【日本農業への正しい絶望法】レポート

【日本農業への正しい絶望法】
神門 善久 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4106104881/

○この本を一言で表すと?

 独特の視点から見た日本農業終焉論の本

○この本を読んでよかった点

・他の農業・農政に関する専門家から危険視されるようなタブーに踏み込んでいる著者の覚悟が感じられるなと思いました。

・これまでに読んできた農業に関する本ではあまりフォローされていない、JAが有効に機能していた側面にも触れていて勉強になりました。

・最近、有機農法について疑問視する内容をいくつかの本で見てきましたが、近隣農地への悪影響や、そもそも生産物が良くなるかどうかについて詳細に説明されていてより深く理解することができました。

・良い農産物、通常の農産物、有機農法による農産物で、農産物が腐るまでの期間や味で有機農法が一番ダメだったというのはなかなか衝撃的だなと思いました。

・第1章で紹介されている2人の名人や第7章で紹介されているK名人の生き方がカッコいいなと思いました。

○つっこみどころ

・著者が研究している分野、自分がよく知っている人を過大視している傾向がかなりあるなと思いました(農業ブームと満州ブームを同等視、技能集約型農業の絶対視など)。

・著者の専門外と思われる分野を気軽に引用して断言してしまっている箇所や結論が短絡的な箇所が散見されました(戦時経済、満州進出の経緯や位置づけ、製造業の下請け構造、TPPなど)。

・食べることには、「生きるための食」と「楽しむための食」の2つの面があると思いますが、前者の面、特に量的な面を軽視し過ぎではないかと思いました。

・マーケティング、ブランディングや日本人の舌が「愚鈍化」したことについて「川下問題」として断罪しています。
前者については売り方について工夫することはやはり大事だと思います。
著者の周りの「名人」がその工夫について批判できるのは自分がそれをせずに(あるていど偶然のもとで)うまくいっているから言えることではないかと思いました。
後者については「愚鈍化」していない日本人だらけになったら食えない人が大量に出るのではないかと思いました。

・同年代の兼業農家の方が総じて都市労働者より所得が高いと書いてありましたが、兼業農家でも通常の定年の年齢を超えている人が多いわけで、通常就労年齢で比較するのはそもそも恣意的で全体を代表しているとは言えないのではと思いました。

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