【人新世の「資本論」】簡易レポート

【人新世の「資本論」】
斎藤 幸平 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4087211355/

○この本を一言で表すと?

 新たなマルクス解釈と環境危機警鐘の本

○よかったところ、気になったところ

・「資本論」の新解釈がメインの本だと思っていましたが、気候変動の解決が大きなテーマとして採り上げられ、その唯一の解決策として「資本論」が提唱するコミュニズムが挙げられているのが印象的でした。

・マルクスの晩年の著作・ノートの研究から、「共産党宣言」のときとは異なる見解をマルクスが持っていたこと、マルクス・レーニン主義とは異なるマルクスの考え方などが説明されていて、意外な内容が多く、新鮮でした。

・コモン、コモンズに関しての内容は興味深いなと思いました。
「コモンズの悲劇」で、自身のものではなければ過剰な搾取の対象になるイメージが強かったですが、資本主義の中のコモンズではなくて、コミュニズムの中のコモンズであれば潤沢なものとして管理できるということでしょうか。

・「三・五%」の人々が非暴力的な方法で本気で立ち上がると社会が大きく変わる、という話は興味深いなと思いました。

○つっこみどころ

・SDGsの批判から始まっていますが、SDGsで示される目標・達成基準・指標自体はそれほど悪くなく、著者の警鐘の対象である気候変動の危機にも、格差社会にも対応しているように思います。
SDGsとその取組が実現できるかどうか、それほど踏み込んでないと言えば、そうかもしれませんが。

・著者の主張の根拠がマルクスの論説で、マルクスの論説を正しいものとして話が進められていて、内容の根拠が薄いなと思いました。

・「潤沢な脱成長経済」はその道筋を含めて理想論であり過ぎて到達は無理ではないかと思えました。

タイトルとURLをコピーしました