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【アテンション―「注目」で人を動かす7つの新戦略】レポート

【アテンション―「注目」で人を動かす7つの新戦略】
ベン・パー (著), 小林 弘人 (その他), 依田 卓巳、依田 光江、茂木 靖枝 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4864104565/

○この本を一言で表すと?

 「注目」という点について様々な理論や記録の裏付けを持って検討した本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・「注目」について様々な視点から述べられていて、その集め方についても理にかなった方法が述べられているなと思いました。

・原題も「ATTENTION」だと勝手に思っていましたが「Captivology」という著者の造語が原題で、「Captivation(魅了されること)」をもじった用語だそうです。邦題もタイトルにマッチしていてよかったと思いました。

・各章末に各トリガーの「勘どころ」が書かれていて振り返りやすい構成になっていました。

・日本の話が例として複数取り上げられていたのが興味深かったです。
「AKB48」が取り上げられているのも面白いなと思いました。
他のアメリカで出版された本でも「AKB48」が取り上げられていましたが、海外で真剣にその構造が分析されているのかと思うと妙におかしみを感じてしまいます。

はじめに

・様々な「トリガー」について触れたこの本の導入部分がまさにトリガーとしてその先を読む動機付けになったように思い、その効果を感じてこの本の内容も確からしい・・・と感じました。
その先の内容も、様々なトリガーを散りばめてこの本の内容に「注目」させるようになっていて感心しました。

第1章 注目の三段階

・この本で紹介される「即時」「短期」「長期」の3種類の注目についてそれぞれ例を挙げて説明されていました。
即時の注目に「ウ*コの徹底分析」というタイトルで注目を集めた事例など、一瞬で見ただけで記憶に残らせる見事なテクニックだと思いました。
見事過ぎてその内容にはあまり触れられなくなってしまいそうですが。

・3種類の注目を駆使した例としてスーパーマリオが挙げられていました。
まず「即時」の注目という点で、当時のファミコンのキャラクターとして256ピクセルでキャラ付けをする必要があり、そのために口ひげや帽子という少ないピクセルで特徴づけできる要素が取り入れられたこと、ゲームの仕組み自体が「短期」の注目を得られる内容だったこと、「スーパーヒーローではない自分の分身」という立ち位置のキャラにすることで「長期」の注目を集まられるようにしたことが説明されていました。

第2章 自動トリガー

・人間の知覚に働きかけることで、「無意識」に働きかける自動トリガーについて説明されていました。
危険かどうかで草食動物と肉食動物の名前が挙げられているとつい肉食動物に注目してしまうこと、字の大きさや意味の違いで短期の記憶で残る項目が明確に違ってくること、色そのものによって受ける印象や気持ちにも影響を与えることなどが例として挙げられていました。

・奈良市の駅で青い照明を用いたことで飛び込み自殺がゼロになったこと、第二次世界大戦でドイツ軍を釘付けにしたリアルな音のみの「ゴーストアーミー」の話など、その効果を避けることができない「注目」というのは興味深いなと思いました。

第3章 フレーミング・トリガー

・言葉や単語の印象、考え方の枠組みなどに働きかける「フレーミング・トリガー」について述べられていました。
状況に合うように行動を変える「適応」と、繰り返し伝えて頭の中の認識を変える「議題設定」で注目を強める方法について書かれていました。

・フレーミング・トリガーはそれ単体で使うというより、他のトリガーの土台となるトリガーなのだそうです。

第4章 破壊トリガー

・自然に予測していることから外れたことに対して注目がいく、「期待違反理論」に基づく「破壊トリガー」について述べられていました。
文脈や曲と映像の不一致など、「通常こうなるだろう」という自然の予測に反することは印象に残りやすいのだそうです。
その構成要素として3つのS「サプライズ(驚き)」「シンプリシティ(単純さ)」「シグニフィカンス(重要性)」が挙げられていました。
「シンプリシティ」が要素の一つになっていることが不思議に思えましたが、認知負荷を減らすことで伝えたいことが伝わりやすくなる、という補完要素として挙げられていたようです。

第5章 報酬トリガー

・ドーパミンによる快楽へのモチベーションとオピオイドによる満足感で動機づけと行動を回す「報酬トリガー」について述べられていました。
短期的に効力のある外的報酬と長期的に効力のある内的報酬についての話は、組織マネジメントでも出てくる話だなと思いました。
常時報酬を与え続けるのもダメで、最も欲しいタイミングで報酬を与えること、というのも組織マネジメントと同じ論点だと思います。報酬を通じて人を動かすということではマーケティングでも組織でも同じということかなと思いました。

第6章 評判トリガー

・評判のあること、権威あるものによって認められることによって注目される「評判トリガー」について述べられていました。
対象が全く同じものであるのに、「人気があると思われているもの」かどうでないかで評価まで大きく変わってしまうことがハリーポッターの著者が別のペンネームで出版した「カッコウの呼び声」を例にして説明されていました。

・「専門家」「権威者」「大衆」のそれぞれの裏付けによる評判がトリガーになることについて、実験結果とともに説明されていました。

・著者独自の考えで「信用の法則」として、公認されている何かを少なくとも一つは混ぜて売り込む手法を提示していました。
その失敗する要因として噓が混じってそれがバレた場合が事例として書かれていました。

・真実でも誤解されると同じように評判を著しく傷つけること、その対処法として、素早くかつ慎重に、事実をもって対処することが大事だと述べられていて、一般的なレピュテーションリスクに対する内容ですが、実際にその通りだなと思いました。

第7章 ミステリー・トリガー

・「謎」「不確実性の減少」「サスペンス」を基に興味づけする「ミステリー・トリガー」について述べられていました。
特に、サスペンスから感情移入、予期せぬ展開を経てクリフハンガー(ハラハラした状態で終わる、宙ぶらりんな謎)を残すという手法で短期の注目から長期の注目に導くというのは、その設計がかなり難しそうですが、うまくいけばかなり当たりそうだと思いました。

第8章 承認トリガー

・承認されたいという欲求に基づく「承認トリガー」について述べられていました。
ある意味当然の分かりやすいトリガーですが、承認の三欲求「認知」「評価」「共感」のそれぞれにケース分けして説明されていました。
この三欲求を包含して承認トリガーがうまく効果を発揮した例としてAKB48が挙げられていました。
AKB48は対象が多いことによって自己投影しやすく、有名人との繋がりを強く感じることができるようになる、一方的に知っているだけなのに強い繋がりである「パラソーシャル関係」を構築させる見事な事例なのだそうです。

○つっこみどころ

・第7章の「ミステリー・トリガー」の章で説明されていた「不確実性の減少」がトリガーとなる話は、むしろ謎がないことが共感を得るという話で、全く的外れというわけではないと思いますが、「フレーミング・トリガー」などの別のトリガーとして紹介した方がよかったのではないかと思いました。