ゼミナール経営学入門 「第5章 企業構造の再編成」

ゼミナール経営学入門 第3版
伊丹 敬之 (著), 加護野 忠男 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4532132479/

第5章<企業構造の再編成>

1.企業の境界線の書き換え

○事業ポートフォリオの再編成と撤退

再編成や撤退は企業の「慣性」を打ち破る必要がある。

⇒4つの撤退障壁
①その事業の取引業者への迷惑及びそれによる企業の信用
②撤退による組織内へのマイナスイメージ
③撤退に関わる責任問題の明確化
④撤退による従業員の雇用問題

⇒これらの障壁を引き下げる施策として事業移管(他者へ移管)や事業統合(第三者の企業を新設して複数企業が移管)

⇒撤退企業候補選別のために5フォース、PPM、GEスクリーン等が利用される。

○五つのタイプの境界線書き換え

⇒事業移管、事業統合、企業買収、企業合併、事業独立

2.資源合体と地図の塗り替え、M&Aと戦略的提携

○資源合体と事業地図の塗り替えのメリット

事業地図塗り替えの意義
⇒業界構造・産業構造が「構造として」その業界に基本的に大きな影響を持つ
⇒構造が非効率であるからこそ書き換えるメリットがある

資源合体の二つのメリット
①「規模の経済」「範囲の経済」の享受
②重複投資の無駄を省いて効率的な投資

○M&Aの狙いとリスク

狙い・・・内部調達が困難な資源を獲得できる⇒時間の節約につながる

リスク・・・情報リスク(買われる側のインセンティブ)、少頻度で大きな「目立つ」意思決定であるリスク、統合リスク、実現リスク

○戦略的提携とは

緩やかな提携・・・ライセンス供与、技術提携、共同開発、共同生産、合弁事業の設立、販売委託、生産委託 等
⇒組織的統合のデメリットを避けつつ、統合のメリットを享受すべく、協働する。
 ⇒実現が難しく、六割があまりうまくいかないとも言われる。

3.境界線書き換えのマネジメント

○新事業体の事業合理性と組織合理性

戦略、経営体制、組織文化の三つの点で絵を描く必要がある。
⇒全て必要であるが、相互に矛盾する危険があるため優先順位を持たせなければならない。

○企業構造再編のジレンマ

①必要性と能力のすれ違い・・・再編が必要な企業はそもそも能力が低い可能性がある

②魅力と競争の激しさ・・・魅力がある事業は競争が激しく、その逆も然り

③組織の慣性・・・組織は跳ぶことを嫌う生き物⇒企業構造を変えること自体が慣性に反する。


<演習問題>

1.企業の境界線書き換えの5つのパターンを図示

・事業移管: ABC DEF ⇒(Cを移動)⇒ AB CDEF

・事業統合: ABC DEF ⇒(CとDを統合)⇒ AB CD EF

・企業買収: 子会社化、・企業合併: 吸収、・戦略的提携: 緩やかな結合

2.戦略第一、雇用第二という原則をもつことのメリット、デメリット

 ⇒企業構造の再編成時の経営上の手配りはどのようなものが必要か?

メリット:最適な事業構成を選択できる。

デメリット:会社都合の雇用制限と従業員に捉えられ、従業員のモラールが低下する。

手配り:戦略を優先するが、その理由・意図を従業員に対して説明
     雇用についても戦略を採用した後可能な限り対応
     ⇒透明性を確保

3.企業合併においてその融合に必要な条件、必要と思われる具体的手段

日本の銀行業で90年代に相次いだ合併でどの程度満たされているかの検討

・成功条件:事業合理性と組織合理性の確保

・具体的手段・要となること:合併する企業相互の情報を詳細に洗い出す(デューデリ等)
 ⇒合併後の姿について検討する

・日本の銀行業
みずほ:規模の経済性は満たしている。情報システムの統合に失敗し、顧客の信用を失った。
三菱東京UFJ:規模の経済性は満たしている。実態として旧行のままの部分がみられる。

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