【新訂 孫子】
金谷 治 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4003320719/
○この本を一言で表すと?
国家戦略から戦術まで綺麗にまとめた帝王学の本。
○各篇のまとめ(岩波文庫「孫子」P.13を参考に)
・第一 計篇:戦う前に考えるべきことを明らかにし、何を備えているべきかを述べている。
・第二 作戦篇:戦費の大きさに注目させ、そこから短期決着の重要性を述べている。
・第三 謀攻篇:戦わずして勝つ、戦争ではなく謀によって勝つことの大切さを述べている。
・第四 形篇:立場、状況を勝つべくして勝つような「体勢」について述べている。(静的)
・第五 勢篇:予め決めた「体勢」からどのように動くかについて述べている。(動的)
・第六 虚実篇:勝つべくしてかつ要点を押さえたうえで柔軟に運用することについて述べている。
・第七 軍争篇:状況を把握し、機先を制することとその難しさについて述べている。
・第八 九変篇:戦争の原則とその原則を運用する将の大切さについて述べている。
・第九 行軍篇:軍の進め方及び進めている時の注意点について述べている。
・第十 地形篇:地形およびその地形を利用するための体制を整えていることの重要性について述べている。
・第十一 九地篇:各地形における運用と、地形によって兵の士気を管理する方法について述べている。
・第十二 火攻篇:火攻めの利得と、戦果を修めるべきことについて述べている。
・第十三 用間篇:間諜の種類、効用とその使い方について述べている。
○好きな箇所
・謀攻篇 五節(P.51~):故に勝ちを知るに五あり。・・・彼れを知りて己を知れば百戦して危うからず・・・
⇒敵を知ることだけでなく、「己」を知ることの重要性を知ることができます。
・形篇 一節(P.54~):・・・昔の善く戦う者は、先ず勝つべからざるを為して、以て敵の勝つべきを待つ。・・・
⇒その場その場の対応でなく、「勝つべくして勝つ」体制を整えることの重要性を知ることができます。
・虚実篇 一節(P.74~):・・・故に善く戦う者は、人を致して人に致されず。・・・
⇒周りに流されることなく、自ら主体性を発揮することが重要であることを知ることができます。
・虚実篇 七節(P.86~):・・・故に五行に常勝なく、・・・
⇒五行思想を通して、何に対しても必ず勝ち得る手段が残されていることを知ることができます。
・軍争篇 三節(P.94~):・・・其の疾きことは風の如く、・・・知り難きことは陰の如く、・・・
⇒これは響きが好きなことと、有名な「風林火山」が不十分だと知ることができます。
・九変篇 四節(P.106~):是の故に、智者の慮は必ず利害に雑う。・・・
⇒良い状態の時に驕ることなく、悪い状態の時に屈することのない心構えができます。
○感想
・これまで「孫子」の解説本を読んだことがありましたが、どれも内容を抜粋した物で、今回網羅的に学ぶことができて良かったです。
・都度の戦闘ではなく、その戦闘を取り巻く戦術、戦略が重要であることが、この時代にこれだけ論理的に説明されていることが凄いと思いました。実際の戦闘にいたるまでにどれだけ勝負を決めているか、その重要性は現代においても全く変わりのないものだと思います。
・兵站の重要性について、これだけ明確に理解させる文章があることに感動しました。(特に作戦篇)
・情報の重要性について、これだけ深く理解している文章があることに感動しました。(特に用間篇)
・「孫子」の原文はシンプルでどうとでも取れるので、すごいのは曹操を始めとした注釈を加えた人なのかもしれないなとも思いました。