【夜の経済学】レポート

【夜の経済学】
飯田 泰之 (著), 荻上 チキ (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4594069169/

○この本を一言で表すと?

 夜の世界をメインに貧困や流言の統計と実態について触れた本

○面白かったこと・考えたこと

・統計データと推測から仮説を立て、アンケートを実施して表には出にくい世界の実態について書いていて、そのプロセスまで書かれていて面白かったです。夜の世界の仕組みや関わる人の背景など、自分が良く知らない世界について知ることができて新鮮でした。

1 フーゾク業界を経済分析

・「フーゾク」についての定義がいくつもあり、どこからどこまでを「フーゾク」とするかを決めるところから考えているのは面白いなと思いました。

・風営法はマンガなどで部分的に知っていますが、実際にはどのような分類で風俗営業が定義されているのかを初めて詳しく知ることができました。

・店舗型の業態の場合には許可があまりとれず、デリヘルという業態の場合には許可が採りやすくなっているために無認可の店舗が減少しているという構造は初めて知りました。実態と建て前の違いで業態の境界が曖昧になっている事情などは、グレーな業界だからこそだとは思いますが、うまく考えられているなと思いました。

・フーゾク業界の市場規模が3.5兆円、女性の内20人に1人が経験するかもしれないという試算は想像していた以上に大規模で驚きました。

・立地や条件の分析がマジメに行われてそれなりの結論が出せているところは筋のいいフェルミ推定と統計の利用の仕方だなと思いました。

2 個人売春を市場調査

・個人売春を「ワリキリ」と呼ぶなど、業界ネタがいくつも書かれていて新鮮でした。

・出会い系サイトの利用状況やメッセージの内容など、さらに条件を付加することでどれだけ単価が上げられるのかを地方別に分析していることなど、具体的な内容から実態の推測が導かれていて面白かったです。地方の所得との連動、景気の悪さとの連動は、この業界も社会の動きや実態と間違いなく連動しているのだと改めて気づかされました。

3 夜のマーケットの需要と供給

・ニュースなどでよく取り上げられる「遊ぶお金が欲しいから」という動機でフーゾクやワリキリで働く人よりも貧困型の方が多いこと、フーゾクよりもワリキリの方がより貧困型の傾向が大きいこと、ワリキリ嬢の学歴の低さなど、一般に社会の歪みと言われる縮図がここに出ているのだなと思いました。買春側の男性の方の統計もデータのサンプル数が少ないながらも検討されているのは面白かったです。

4 「幸福な若者たち」って誰のこと?

・学歴を「大卒」「高卒」だけでなく大学のランクでも分けているのは面白いなと思いました。「夫婦格差社会」という本でも同様の考えで統計が採られていましたが、質問内容のツッコミっぷりではこの本の方が断然上で面白かったです。

5 ニッポン社会的排除白書

・生活保護に関するニュースや世論と実態の乖離は「生活保護3兆円の衝撃」という本でも書かれていましたが、質的な乖離までアンケートで取り、その質問項目に実態を理解しているかの罠を仕かけたり、収入別の意識調査をしているのはより生活保護に対する社会的排除の実態が出ているなと思いました。外国人に対してや障害者に対しても寛容どこかかなり排他的に見ている様子もアンケート結果から読み取れて興味深かったです。

6 流言とデマの経済学

・流言に対するアンケートやデマに対する自分と他者に対する意識のアンケートの結果はあまり見たことがなくて新鮮でした。政治家に特化してアンケートを取って一般人と比べて過信しがちな項目があることを導いているのも面白かったです。

7 アダルトメディアの夜明け

・アダルトメディアの短いながらも激しい栄枯盛衰について詳しく書かれていて面白かったです。

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