【新型コロナの科学 パンデミック、そして共生の未来へ】レポート

【新型コロナの科学 パンデミック、そして共生の未来へ】
黒木 登志夫 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/412102625X/

○この本を一言で表すと?

 新型コロナウイルスに関する様々な情報とそれらに対する提言が述べられた本

○よかったところ、気になったところ

・新型コロナウイルスそのものについての内容、時系列で起こっている状況の概要や統計的な情報、各国の対策などについてよくまとまっている本だなと思いました。

・様々な情報の記述だけではなく、著者の知見による意見・提言が随所の載せられていて興味深かったです。
情報そのものだけではどう評価していいか分かりづらいところがありますが、その情報が何を意味するのかも含めてよく理解できるように思いました。

序章 人類はパンデミックから生き残った

・ペスト、スペイン風邪について著名人の書いた文章の抜粋で説明し、SARSについては時系列で説明していました。

・アメリカのウィルソン大統領がドイツの賠償金についての会議中にスペイン風邪に感染し、ウィルソン大統領の欠席の間に巨額の賠償金を求めるフランスの意見が通ったことがナチスドイツの台頭に繋がったことを「最悪の合併症」としていたのが印象的でした。

・SARSウイルスは新型コロナウイルスに比べて急激かつ劇症で、急激な進行と高い致死率が収束を早めることになったそうです。
当時WHOに所属して対策指揮を執っていたのが、新型コロナウイルス対策の指揮を執る尾身茂さんと押谷仁さんで、SARSの時の動きは素晴らしく、日本の対策も見事だったのに、新型コロナウイルスではその時の貴重な経験を活かせなかったと述べられていました。

第1章 新型コロナウイルスについて知る

・ウイルス全般の構造や増殖様式について説明されていました。

・コラムで書かれていた「ベロ(Vero)細胞」の話が興味深かったです。
単独では生存できないウイルスを分離させるために世界中の研究者がこの細胞を使っているそうですが、ベロ細胞は千葉大学で1962年に発見された純国産の細胞なのだそうです。

・変異の説明がマイク真木の「バラが咲いた」の歌詞で説明されていましたが、3つセットのコドンと「バラガ」と「バカガ」を対比させて説明していてとてもイメージしやすく、分かりやすかったです。

第2章 新型コロナ感染症を知る

・新型コロナ感染症の感染経路が図や数字で示されていて分かりやすかったです。
エアロゾル感染と接触感染の両方があり得ること、無症状感染者からの感染が半分程度あること、ごく一部のスーパースプレッダーが多数に感染させていることが統計的に分かっていること等がわかりやすく解説されていました。

・感染の経過についても述べられていました。
様々な症状や既往症との合併症、年齢による重症化の差異などが簡潔に説明されていました。

・肺炎には大きく二種類あり、細菌性の肺炎は湿潤性肺炎で肺胞の内側に浸出液がたまり、ウイルスによる肺炎は間質性肺炎で肺胞壁(間質)に炎症が起きる、という違いがあるそうです。

第3章 感染を数学で考える

・新型コロナ感染を数学で考える味方について説明されていました。
8割おじさんと呼ばれている西浦博さん以外、日本ではあまり分析されておらず、累積感染者数が指数関数になっていることすらあまり日本では知られていないことが述べられていました。
収束の判断やどのようなアプローチをするかの判断が数学に基づいて考えられていない日本の状況は残念だなと思いました。

第4章 すべては武漢から始まった

・2019年12月からの中国での2ヶ月間について時系列で追っている内容が興味深かったです。
中国がヒト・ヒト感染を示すデータを外に出すことを渋ったこと、2020年1月2日にはゲノム解析できていたにも関わらず発表が2週間遅れたことなどが述べられていました。

・コウモリ経由でのコロナウイルス感染について研究していた石正麗氏が2015年にはマウスSARSウイルスを遺伝子工学でヒト培養細胞で感染させる実験に成功していて、武漢ウイルス研究所でその実験をしていたこと、BSL4という最高レベルの生物学的安全レベルで研究しているものと考えられていたものの、実際はBSL2で、外部に空気が流出するレベルだったこと、新型コロナウイルスが人為的に武漢ウイルス研究所で作成されたことは否定されるものの、武漢ウイルス研究所から流出した可能性は考えられることなどが述べられていました。

第5章 そして、パンデミックになった

・新型コロナウイルスの感染経路、エリアごとの感染者数等が図やグラフで示されていました。
検査結果から武漢型からヨーロッパ型に置き換わっていって感染者数が増加していったこと等が述べられていました。

第7章 日本はいかに対応したか

・日本の対応のベスト10とワースト10は興味深かったです。
日本では常にありがちな、現場は頑張っているけれど、トップはイマイチというところがよく出ているなと思いました。

第8章 世界はいかに対応したか

・紹介されていた対応が見事だった女性トップ3名、ニュージーランドのアーダーン首相、台湾の蔡英文総統、ドイツのメルケル首相はすごいなと思いました。

※第6章、第9~第13章は省略

タイトルとURLをコピーしました