• 様々な本、様々な資格の話が盛りだくさん(の予定)

【日本のリアル 農業・漁業・林業 そして食卓を語り合う】レポート

【日本のリアル 農業・漁業・林業 そして食卓を語り合う】
養老 孟司 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4569806988/

○この本を一言で表すと?

 養老孟司氏と食卓・農業・漁業・林業の専門家との対談集

○この本を読んでよかった点

・全体として読みやすく、その割に各分野の論点がいろいろ見えてくる本で良かったと思います。

・農業、漁業、林業に携わっている方たちが、国内や海外の論文などで研究したり現地を視察したりすることで解決策を探っている姿に、これらの産業は知識も知恵もコネも体力も必要な本当に複合的な産業だなと思いました。

第一章 現代人の日常には、現実がない

・マスコミで「震災後、家族の食卓が復活している」というようなことを報道していたのを見たことがありますが、実態が違うことを指摘していてなるほどと思いました。

・食卓の話から、生活保護制度や新興宗教、最近の新入社員のへこみやすい性質に繋げて考えているのはなかなか説得力があるなと思いました。

第二章 田んぼには肥料も農薬もいらない

・不耕起農法について「食の終焉」という本で現代の終焉に向かう食の解決策としてクローズアップされていましたが、かなり前から日本で取り組んでいる方の話を知ることができてよかったです。

・現地に適合した農法に改良したり、農業についての教育を実施したり、将来のためにマンションのベランダでできるSRI農法を研究したり、先を見据えて動き続けてこられた岩澤信夫氏の活動に感動しました。
2012年5月に亡くなられたということは本当に残念だなと思いました。

第三章 山と川に手を入れれば、漁業は復活する

・海での養殖にその背後の山と川が大きく関係していることを初めて知りました。
魚介類の成長に鉄分が必要で、その鉄分は山の落ち葉が腐食して川で海まで送られてくる仕組みになっていることを解析した話はすごいなと思いました。
海が山や川と一体となった複雑系になっているというその視野の広さに蒙を啓かれる思いです。

第四章 「林学がない国」の森林を救う

・林業についてほとんど知らなかったので書かれていることが新鮮に感じました。
木がびっしりと並んでいる山を見て自然っていいなと思ったことがありますが、実は無計画に密植されて間伐されずに放置されている不自然な姿だったということを知り、自分を恥ずかしく思いました。
日本の実態に合わせた間伐のやり方を提唱している鋸屋茂氏の活動はすごいなと思いました。

・P.162,163で「銃・病原菌・鉄」「文明崩壊」の著者のジャレド・ダイヤモンド氏が本来の鳥類学者としての研究で紹介されていて面白いなと思いました。
日本は森林国と言われているが実は外材輸入で守られているだけ、という話は「文明崩壊」でも載っていました。

○つっこみどころ

・第一章の食卓に関する岩村暢子氏との対談で一部分、第二章の農業に関する岩澤信夫氏との対談ではほとんど、養老孟司氏の発言がスルーされて対談が進んでいるかのような構成になっていて笑えました。
特に第二章ではお互いがお互いの話を聞いていないような形になっていて、編集者の腕が悪いのか、対談者が話を聞かない人なのか、原因は何だろうと気になりました。

・第一章で岩村氏の調査に協力した対象についてかなり厳しい指摘をしているところが面白いなと思いましたが、アンケートに協力してボロクソに言われることが広まったら今後のアンケートに支障が出たりしないのかなとも思いました。