【アサーション入門――自分も相手も大切にする自己表現法】レポート

【アサーション入門――自分も相手も大切にする自己表現法】
平木 典子 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4062881438/

○この本を一言で表すと?

 自他尊重の考え方と実践方法について書かれた本

○よかった点・考えた点

・自他尊重について大事な点が分かりやすく書かれていて、読む時間当たりの得られる内容が多い良本だと思いました。
「7つの習慣」に書かれていることと似ているところもあり、「割と自分はできている方かな」と思いながらもよく考えてみると「割と出来ていないな」と気付かされる自分の自覚を促すいい機会になりました。

・「アサーション」というと会計監査業界で使われている「経営者の主張(実在性、網羅性、権利と義務の帰属、期間配分の適切性、表示の妥当性)」のことかと最初は思いました。
公認会計士協会が「アサーション」という言葉を使い始めたのは21世紀になってからだと思いますので、この本の著者の方が先に使っていたのかなと思いました。

第一章 アサーションとは自分も相手も大切にする自己表現

・アサーティブになるための「第一ステップ 自分の気持ちを確かめる」「第二ステップ 正直に言語化してみる」は他の全く違う系統の自己啓発系の本でも見たことがある気がしますが、「自覚」を促す面では確かに良い方法だなと思いました。

・P.49,50の各表現のタイプの違いはこれだけで判別できるかはともかくとして自分が普段どの表現を使っているか、シチュエーションの違いを含めて分かりやすいなと思いました。

第二章 「人として誰もがやってよいこと」を認め合う

・三つの誰でもやっていいこと「自分らしくあってよい」「自分の気持ちや考えを表現してよい」「過ちや間違いをし、それに責任を取ってよい」ということを子どもの人間形成に絡めて説明していますが、自尊心を育てる上で確かに大事なことだなと思いました。

第三章 考え方をアサーティブにする

・「危険や恐怖に出会うと、心配になり何もできなくなる」「過ちや失敗をしたら、責められるのは当然だ」「物事が思い通りにならないとき、苛立つのは当然だ」「誰からも好かれ、愛されなければならない」「人を傷つけてはいけない」という五つの考え方と「自分」「他の人」「一般の常識」の三パターンで受け取った場合の合計15通りについて一気に考えることができて、なかなか意義深いなと思いました。
こういった考え方への対処法が「7つの習慣」の「第一の習慣」で書かれていたことに似ていて自己啓発系の本は違った出発点からでもどこか共通するところに到達するのだなと思いました。

第四章 アサーションで身につく三つの力

・ここで言われている「タスクのためのアサーション」と「メンテナンスのためのアサーション」とそれらのバランスの話で、私は「タスク」に気を付けていても「メンテナンス」については結構疎かにしているかもしれないなと思いました。

・「メンテナンス」がマズローの欲求五段階説で言う社会的欲求の充足には必要で、その不足が社会的欲求を飛ばして自己承認・自己実現に向かう不自然さを生み出しているというのは感覚的に何となく納得できる気がします。

第五章 心に届く伝え方

・アサーションの三つのポイント「自分の思いを確かめる」「事実や状況を共有する」「提案は具体的に述べる」はコミュニケーション全般に言えることだと思いました。

・アサーションについて相手が知らない場合でも自分が始める、相手を変える前に自分を変える、というのも「7つの習慣」でいう「インサイドアウト」の考え方だなと思いました。

○つっこみどころ

・三種類の自己表現「非主張的自己表現」「攻撃的自己表現」「アサーションを実現した自己表現」という区分は、分かりやすくしたのでしょうが若干アサーションを上に持ってき過ぎの極端な区分で「非主張的自己表現」「攻撃的自己表現」以外は全てアサーションなのかという誤解を生みそうだなと思いました。(第一章 アサーションとは自分も相手も大切にする自己表現)

・「非主張的自己表現」「攻撃的自己表現」のデメリットの話も分かりやすいですが、ケースバイケースで必要な時もありそうだと思いました。(第一章 アサーションとは自分も相手も大切にする自己表現)

・「タスクのためのアサーション」と「メンテナンスのためのアサーション」はともかく「自己実現のためのアサーション」は言いたいことは分かりますが、前二者と並列で述べるほどの独自性がなく、二つの力とその切り替えという話でよかったのではないかと思いました。(第四章 アサーションで身につく三つの力)

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