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【ワイドレンズ: 成功できなかったイノベーションの死角】レポート

【ワイドレンズ: 成功できなかったイノベーションの死角】
ロン アドナー (著), 清水 勝彦 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4492502459/

○この本を一言で表すと?

 イノベーションの失敗の理由を明らかにしたイノベーションマネジメントの本

○面白かったこと・考えたこと

・久しぶりに経営学系の本を読んで「目からウロコ」という気持ちになれた、パラダイム転換の起点になった本でした。
今後ビジネスアイデアの評価や企業の評価をする上でも、改善点を見つける上でも有用な知見が得られました。

・よく知っているつもりだった成功例・失敗例の企業例で、これまでいろいろな本やニュースで成功した要因・失敗した要因が挙げられていて、それぞれ納得できはするものの決定的だと思えなかったですが、この本で挙げられている要因はこれまでで一番核心をついているように思えました。

第1章 すべて正しいことをしたのに、なぜ失敗するのか

・ミシュランのランフラットタイヤの事例を元に、「自社内としては正しい戦略と実践」が「エコシステム全体としては誤っていた」ということを分かりやすく述べられていました。

・自社内では正しく分析し、正しくPDCAを回してマネジメントできていたにも関わらず、市場の供給者や需要者以外のステークホルダーを含めた全体としての「エコシステム」としては正しくなかったこと、その幅広い視野に欠けていたことがよく分かりました。

第2章 コーイノベーション・リスク

・自社だけのイノベーションだけではなく、そのイノベーションを支えるインフラ等の環境における各技術のイノベーションも必要というのは他の本でも書かれていましたが、その各技術を把握して掛け算で考えるというのは分かりやすいなと思いました。

・白熱電球を発明してその電気の供給システムまで考えたエジソンなど、一つのイノベーションだけでは達成しえない領域を考えること、それを「『なにができるか』ではなく『いつできるか』が重要」とシンプルにまとめているのは理解しやすくてよいなと思いました。

第3章 アダプションチェーン・リスク

・バリューチェーンよりも広い、アダプションチェーンという提供するために必要な全てのステークホルダーを考慮した概念で、その「鎖」という点に着目してどの輪が切れても顧客まで届かないとしているのはTOC(制約条件理論)の全体最適の話にも似ていますが、また違ったように感じられて新鮮でした。

・超砥粒研削砥石の失敗例と映画業界のデジタル化の成功例で、アダプションチェーン上のどこに切れてしまう要素があり、どのように対処するかが具体的に分かりやすかったです。

第4章 エコシステムの全体像づくり

・価値提案ではなく価値設計図を作成するというコンセプトは、価値の連鎖構造の中でどのようなリスクがあり、どこかで連鎖が切れれば顧客まで届かないということがより明確になるものだなと思いました。
電子書籍におけるソニーの失敗例とキンドルの成功例はとても分かりやすかったです。

・ソニーが自社でやっていることが周りから見て好ましく、期待されていながら、なぜ失敗したのか、ソニー自身も期待した者もなぜそれに気付けなかったのか、まさに死角に入っているところを見る視野がなかったからかと思いました。
当時、この本が出版され、当事者が読んでいれば事情が変わっていたかもしれないなと想像しました。
それにしてもAmazonの出版業界に対する配慮は見事で、エコシステム全体が見えていたのかなと思いました。

・インスリンの吸入機の話は途中まで読んでいても失敗談っぽい導入ながら失敗談とは思えず、失敗の要因である検査の話が出てようやく納得できました。
どういう法制度でどういう手続きならどこに赤信号が灯るか、それを考えるには大変な苦労が必要だと思いますが、それは必要な苦労なのだと思えました。

第5章 役割と関係

・エコシステム全体を考慮しないといけないことはこれまでの章で分かりましたが、どのように自身がアプローチするか、それを考えるための「リーダーシッププリズム」という考え方について書かれていました。
エコシステムに関わる者がどのような利益または損失を得るか、その関係から誰がリーダーになるべきか、自身はフォロアーでいるべきか、などが理解しやすいフレームワークになっていました。

・どのような場合でも自身が投資してリーダーシップを取ればいいわけでなく、エコシステム全体が動くためにはどの位置で、どの利害関係者にどのように動いてもらうか、Win-Winの関係を構築しなくてはならないこと、というのは企業が大きくなればなるほど死角になってしまいそうなポイントだと思いました。

第6章 適切な場所、適切なタイミング

・第5章の常にリーダーシップを取ればいいわけではないという考え方と同様に、常に先行者であればいいわけではないという考え方が示されていました。

・イノベーター自身の実行課題と補完者のコーイノベーションの課題の先行者マトリクスというフレームワークと、iPodが先行者ではなくコーイノベーションが出揃ってから包括的に進出したことで勝利したことの例は分かりやすいなと思いました。

第7章 ゲームを変える

・まだ実現されていない電気自動車がガソリン自動車を超えるための現状の課題と改善点を価値設計図で表し、考察をしているのは、結果論だけではなくて実際に電気自動車の成功要因を推察するプロセスになっていて面白く、著者はチャレンジャーだなと思いました。

・ベタープレイスは「SHARE」という本でも事例として出てきましたが、まだ試験的な段階でどうなるかまだ分からないところだと思いました。

・再構築の5つのレバー(再配置、結合、削除、追加、分離)は、SCAMPER(Substitute: 置き換える、Combine: 組み合わせる、Adapt: 当てはめる、Modify: 修正する、Put other purposes: 別の使い道を考える、Eliminate: 余計なモノを削る、Rearrange/Reverse: 並び替える/逆にする)とほとんど同じだなと思いました。

第8章 成功するための順序づけ

・MVE(最小限の要素によるエコシステム)から考えていくというのはよく言われる「ミニマム・スタート」や「リーン・スタートアップ」という本で書かれていたMVP(必要最低限機能)と似たような考え方だなと思いました。
そこからエコシステムを継承と活用で拡張していくという考え方は効率的でもあり、効果的でもありそうだと思いました。

第9章 成功確率を上げるために

・「はじめに」の図0.3と同じ図が再掲されていましたが、ここまで読んできてから改めて見るとよくまとめられていて分かりやすい図だなと納得できました。

○つっこみどころ

・3段階の2段階目「段階的な拡張」は1段階目のMVEから3段階目のエコシステムの継承と活用へのプロセスであって、文章上でもほとんど説明がなかったですが、定義としてもここではふさわしくなく2段階でよかったのではないかと思いました。(第8章 成功するための順序づけ)