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【社会契約論/ジュネーヴ草稿】レポート

【社会契約論/ジュネーヴ草稿】
ジャン=ジャック ルソー (著), 中山 元 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4334751679/

○この本を一言で表すと?

 18世紀に書かれた「人民主権」についての定義の本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・自由についてや人民主権について、ルソーが最初に提唱したわけではなさそうですが、ルソー自身の考えが土台から考えて述べられていて、このような人物が今から300年以上前に生まれていたというのはすごいなと思いました。
現代の国家を当てはめてみても同じ土俵で論じることができるようで、読みながら当時の国家や今の国家の制度を思い浮かべながら読んだりできるなと思いました。

・一度ある程度読み進めて、時間が経つとどういった論理だったかを思い出せなくて最初から読み直しましたが、始めに読んだ時は論理の飛躍だと思ったりしてひっかかるところが多かったのが、二回目はそれほどひっかからずに読み進めることができたのが印象的でした。
後から論理の穴をふさいで最後にはすっきりとするような、そんな構成になっていたのかなと思いました。

・ルソーは直接民主主義しか許容していないと別の本で読んだことがあり、政府の三つの分類として貴族制を挙げていて肯定的に述べられていたので不思議に思っていましたが、別のところで代議制は最悪の制度だと出ていて、「貴族制と代議制は似たようなものでは?」と疑問に思いました。
最後まで読み通してようやく、人民に委任された政府の構成要素である貴族と、人民主権自体を委ねられた代議士では意味が異なるのかなと思えました。
裏表紙に書かれている代議士制の日本の国民が「選挙のあいだだけ自由になり、そのあとは唯々諾々として鎖に繋がれている奴隷」というのはキツイ言葉ながらもすごく腑に落ちるなと思いました。

・第4編の最後で書かれていたキリスト教の無世界性の話と、社会をまとめるため程度に必要な公民宗教の提唱はかなり尖っていて面白いなと思いました。

・途中までルソーが「国家」というものに縛られ過ぎているように感じていましたが、途中でどの規模でも社会契約や一般意思が可能性として成立し得ると書かれていて納得できました。
直接民主主義でうまくいく「国家」には規模的な限界があることにも触れられていて、それも納得できました。
当時においてもすでに国家レベルでは実践し難い内容であることも認められていて、国家を包含する「連邦」について次に書くようなことが書かれていましたが、どのように書かれていたのか、解説でも触れられていなかったので未完かもしれませんが、どのように書くつもりだったのかを知りたいと思いました。

・解説がかなり充実していて、ルソーの他の著作も含めて、ルソーの考え全体を説明してくれていてよかったです。
解説自体が難解で、読み進めるのに息継ぎなしで運動するような気持ちを味わいましたが、全てを理解することはできないものの、ある程度理解を進められたように思いました。

・解説の終盤でフランス革命後の政府がルソーの考えの一部を拝借して残りを改竄してしようしたり、ルソーを改葬までして担ぎ出したりしていたというのは、当時のルソーの社会的影響の大きさが出ているなと思いました。

・経歴を見て、ルソーが恋愛小説家としても売れていたと知り、とんでもなく多才だなと思いました。

・人は単一の社会契約や一般意思に属するのではなく、国家全体の一般意思と同時に政府に属する者の一般意思もある、と書かれていました。
日本の場合、国家、都道府県、市区町村・・・と地域ごとの社会契約、読書会などのコミュニティー、家族・親戚の社会契約などもあるのかなと思いました。

○つっこみどころ

・第2編第7章で述べられている立法者について、急に理想論的な実際にありえないような人物像が求められると書かれていて驚きました。
ルソーがペシミストだと解説に書かれていましたが、「こういう人間がいればうまくいく・・・しかしありえない」という悲観論でもあったのかなと思いました。
王位を捨てたスパルタのリュクルゴスのように、それまで地位があり、かつ試したい発想があり、それを実践する機会があったような人物、国政レベルになると紀元前800年くらいまで遡らないと存在しないような人物を挙げるしかないのかなと思いました。

・ジュネーヴ草稿と公表された原稿の差がそれほどないように感じました。差異のある箇所にところどころ本文で注釈を入れるくらいでよかったのでは、と思いました。