【資本主義と自由】
ミルトン・フリードマン (著), 村井 章子 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4822246418/
○この本を一言で表すと?
小さい政府・市場主義を志向する自由主義の古典
○考えたこと
・ミルトン・フリードマンが「熱い」人とだということが随所で伝わってきました。
⇒各版のまえがきで1962年の初版の時は認められず、この本の姉妹本「選択の自由」が出版された時に大きく取り上げられたことについて、周囲の理解のなさについて憤り
⇒序章で、アメリカでは「自由主義(liberalism)」という言葉が国家の干渉と温情主義(paternalism)を善しとする福祉と平等を重視する考え方に乗っ取られ、古典派自由主義が「保守主義」と言われるようになったことが許せず、自分の主張する自由主義をliberalismとして書くことを前置き
・マイケル・サンデルなどの「市場」の失敗を主題とする本を最近何冊か読んでいたので、全く逆の「市場」の正当性を示す本を読むことで自分の中でバランスが取れて両方向に考える幅が広がったように思いました。
・政府より市場が優れていることの説明として、政府は多数決で一つの結論、市場は機械的にそれぞれの結論が併存していること、そのことから「言論の自由」のような全体に関わることは政府でも決めることができますが、「石油業界の優遇措置」のような個別案件の場合、供給側は強い利害関係があるので積極的に働きかけ、需要側は多数に分散し個別には利害関係が弱いためそれだけのためにそれほど関わらず、結果として一部の者が偏った利益を得る、という理論はなるほどと感心させられました。
・普段当たり前のように受け入れていること(教育を政府がメインで実施、医師の免許制度、福祉政策など)を、政府が関わることが正しいのかどうかを著者の自由主義的観点から見直して、メリットとデメリット(ほとんどデメリット)を導き出しているのはどれも新鮮でした。
・「第7章 資本主義と差別」で皮膚の色に対する好き嫌いも市場で考えればいいという結論を出したり、「第11章 社会福祉政策」で公営住宅を設置することで効率が悪いだけでなく問題のある家庭を一ヵ所に集めることで手が付けられなくなると書いたり、読む人によっては感情的なりそうな論点を躊躇なく書くところが凄いなと思いました。
・「第12章 貧困政策」で書かれている負の所得税(税金の基礎控除額に満たない所得の場合に「基礎控除額-所得」の額に負の所得税率をかけた額を支給する)の考え方は面白いなと思いました。
うまく導入できれば今の日本のように働くより生活保護を受けていた方が収入を多く得るという事態は避けられそうだなと思います。
・最後の高橋洋一の解説が面白かったです。
この本に書かれている学校に補助金を渡す代わりに子供一人当たりのクーポンを渡す政策を経済諮問会議に提出していたというのは、通っていたら今の教育制度がガラッと変わりそうだなと思いました。