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【チャーチル―イギリス現代史を転換させた一人の政治家 増補版】レポート

【チャーチル―イギリス現代史を転換させた一人の政治家 増補版】
河合 秀和 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/412190530X/

○この本を一言で表すと?

 チャーチルの先祖からの系譜と一生を追った伝記の本

○面白かったこと・考えたこと

・「血と労苦と汗と涙」演説や戦車の新発想を考え出したこと、「鉄のカーテン」発言をした人、くらいのイメージしかなかったチャーチルについて、その先祖や両親の話からチャーチルが成長していくにつれてどのような立場にいるかということが、栄光と挫折の波を含めてまとめて知ることができてチャーチルに対するイメージが変わりました。

・チャーチルの人格や人柄について、不正をしない・浮気をしない・自分の発音がダメだという欠点を見据えて徹底的に準備をしていたなどの良い面もありますが、他人に悪態をつく・人の話を聞かない・乱を好むなどの悪い面もあり、人間らしいところもある人物だなと思いました。

・チャーチルはまさに「治世の能臣、乱世の奸雄」といった人物だなと思いました。政治家としての演説能力などは治世でも乱世でも役立つでしょうが、これだけ大きく活躍できたのはまさに活躍できる場所がそこにあったからだ、という印象も受けました。

・ノンフィクション作家としてノーベル文学賞を取るほどに著作活動にも励み、むしろその著作能力で金欠時代を乗り越えてきたというのは他にいないすごい政治家だと思いました。

第一章 樫の大樹

・チャーチルの祖先のモールブラ公爵が名誉革命の立役者と言われるほどの功績をあげた人物であること、チャーチルの父親も皇太子と決闘になりかけるほど決裂したりしながらも政治家として大成した人物であることなど、かなりのエリート一家だったことは初めて知りました。
その家系の浮名の流しっぷりがそれぞれの代ですごいですが、その家系の中でチャーチル自身は妻一筋だったというのはすごいことだなと思いました。

第二章 剣とペン

・チャーチルの学生時代に体が弱いながらもフェンシングでそれなりの成績をとったり、戦争の観戦武官のような立ち位置でいろいろな戦場を見て回って記事にしたり、若い頃からかなりの行動力だなと思いました。

・ボーア戦争時に捕虜になってその後もトラウマになるような目に遭いながらも脱走して難を逃れたり、ハードな人生を送りながら、それらの体験を記事にしたり小説にしたりして生活費を稼ぐというのはギリギリながらもすごいなと思いました。

第三章 政治家修行

・若くして議員になり、自由貿易主義を推したり、父親の伝記を書いたり、講演をしてまわったりしながら政治活動を続け、1908年に33歳で閣僚に列することになったというのはすごいなと思いました。
若い頃から政治家として活動し続けていたというのはチャーチルの政治家としての強みだったと思います。

第四章 人民の権利

・チャーチルの閣僚としての最初の役職は商務相で、福祉関係の充実と軍縮・軍予算の削減の方向にその力を向けていたというのは意外でしたが、その時代やその立場に応じて自分の全力を向けるというのはそれも一つの資質かもしれないなと思いました。

・商務省から内相に昇格しながらも海軍のあり方について意見し、海相になるという流れは、口出ししたくてたまらないところと多才なところが出ていて面白いなと思いました。

・結婚の経緯がなかなか不器用なところが出ていて面白いなと思いました。主義主張が違っていて、人の話を聞かないところがあるチャーチルと結婚して円満に過ごしていったクレメンタインがすごいなと思いました。

第五章 世界の危機

・チャーチルが第一次世界大戦時に推していたダーダルネス作戦が失敗し、政治家としての危機を迎え、絵を描くことに走ったというのはずっとそれなりにうまくやってきた人物が大きな挫折を迎えた時の逃避行動としてはまだマシな方かなと思いました。

第六章 再び保守党へ

・チャーチルが陸相になったり蔵相になったりして、その蔵相時代の政策がケインズに批判されるような、結果としてもイマイチだったりして、他の分野に口を出し続けたり、主義主張から他の政治家に警戒されたり、能力があっても人間関係が読めない人にありがちな行動がその立場ゆえに大きな話になっているような印象を受けました。

第七章 荒野の十年

・ボールドウィン、チェンバレン政権の10年間、チャーチルが閣僚として選ばれずに過ごしてきた10年間でイギリスの政策の失敗ぶりはすごいなと思いました。
チャーチルがいなかったから、とは思いませんが、違った政策を採っていれば第二次世界大戦の形勢も大きく変わり、歴史が変わっていたかもしれないなと思えるほどの裏目っぷりでした。
この時代に閣僚として動いていなかったこともチャーチルにとって結果的には良い目となったと思うと、すごい流れの中で生きている人物だなと改めて思いました。

第八章 もっとも輝ける時

・第二次世界大戦でのチャーチルの活躍は他の本でも出てきてよく知っていましたが、チャーチルの失敗についてはあまり知らず、ルーズベルトとの個人的な友情を信じすぎたり、米英で組んでソ連に対抗する考えは見当はずれだったり、割と独り善がりなところも出ていたのだなと初めて知りました。
ただ、その独り善がりな徹底抗戦の意思がドイツへの降伏を蹴ってイギリス自体を動かしたというのは、人が「場所」によって全く違う輝き方をすることを改めて感じることができたように思えました。

第九章 勝利と悲劇

・戦後のチャーチルが一度失脚しながらもまた首相として返り咲いたのは、戦時だけの人ではなかったのだなと思いました。
戦時と違って大きく国政を動かせなかったことは、戦時と平時の違いが大きいこと、それぞれで適した体制も考え方も違うのだろうなということを思い起こさせました。

終章 チャーチルと日本

・チャーチルと日本はそれほど大きな関わりがなかったものの、チャーチルが活動している時代の日本の変遷が大きく、イギリスにとっても味方になったり的になったりで、チャーチルから見た日本の印象もその時期その時期で大きく違っていただろうなと思いました。