【物語 カタルーニャの歴史―知られざる地中海帝国の興亡】
田沢 耕 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4121015649/
○この本を一言で表すと?
カタルーニャだけで完結する本ではなく、カタルーニャの視点から見たスペインの歴史の本
○この本を読んで面白かった点
・レコンキスタの初期にキリスト教勢力に再征服されたカタルーニャが力をつけていき、王の権威主義的な統治ではなく協約による統治という独自の文化をつくり上げ、古くから商人が力を持っていた地域だというのはなかなか面白い話だなと思いました。
・強力な国家だったカタルーニャが、王の女性関係や兄弟の争いなどで都度力を落としつつもまた興隆し、ついには失墜していったという流れは、トップがどうあるかで全体の動きや結果まで変わる大企業と似ているなと思いました。
・マジョルカ島とバレンシア再征服した征服王ジャウマ一世、傭兵部隊アルモガバルスのイタリアだけでなくバルカン半島まで領土にしてしまう強さ、いきなり出家して語学を学び広範囲に布教して学校も作り著作もたくさんあってライプニッツやデカルトにも影響を与えたラモン・リュイ、ナポリが好き過ぎてナポリ王になってカタルーニャに戻ってこなかったアルフォンス四世など、なかなか面白い人物がカタルーニャから輩出されているなと思いました。
・カタルーニャ凋落の原因となった飢饉やペストの被害が集中した1333年以降の状況はすごいなと思いました。
1333年:記録的不作・飢饉、1347年:飢饉、1348年:ペスト流行、1357年:イナゴの異常発生、1362年:ペスト流行、1363年:ペスト流行、1371年:ペスト流行、1373年:地震、1374年:不作・ペスト流行、1381年:ペスト流行、1398年:ペスト流行、1410年:ペスト流行、1427年:地震、1428年:地震、1429年:ペスト流行、1439年:ペスト流行、1448年:地震・ペスト流行、1457年:ペスト流行、1465年:ペスト流行、1486年:ペスト流行、1493年:ペスト流行、1494年:ペスト流行、1497年:ペスト流行
・経済的な蓄積のあったポルトガルがスペインから独立でき、同じような状況にあったカタルーニャが独立できなかったこと、スペインの一部となったことからカタルーニャは商業的に成功したことなど、時期や歴史的な因果関係によって何か一つ違えばカタルーニャも独立国家だったかもしれないなと思いますし、カタルーニャの人が自分をスペイン人だと思っていないという話もわかる話だなと思いました。