【失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇】
野中 郁次郎 他(著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4478021554/
○この本を一言で表すと?
失敗の本質出版後に新たに分かったことなどをブラッシュアップした「新・失敗の本質」
○この本を読んでよかった点
第1章
・フランス版失敗の本質「フランス敗れたり」が紹介されていて、読むきっかけになって良かったです。
・リーダーに求められる六つの能力「①目的をつくる」「②場をつくる」「③現実を直観する」「④直観を概念化する」「⑤概念を実現する」「⑥実践知を組織化する」を、「現場感覚(②と③)」「大局観(①と⑤)」「判断力(④と⑥)」の三つにまとめ、事例を通してこの三つがどのような働き方をするかがまとめられていてよかったです。
第2章
・モノではなくコトに注目し、表面の事象だけでなく本質に着目するという視点はいいなと思いました。
・哲学の素養、リベラル・アーツを備えることの重要性はわかるような気がします。
経営戦略やその実践例を知るだけでなく、さまざまな素養があった方が深みのある経営者になれそうな気がします。
第3章、第4章
・海軍、陸軍のそれぞれ「学習しない組織」になった時の脆弱性がよく分かりました。
第5章
・「総力戦研究所」という理想的な政策検討組織があり、未来予測がかなりのレベルでできていたことには驚きました。
それにも関わらず、その知見を利用できなかったのは残念ですが、予測・計画を立てることとそれらを現場に落とし込むことはまた違うのだという良い事例だなとも思いました。
第6章
・「最前線」の兵士の心理などに触れた研究は、他のトップや参謀の事例とは違う趣でいいなと思いました。
現場において必要なものは身近な感情や信頼感であるというのは、納得できます。
第7章
・石原莞爾は大局観も戦術レベルに落とし込む力も持っていたのだと思いますが、それに沿って人を動かす力に欠けていたために脱落してしまったというのは、現代でもありそうな話だと思います。
何かを成し遂げるためには能力と人格の両輪が必要なのだと思いました。
第8章
・「失敗の本質」でも悪い人材の典型として取り上げられていた辻政信がさらに取り上げられていて面白かったです。
ここまで欠点が実際の失敗に繋がっていて、それを排除できない日本軍の脆弱性が際立っていました。
第10章
・ノモンハン事件から得られる4つの教訓「情報活動上の教訓」「組織構造上の教訓」「戦略上の教訓」「組織学習上の教訓」は簡潔にまとめられていていいなと思いました。
第11章、第12章
・「空気」「派閥」が経済的に有用もしくは効率的という暗黙の理由で存在しているというのは興味深いなと思いました。
自覚していなければ意図せずに流されてしまう要素でもあると思いました。
○つっこみどころ
・完全に新しい本と思っていて、ハーバード・ビジネス・レビュー2冊を転載しているだけの本ということを読み始めてから知りました。
1冊しか読んでいないので半分は初見ですし、読んだことがある章ももう一度見直す機会になってよかったと思いますが。
・山口多聞がすごい人物だったという話はよく聞きますし、実際にそれだけの人物だったのでしょうが、第9章は筆者の思い入れが強すぎて逆に薄っぺらな内容になってしまっていました。