【分極社会アメリカ 2020年米国大統領選を追って】レポート

【分極社会アメリカ 2020年米国大統領選を追って】
朝日新聞取材班 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4022951109/

○この本を一言で表すと?

 アメリカの様々な層の市井の人たちの声を集めたインタビュー集の本

○よかったところ、気になったところ

・アメリカの様々な地域の様々な立ち位置の個人のインタビュー結果が集められていて、具体的な事例として紹介されていて興味深かったです。
全体像の話や構造の話と違って、より多様性があるように感じました。

第1章 二つのアメリカ

・共和党支持者、民主党支持者の典型例や共和党優勢地区の民主党支持者などの立場の人のインタビュー内容が紹介されていました。
アメリカの広さ、地域によっての違いなどが浮き出ているように思いました。

第2章 コロナ禍

・マスク反対派、マスク強制反対派などの動きが書かれていました。
特に2020年ではトランプ元大統領もマスクをしない方向で動いていたのもあって、多数派にまではならないまでも大きな割合を占めていていたのだろうなと思いました。

・人種、所得、勤務地で新型コロナの感染率が異なる格差、高齢者が大きなリスクにさらされたことなど、アメリカが世界最大の感染国となったその内訳について触れられていました。

第3章 フロイド事件

・黒人が警察官に抑えられて死亡したフロイド事件を引き金にBLM(ブラック・ライブズ・マター)運動が広がり、それ以前からあった黒人差別に関する様々な出来事が表に出てきた様子が書かれていました。
それに対抗するように「法と秩序」を主張するトランプ元大統領や、白人至上主義者の活動もあり、これも分断に繋がったとまとめられていました。

第4章 交錯する分極線

・年代層の違いが考え方の違いによって大きく主張が変わっていて、それが分断に繋がっているとされていました。
それ以外にも女性やヒスパニック、キリスト教福音派の動きも書かれていました。
キリスト教福音派の中でもトランプ元大統領を批判する動きも出てきていて複雑だなと思いました。

・ヘイトと銃が合わさったヘイトクライムが増加していること、農村地帯ではグローバル化の影響で収益低下が著しくなり、トランプ支持が根強いことなどが書かれていました。

第5章 何が分断を広げたか

・どのメディアを見ているかの違いでも分断が生まれているとして、FOXニュースを始めとする右派メディア、ソーシャルメディアなどが挙げられていました。
特にFOXニュースに夢中になる父親が過激化していった話などが印象的でした。

・「QAnon」の賛同者による陰謀論やトランプ支持者によるディープステート論など、一方的なレッテル貼りが顕著になったそうです。

・リベラル派による南部偉人像の撤去なども保守派を刺激して分断に繋がっていったそうです。

第6章 変質する政党

・民主党で社会主義がタブーとされなくなる「左旋回」が起こっていたり、共和党ではトランプ支持が進んでトランプ党化が進んでいたそうです。

・民主党では多様化も進み、同性愛者のピート・ブティジェッジや台湾系実業家のアンドリュー・ヤンが予備選に出るなどの動きがあったそうです。

○つっこみどころ

・全体的に採り上げられている内容が偏っているように思いました。
「アメリカは分極社会である」という結論ありきで、更に両極を取材しているようでいて一方は濃く、もう一方は淡い内容で濃淡がはっきりしていて一方的であるようにも思いました。
特にトランプ批判がかなり強めに書かれていたように思いました。

・元朝日新聞記者の人の著作はいろいろ深く掘り下げられていて面白いというイメージでしたが、朝日新聞に在籍していたときの自身が思う通りの記事を書けない苦労話もあり、そういった内容があるからか他社で出版していました。
朝日新書で現役の朝日新聞取材班の書く本だと出版社の意図からの逃れられずに偏ってしまうのかなと思いました。

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