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【U理論――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術】レポート

【U理論――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術】
C オットー シャーマー (著), 中土井 僚 (翻訳), 由佐 美加子 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4862760430/

○この本を一言で表すと?

 精神世界系の話と経営学の話を混ぜた自己啓発の本

○考えたこと

・この本の内容のような精神世界系の話が欧米の著名な大学の経営学で取り扱われているということに驚きました。

・私は精神世界系の話はどちらかと言えば斜に構えて読んでしまう方ですが、学習理論などの経営学の話と併せて書かれると自然に受け入れやすかったです。
ふと、マルチ商法などの一般に受け入れられにくい話を経済情勢などの受け入れられやすい話と併せて話すと一緒に受け入れられるのかなと思いました。

・ところどころのトピックで読み進めることを止めて少し考えさせられるような内容がありました。

・図や表を用いて説明しているところが多く、文章だけではわかりにくいイメージを掴みやすいようにしてあるところが良かったです。

第Ⅰ部 盲点に突き当たる

・「U理論」と学習理論、場の理論、アリストテレス哲学などとの接点が書かれていました。これまでに提唱されていた著名な考え方を挙げて、その上で「U理論」を更に進んだ考え方だと持ち上げていることはなかなか挑戦的だと思いました。

第Ⅱ部 Uの領域に入る

・「U理論」の各工程「ダウンローディング⇒シーイング⇒センシング⇒プレゼンシング⇒クリスタライジング⇒プロトタイピング⇒パフォーミング」のそれぞれの工程について説明されていました。

・学習を阻む障壁の循環「見たことを認識しない⇒認識したことを言わない⇒言ったことをしない⇒したことを見ない」はどこでもよく見られる負の循環で、それを打破するにはまず「観る」ことが大事というのはよく分かる気がします。

・「観る」より「感じ取る」ことを上位に持ってきていることは「7つの習慣」の「第五の習慣 理解される前に理解する」の事実だけでなく感情も聴く傾聴という考え方に似ているなと思いました。

・「金持ちが天国に入るのはラクダが針の穴を通るより難しい」という聖書の記述に「なんだこの例え?」と疑問に思ったことがありましたが、「針」と呼ばれていた狭い通路があってラクダを通すときに大変だったということが書かれていてようやく腑に落ちました。

・「一人だけでは難しいが、その一人に同じ意図を持った四人か五人が加われば戦う力になる」という話は確かにそうだと思いました。

・プロトタイピングの話は「仕事は楽しいかね?」という本に書かれていた「試すことに失敗はない」と似ているなと思いました。
シスコの「0.8の原則」はプロトタイピングを粗雑過ぎず精密過ぎず、適切な範囲で収める良い考え方だと思いました。

第Ⅲ部 プレゼンシング

・「個人の行動」と「会話の行動」ではこれまでに書かれてきた「U理論」の実践についてよくまとまっていてよかったと思いました。

・ユダヤ人を収容した施設にその収容されたユダヤ人のドイツ人妻たちがその収容所に詰めて訴え続け、収容されていたユダヤ人夫を解放させていたというエピソードも初めて知りました。

・朝の時間や寝る前の時間を使って振り返ったり自分を見つめ直したりするというのは、他の本でもよく見られるアドバイスですが、改めて重要だなと思いました。

エピローグ

・ザンビアのマーチンや著者自身の「他者の翼の上で飛ぶ」という認識は、全て自分の意図でやったという傲慢な考えから解き放たれている素晴らしく謙虚な認識だと思いました。
人間の性質として「後付けの誤謬」はありがちですが、この態度は見習いたいなと思いました。

○参考にならなかった所、またはつっこみどころ

・「U理論」の考え方は少人数のグループまでが適用の限界なのかなと思いました。
組織以降の話は無理やり当てはめているような気がしてイマイチでした。
HPやトヨタなどが領域4に到達しているという記述も無理があると感じました。
破壊に向かうプロセスの話でナチスドイツとヒトラーの話が出ていましたが、この話もどちらかといえば小規模なグループの例ではないかと思いました。
ナチスドイツに関する記述で歴史観がいかにもステレオタイプな見方でちょっと調べて取り上げているような薄さを感じました。
著者が戦後のドイツで育っているので仕方がないのかもしれませんが。
企業の事例もそのほとんどに一面的すぎる見方などの薄さを感じ、著者本人の専門外のところにまで「U理論」を適用しようという試みに無理があると思います。

・システムのイノベーションが大切だという結論でその大切さは分かりますが、常にイノベーションしているというのも都合が悪そうだと感じました。
イノベーションで有名な企業でもイノベーション以外に携わる部署もあり、その大事さが漏れ落ちそうな結論だと思いました。

・「U理論」の「U」の右側の方で矢印は下から上に上がっているのに、説明の順番や内容そのものも上から下になっているところが多かったことが気になりました。
「結晶化⇒プロトタイピング⇒実践」は下から上で下が、それ以外の事例の説明では上から下であることが多かったです。
そういった事例では上の両端から下の中央に向けて矢印が交わる図の方がわかりやすいなと思いました。

・著者がプレゼンシングの例として出している火事で自分の家がなくなったことは、それまでの過去に囚われずに手放して始めることの大事さも含めての話だと思いますが、その手放すことを前半では強調し過ぎていて違和感がありました。
後半の記述で過去から学ぶ大事さについて触れていましたが。
「U理論」の図を見るとプレゼンシングはプロセスの一部でそれまでの蓄積やそれ以降の構築も大事だと分かりますが、極端な人は「常に手放す=過剰にゼロベース」に走りそうな気がしました。