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【氷川清話】レポート

【氷川清話】
勝 海舟 (著), 江藤 淳 (編集), 松浦 玲 (編集)
https://www.amazon.co.jp/dp/406159463X/

○この本を一言で表すと?

 勝海舟の老後に語った昔話の本

○面白かったこと・考えたこと

・勝海舟のことは漫画や小説でちょこちょこ出てくるのである程度知っていましたが、具体的にどのような動きをしていたのかはあまり知りませんでした。勝海舟が行ったこと、勝海舟から見た明治・幕末が知れてよかったです。

・勝海舟の話に登場する人物の説明が、分かり切っている人物についてはともかく、自分の知らない人物の説明もあってよかったです。

・現代でも江戸時代を過小評価して明治維新以降を過大評価して語られることが多いような気がしますが、勝海舟の晩年頃でもそのようで、勝海舟が数字などを実例に挙げて比較し、江戸時代を評価しているのは興味深いなと思いました。

一 履歴と体験

・勝海舟が貧乏だったというのは何となくイメージ通りですが、その勝海舟を支援した渋田利右衛門のような人物がいたことは初めて知りました。
どれほど才覚があってもそれだけでは芽が出るかわからず、それを支えた人物がいたというのは納得できる気がします。

・小説や漫画では海軍に関わっているのに船に弱いイメージで描かれていましたが、咸臨丸でアメリカに渡航したときは体調が悪かったからだと改めて分かりました。後付けの言い訳かもしれませんが。

二 人物評論

・勝海舟が西郷隆盛を評価していたことは知っていましたが、その西郷隆盛と並べて横井小楠を評価しているのは驚きでした。
司馬遼太郎の「竜馬がゆく」などではかなり低く評価されて書かれていた印象があり、勝海舟も分かりにくい人物と書いている通り、評価が大きく分かれるのだろうなともいました。

・あまり知らない幕末・明治の人物の評論が載っていて興味深かったです。

三 政治今昔談

・内政や外交の極意を「誠実」としているのは、才覚があるからこそ言えることのような気がしますが、それで通してある程度成功させてきたのは勝海舟のすごいところだなと思いました。

四 時事数十言

・その時代を生きた人物がその時代を評価して発言している内容が、その偏見による意見の偏りも含めて面白いなと思いました。

五 勇気と胆力

・勝海舟が学問よりも自分のやってきたことに役立ったのは剣術と禅だと言い切っているところが面白いなと思いました。
これも才覚あってのことだと思いますが、かなり具体的に(本当かどうかは別として)その訓練模様も述べられているのが興味深かったです。

六 文芸と歴史

・文芸の評価については、その評価されている対象をあまり知らないので勝海舟の意見が妥当かどうかも判断できないなと思いました。

七 世人百態

・毛色の変わった市井の人間と交わることで、その処世訓などを学んで役に立ったというのは、ありそうな話ですが、実際に何かを成し遂げた人がそのことについて具体的に書いていることは珍しく思え、興味深かったです。

・勝海舟の交流の広さで、幕末・明治の偉人と言われる人よりも市井の一部の人物を評価しているのは面白いなと思いました。

・どのようなところで得た知識やノウハウも、全く違う場所で活きるというのは勝海舟の時代も現代も変わらないと思いました。

八 維新後三十年

・維新前の三十年と維新後の三十年を体験した人物の感慨が込められているなと思いました。
現代でも、戦前・戦後を体験したり、バブル前・バブル後を体験したりした人物はこのような感慨を得るのかなと思いました。
現代も変化の大きい時代で、その変化の前後を生きている身で、時が経てばこのような感慨を得るようになるかと思うと面白いものだなと思いました。

○つっこみどころ

・編者が氷川清話を本にした吉本襄のことをよほど毛嫌いしているのか、「元本はここがおかしい」「ここを改竄している」等の記述が相当に多く、感情的なまでに批判しているのが邪魔に思えるところもありました。

・立場的には晩年の、維新の元勲たちが出世していった中でそちらを選ばなかった(もしくは選ばれなかった)ことから、どこか斜に構えて当事者意識のない発言や「下種の後知恵」的な発言が多く、元々は小説や漫画でかなり好きな人物だったのですが、どこか人間として軽い、薄い人物であるような印象を受けました。

・気兼ねなく話していたことをまとめた文章なので仕方のないところもあると思いますが、勝海舟の好き嫌いが政策論や政策評価に繋がっているところは説得力がないなと思いました。