暗殺され、兄弟も含めて完全に子育てに失敗しているように思えました。
歴史上のマルクス・アウレリウスの経歴を見ると、「自省録」はあくまで『こうだったらいいな』という願望がつらつらと書かれただけなのかなとも思いました。

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