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ゼミナール経営学入門 「第6章 国際化の戦略」

ゼミナール経営学入門 第3版
伊丹 敬之 (著), 加護野 忠男 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4532132479/

第6章<国際化の戦略>

1.企業の国際化とその動機

○なぜ国際化するのか

①市場を求めて⇒国内市場の飽和・衰退に対する解決策として

②比較優位の源泉となる資源を求めて⇒物的資源や労働力の優位性を求める

③国際政治システムとの調和を求めて⇒防衛的な対処法として(貿易摩擦対応など)

④国際経済システムとの調和を求めて⇒為替や金融等への対処法として

⑤国際的なマネジメントの効率化のために⇒現地対応のため

○国際化の発展段階と典型的経路

①輸出入⇒国内市場飽和や国内市場未成熟等の理由で海外と取引

②摩擦回避型投資⇒先進国型(現地産業の保護政策対応)と発展途上国型(現地産業振興政策対応)がある。

③コスト優位型投資⇒ローコスト(人件費、税金、為替等)を目指す

④市場立地型投資⇒販売市場と生産拠点を同じ場所に(前向きな理由で)

⑤グローバル型⇒世界中全体を視野に入れて最適化
⇒典型経路がある(P.152)

2.経営と国境

○国際化とは国境をまたぐこと

⇒国境を越えることで環境要因が変わる。
 ①市場環境・・・需要のタイプ、取引慣行、市場構造、所得、人口構成 など
 ②政治・・・国家間での問題が影響することがある(軍事面等)
 ③文化と言語・・・企業内コミュニケーションの複雑化や慣習の違い

○情報的経営資源、付加価値、文化の国際移動

⇒ヒト、モノ、カネの背後で動く要因
①情報的経営資源・・・技術移転や管理技術等の移転⇒技術の空洞化につながる
②付加価値(売上高-外部支払)・・・分配の割合が異なってくる⇒直接的な雇用の空洞化につながる
③文化・・・技術等と併せて自然に文化も移転される⇒文化摩擦につながる

○国際移動のジレンマ

⇒ある程度国境を越えさせないと国際化自体成功しないが、移転しすぎると問題が生じる。
 ⇒①移転そのもののむずかしさ②移転成功による本国空洞化③現地資源活用可能性への対応

○国際的環境マネジメントの三つの問題領域(以下の3~5節)

①国のポートフォリオ選択

②経営資源の移転・活用と空洞化・摩擦

③経営の政治化と為替変動への対応

3.国のポートフォリオの選択

○個別の国の選択の論理⇒4つの基本的論理(①~③は個別事業の選択と同様)

①国の発展性
⇒ミクロ要因:需要の大きさ、成長性、供給の大きさ、価格や質の面での魅力、生産活動基盤、比較優位、技術者の供給状況等
⇒マクロ要因:発展段階の歴史、産業構造、記入構造、政治体制の将来等

②その国での自社の競争力
⇒販売市場:自社製品の国際競争力
⇒調達市場:資源開発のための現地政府の許可、現地へ移転可能な技術・情報的経営資源、現地での経営能力

③その国での事業活動の自社への波及効果
⇒経営資源の蓄積への効果、組織への心理的効果(「国内⇒海外」や「海外⇒国内」)

④カントリーリスク
⇒政治リスク:革命や大きな政治的な変動。政治体そのものの変動や国策等。
⇒為替変動:国際金融情勢の変化による、その企業の活動とは関係ない理由による変動

○国のポートフォリオの全体のパターン⇒大きく3つの選択肢(P.164)

①マルチドメスティック戦略:国別に仕様を決めて供給する

②グローバル戦略:全世界を一つの目で見て共通の製品を供給する。

③グローカル戦略:グローバルとローカルの折衷戦略。
⇒国際ポートフォリオ戦略と産業特性の組み合わせ(P.165)

4.経営資源の移転・活用と空洞化・摩擦⇒3つの課題

○経営資源の移転

国際化成功の源泉はあくまで日本での蓄積とその移転⇒特に情報的経営資源が最大のカギ
⇒何を移転するか、何を移転しないかの仕分けが必要となる
⇒二つのポイント
①自社の競争力のカギとなる情報的経営資源は何か
②どのような情報的経営資源の移転可能性が高いか⇒三つの部分に分けられる(ハード、ソフト、ヒューマンウェア)

ハード:生産設備に体化された技術
ソフト:ハードを運用するソフトウェアの技術
ヒューマンウェア:現場の労働者とハード・ソフトとの相互作用のあり方

移転しやすさ・・・「ハード>ソフト>ヒューマンウェア」

移転プロセスの四つのカギ

 ①移転できるような深い蓄積が国内にあり、外国でも分かりやすい形で蓄積されていること

 ②「目に見えにくい部分」の習得に必要なプロセスの整備

 ③進出先の人々と日本の現場の接触・交流

 ④情報的経営資源を体化した設備の内製化及び最新設備の移転

○各国の資源のグローバル活用

二つの基礎条件

①活用できるような資源に対するアクセスがきちんとあること

②アクセス源をグローバルに融合して使える体制をもつこと

基礎条件を満たすための三つのポイント

①グローバルな分業のネットワークを企業がもっていること

②それぞれの分業拠点で人材の現地化が進んでいること

③各国の資源を利用可能な多国籍の従業員が相互に融合協力しあえるような経営体制と経営力

○本国の空洞化対策

二つの空洞化⇒雇用の空洞化、技術の空洞化
短期的には雇用の空洞化の影響が大きいが、長期的には技術の空洞化の影響の方が大きい。

技術の必要性⇒製品の生産のためにある技術、新しい技術を作り出すための知識やノウハウ。

雇用の空洞化への対策⇒国内での新製品分野、新事業分野の開発
技術の空洞化への対策⇒生産の海外移転を「完全にはしてしまわない」配慮

5.経営の政治化と為替変動への対応

○経営の政治化

国際的な企業活動と政治のかかわり⇒経済制度の違いへの対応、政府間の利害対立

経済制度への対応⇒制度を理解し、複雑な対応をきちんとすること(体制づくりを含む)

政府間利害対立への対応⇒原因は大きく二つ⇒現地利害関係者の活動、国家主権への脅威

○為替変動への対応

三つの変動源(決済市場、投資市場、投機市場)と三つの対応策(企業活動の分散、平均値の原理、金融市場での対応)(P.179)


<演習問題>

1.日本の自動車メーカーのアメリカでの現地生産の歴史的パターンと中国でのそれの比較

 国際化の戦略の枠組みを用いて、どのような戦略的な意味の違いがあるかを検討
米:販売市場 ⇒ 生産市場、 輸出先⇒摩擦回避⇒市場立地・・・
中:生産市場 ⇒ 販売市場、 コスト優位⇒市場立地・・・

2.情報的経営資源の移転の為の方法を幅広く検討

 とくにヒューマンウェアの移転のために必要とされる要件
①必要資源の洗い出し(どこまで移転するか?)
②必要資源が決まれば手段を検討
 ハード:機械を輸送
 ソフト:現地と擦り合わせの上で設計
 ヒューマンウェア:現地人を日本で研修、日本人を現地に送り込む
 ⇒機能しているかをチェックする仕組みを整備
  ⇒マネジメントシステム(PDCAを回す)

3.「政経分離の日本、政経密着のアメリカ」この表現にこめられている経営の政治化への日本とアメリカのスタンスの違いを、より具体的かつ包括的に

日本では産業界の活動に助力しない方向⇒世論を気にしている?(関与した時国民が騒ぐ)
米国では産業界の要望にこたえて政府が乗り出す⇒国家的に重要な事業であれば国が圧力をかける。
 例)日本の為替介入⇒米の自動車業界が米国財務省に掛け合って日本を「為替操作国」と認定するよう要望。