【得点力を鍛える】
牧田 幸裕 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4492557237/
○この本を一言で表すと?
得点力を決めるものとその鍛え方について書いた本
○よかった点、考えた点
・タイトルから読みやすい代わりにありがちな内容かなと思っていましたが、自身の考える「得点力」を体系的に整理して、自身の大学受験や外資系コンサルティング会社就職などを例として説明していて得るものが多い本だなと思いました。
・受験でもビジネスでも同じように活きる「得点力」を、ビジネスマンの親が子どもに伝えてあげられるスキルとして書いてあり、著者自身が自分の子どもに伝えて実際に効率的に受験を成功させたというのはすごいなと思いました。
・私も「要領がいい」と言われる方だと思っていましたが、著者の基準からすると「壮絶な努力を続けないと結果を出せないタイプ」の側だなと思いました。
・出版されてすぐに購入して積読になっていた「フレームワークを使いこなすための50問」の著者だということを知り、購入してから3年以上経ってようやく読み始めるきっかけになりました。
第1章 得点力とは「やらないこと」を決める力
・京都大学の著者の要領よく好成績を出す友人たちが「やらないことを決めれば、努力を最適化できる」と考え、「勉強時間でがんばったと勘違いしない」「1ページ目からやり続けない(重要なところを見極めてそこだけやる)」「問題集は解かない(詰まる問題はすぐに解答をみて解法を憶える)」「ノートをとらない(その分授業・講義を真剣に聴く)」「ギアを上げる途中であきらめない」といった習慣をつけていたというのは合理的でまさに「賢い」人たちだなと思いました。
第2章 得点力とは「相手の求めるもの」に応える力
・「相手の求めているもの」を正確に把握し、大学院の試験では何が決め手になるかを判断して注力するところを絞って1位の成績で合格し、倍率100倍以上の外資系コンサルティング会社の就職試験でAA内定を取った著者の分析力と実行力はすごいなと思いました。
第3章 得点力とは「想定外」でも対応できる力
・生産性を高めることで「想定外」でも素早く対応できること、原理原則となる判断基準を持っておくことで「違和感」を感じ取ることの大切さが書かれていて、当たり前のようで積み重ねがないとできないことだなと思いました。
第4章 「プロジェクトマネジメントスキル」で得点力を鍛える
・小学生の夏休みの計画と仕事のプロジェクトマネジメントを同じ次元で考えていることが面白く、しかもかなり的を射ていてよかったです。
計画通りにいかない要因として、「目標設定が甘いこと」「現状把握が甘いこと」「MECE(モレなくダブリなく)に問題を構造化できないこと」を挙げていて、その解決策として「プロジェクトマネジャーが現場のタスクを理解する」「現場のスタッフがプロジェクトマネジメントスキルを身につける」を挙げ、小学生の夏休み計画にもそれを落とし込んだ例を出していてとても分かりやすかったです。
第5章 「3C分析」で得点力を鍛える
・「市場」「競合」「自社」を分析する「3C分析」で、東京大学を例に挙げ、PEST(政治、経済、社会、技術)分析で市場を検討し、各国の学習到達度でライバルとなる海外の学生を評価し、求められる「自分」を考えるというプロセスが書かれていて、ビジネスでも入試でも求められていることは同じとしているのは面白いなと思いました。
第6章 「イシューからはじめる」ことで得点力を鍛える
・イシューに集中することができない日本企業の会議の例はうなずけるところが多かったです(15分で終わる会議が2時間かかっても終わらずに次に持ちこされるなど)。
○つっこみどころ
・副題の『「やらないこと」を決めて努力を最適化する技術』は著者が提唱する得点力の一要素であって全てではなく、安っぽい印象になるなと思いました。
売れそうな副題を出版社の人が決めたのかなと思いました。
副題では「要領よく楽にこなすスキルを身につけられる」と期待してしまいそうですが、実際は「段取り八分」のように事前の作業に努力を集中しようという話だったように思えました。
・第6章で「イシューからはじめる」を「エコ燃費思考」と自分で名付けつつもその後はイシューという言葉を使い続けているのはすでに売れている本のキーワードを使った方がいいという判断でしょうか。
・昔の著者の「壮絶な努力」を否定するような書かれ方をしていますが、その「壮絶な努力」があったからこそ、その後身につけた「得点力」が活きているようにも思えました(私自身が「壮絶な努力」派なのでそうあってほしいと思っているだけかもしれませんが)。