【集中講義! ギリシア・ローマ】レポート

【集中講義! ギリシア・ローマ】
桜井 万里子 (著), 本村 凌二 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4480071024/

○この本を一言で表すと?

 ギリシアとローマを比較し、違いと共通点について論じた本

○よかったところ、気になったところ

・2人の著者がギリシアとローマについてそれぞれ述べて、似ているところや異なっているところについて検討される形式で、比較するからこそ明確になってくる要素もあって興味深かったです。

・第三章の対談で、相手にかなり厳しい指摘をしているところもあり、よくある予め筋が定まっている形式だけの対談と違うようで面白かったです。

・著者の一人本村凌二氏の著作で「競馬の世界史」や「世界史の叡智」を読みましたがかなり内容が軽めの本で、そこまで深い専門家ではないのかなと思っていましたが、ローマについて深い見識を持つ方だとわかってよかったです。
「競馬の世界史」でローマについて詳しい描写がされていたことを思い出し、そこが専門だったからかと思い当たりました。

第一章 民主政と共和制

1 ポリス誕生のダイナミズム

・ミケーネ時代の頃からアテナイなどのポリスが成立して衰退していくまで、それぞれ小国家として成立し、外敵に対しては連合して対することはあったものの、ポリス単位で成熟して凝集性が高まってしまっているためにまとまった国家にはならなかったそうです。

2 ローマはなぜ拡大したのか

・ローマで国家が成立し、共和制になったのは紀元前509年で、ギリシアのポリスが存続していた時代だったそうです。
何となくギリシアの後にローマ、というイメージがあったので併存していたというのが不思議な気がしました。

・ギリシアがまとまらなかったのにローマが拡大した理由として、征服された側の歴史家の記述で、執政官二人の独裁制と元老院の貴族制と民会の民主政の3つが均等に配置されてどれも突出せず、またギリシアよりローマのほうが信心深く誠実だったからと書かれているそうです。

・ローマが拡大して行く中で貧富の差も広がり、政治も腐敗していく中で共和国から帝国になっていったそうです。

第二章 高尚な文化と俗な生活

1 アテナイ民主制と弁論術の成熟

・アテナイの民主制とその中で必要とされる「弁論術」についての関係と、様々なタイプの弁論家について説明されていました。

2 落書き・風刺・風呂

・ローマでは独自の文化よりギリシアの文化などの他の文化を取り入れる形が多かったそうです。
その中でも風刺や落書きには独自性が見られるそうです。またギリシアと同様にローマでも弁論術が重要視されていたそうです。

第三章 ギリシアとローマをつなぐもの

1 人間をどう捉えるのか

・ローマ人は同時代の様々な他民族と比較して目立って良いところがあまり見られないものの、信仰への敬虔さと誠実さで優れていて、その要素がローマ帝国として拡大していったことではないかということが改めて検討されていました。

・ギリシアでは敗戦した将軍は落ち度がなくても罰せられるのに対し、ローマでは敗戦した将軍はその経験を活かすように検討されるという違いがあり、処分の厳格さの違いが経験の積み上げの違いに繋がっていたことが、国家として拡大できたかどうかの大きな要素だったのではないかと検討されていました。

2 ローマ人はギリシアをどの程度意識していたか

・ローマ人はギリシアの文化や学問についてかなり関心を持っていた一方で、厳密なギリシア語とある程度曖昧なラテン語の言語の違いもあり、若干の変化はあったそうです。

○つっこみどころ

・ギリシアとローマの比較は面白かったものの、それぞれあまり深堀りはされておらず、そこまで情報量がなかったように思えました。

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