• 様々な本、様々な資格の話が盛りだくさん(の予定)

【ゲームデザイン脳 ―桝田省治の発想とワザ―】レポート

【ゲームデザイン脳 ―桝田省治の発想とワザ―】
桝田 省治 (著), 帝国少年 (イラスト)
https://www.amazon.co.jp/dp/4774141925/

1.みつける ・・・着想/加工

・日常の中の個人的な欲求

 子供が生まれた時に号泣した祖母、メソメソ泣いた母⇒孫や曾孫は自分が生きてきたマイルストーン⇒この感動をゲームに
 発想とは、既存の情報Aに何らかの加工をほどこし、新しい価値がある情報Bを生み出すこと。
 発想する方法とは、
  ⇒新しい価値がある情報Bに加工できそうな既存の情報Aを見つけ出す方法
  ⇒既存の情報Aに新しい価値をつけて情報Bに加工する方法
 ※企画のネタは日常のなかにさえいくらでも転がっている。大事なのは、それを見過ごさず気になったら自分なりの答えが出るまで、ずーっと考え続けること。

・他人の欲求を探る

 アダルトビデオのレイプもの⇒強姦は、狩猟の代替行為という説⇒ゲームのアイデアに
 ※企画のネタはどこにでもある。人が見逃している商品にできそうもない需要でも、あきらめずにずーっと考え続けていれば、百に一つはモノになる。

・自分ならどう作るか?

 ときメモ+同窓会での出来事「ステキな女性ならすでに複数の男性にアプローチされているはず」⇒複数の男性で競い合う形式のゲームに。
 ※二匹目のドジョウを狙うのは悪くないが、その際はわかりやすい独自性を打ち出すこと。そうしないとただの二番煎じ。

・父の死さえネタにする

 自分の父親が癌になって人生観が変わるのを観た⇒自分にも訪れる死を考えた⇒日常が愛おしく思える、という今までにない快感があった。
 ※何でもネタになる。

・ゲームにするはずが・・・

 格闘ゲームのように相手をボコボコにする「S」的な快感とシューティング、レースゲームのように自分を律する緊張感を味わう「M」的な快感をミックスしたゲーム⇒奇数ステージを「M」ステージとして自分をオトリとして敵をある場所まで誘導するゲームとし、偶数ステージを「S」ステージとして敵をボコボコにするゲームとする。⇒ある場所でのみ強くなる主人公、という設定にする。
 ※桝田氏のゲーム企画は、目標とする面白さを再現するシステムをまず骨組みとし、それを活かすためにキャラクター、世界設定、シナリオが後付されるという流れ。

・見込みがありそうなネタの選別方法

まず、思いついたネタの自分なりに最も推したい点を短いフレーズにしてみる「○○が××したら楽しいと思わないか?」

チェックポイント①:短いフレーズでネタをまとめられないならそのネタには何か欠陥がある。もしくは言い表せないということはゲーム企画には向いていないということ。

チェックポイント②:短くまとめたフレーズを読んで自分で面白いと思えること。タイプの違う人5人程度に話してみること

チェックポイント③:5人のうち3人くらいが「メチャクチャ面白そう」と答えるくらいが理想的。5人全員が面白いと言ったら、企画が平凡か、気を遣われているかのどちらか。5人全員の反応が鈍ければもちろんダメ。

チェックポイント④:企画のプロなら数十から百、普通の人で三~五ほど即興的にエピソードが出てくるようなら見込みがある。それだけわかりやすくて広がりがあるということ。

 ⇒チェックポイント④の3つの注意点

  ①「メチャクチャ面白そう」と答えたにもかかわらず、エピソードが一つか二つしか出てこない場合はフレーズのポイントがずれている。

  ②普通の人から十個かそれ以上にアイデアが出た場合、その人が同じような趣向のゲームなりコミックを体験している可能性が高い。つまり二番煎じにしかならない可能性がある。

  ③普通の人から出たアイデアは、必ずゲームに組み込むこと。フレーズに対する素直な期待なのだから裏切ってはならない。

・神経衰弱とババヌキの比較、藤子不二雄作品

 神経衰弱とババヌキ⇒見方によれば、この2つは同じもの⇒始まりと終わりのカードの状態が入れ替わっただけで状態変化の条件(2枚揃えば処理)も含めてほとんど一緒⇒この2つは同じものだと言われない。

 藤子不二雄作品・・・登場人物と超能力の介在という構造部品の共通性があるにもかかわらず、超能力の理由づけが違うだけでキャラクターの造型や目的が変わり、他の登場人物の役割や配置が変わり、解決するトラブルに違いが出る。
(理由づけ:未来の技術、忍術、宇宙人から授けられる、オバケ)

 ※すでに評価が定まった優良コンテンツを分解し、再構成すれば、新しい企画は組合せの数だけいくらでもできる。ただし、それを別物として成立させるにはオリジナリティがひとつは必要。

・ボリショイサーカスから学ぶ

 ※同じ部品で構成されていても、そこに加わる気の利いた一工夫、一手間で見え方も評価もガラリと変わる。その工夫、一手間もそれぞれ検証してみれば驚くほどの内容ではないが、一流のプロはそれを誠実に手間を惜しまず迷いなく続ける。

・1コインでできる分解の演習

 大ヒットした映画で、自分の心が動いたシーンをピックアップし、そのシーンで感動するに至るまでのプロセスを調べる⇒意外なほどシンプルだったりするし、構成力を知る勉強になる。
※部品に解体する練習は、時間と根気さえあれば誰でもできる。

・たとえば百円ショップ

 例えば百円ショップで面白さを感じたら、その面白さの要素をピックアップする⇒そのうち一つを選ぶ⇒ゲームに展開したらどうなるかを創造する。
 ※考えたり想像することはタダ

2.つくる ・・・設計/調整

・着想を企画書に落とす その①

 世代交代をテーマとしたいが、数百年経った時の時代考証は面倒⇒世代交代を短くしてしまえ⇒「短命の呪い」の設定

 「子供をつくり、世代交代」⇒セックスは避けて通れないが、ゲームソフトの倫理規定上マズい⇒人間同士のセックスを描いてはならないなら、神との交配・・・という設定

 ※まずやりたいこと(この場合は世代交代による感動)があって、それを具体的に表せるシステムを考え、そのあとにシステムを不自然に見せない設定を作り、最後に設定に会うシナリオやキャラクターを追加する。

・システムでドラマを生成する

 子が親を超えるというドラマをシステムで表現したい⇒キャラクターの成長と遺伝による成長、親が倒され、子が倒せるボスの出現場所・タイミング・強さで実現する。

 ※ゲームというメディアではテーマをシナリオで語るのではなく、目に見えないシステムやバランスをコントロールすることでプレイヤーの体験を通して伝えることもできる。

・戦闘の意味づけ

 戦闘を子供の成長を見守る場にする⇒自陣に前列と後列を設け、狙われやすさとダメージの大きさを変える⇒ひ弱な子供を後列に、体力のある大人を前列に⇒子供が成長すれば大人の立場で前列に⇒キャラクターの成長を感じる

 戦闘を子供の性格や特徴を見つける場にする⇒戦闘の中で子供の行動を見極め、将来的な役割を考える

 戦闘を一族の絆を確認する場にする⇒同じ攻撃魔法を習得している家族で「術の併せ」をできるようにする

 戦闘を次世代に残し伝えるもの、技術を見いだす場にする⇒戦闘中に覚えた技に覚えたキャラクターの名前を含める形にし、子供一人のみが継承できる一子相伝のしくみとする。

 ※戦闘の位置づけでテーマを語ることができる。

・着想を企画書に落とす その②

 狩猟とテーマとしたゲームにする⇒前例がない場合(当時)、どう伝えるかを考えた⇒結局伝え方はわからなかったが、なぜ狩猟をするのか?の理由を考えた⇒「RPGは世界をバーンと救わないと燃えません」とダメだし⇒数年後に巨大隕石が衝突して壊滅する惑星から動物を救出するストーリーに⇒「美少女の出ないゲームは売れない」とダメだし⇒狩猟に美少女を出しても問題ないので追加⇒「システムが多様過ぎて初心者が遊ぶための敷居が高すぎる」とダメだし⇒練習シナリオを別途用意(ただし、グラフィックデータ等は使いまわし)⇒やっと完成

 ※さまざまな人の意見に左右されているが、「狩猟」という基本テーマは揺らいでいない。面白さの根幹にかかわる部分は譲ってはいけない。

・着想を企画書に落とす その③

 複数人の男が複数人の女性を奪い合うゲーム⇒生々しすぎるため「王様選挙」という建前をつくり、二股三股をかけて女性を奪い合う正当な理由をつくった「偶然」を恋愛の本質と考えた⇒サイコロを多様するシステムとした

 ※人によってテーマをどう受け取るかは異なり、ゲーム作成のコンセプトが異なる。コンセプトが違えばシステムも違うようになる。

・未知なるものを体感させる

 よくできたゲームでは画面の中の自分のキャラクターが敵の攻撃を受けた時に「痛っ」と叫んだりする。

 日常的に理解できる痛みの「進行」を虫歯の進行のイメージで考えてみる。

 「死に物狂い」を表現するために見本となる必死な人を探し、ドーピングをしてまで金メダルを取ろうとしたベン・ジョンソンをモデルとして、デメリットも大きいドーピング的な要素をゲームに盛り込んだ。

 ※「痛そう」ではなく「痛っ」と言わせる独自性の盛り込み方。これには目に見えないバランスが重要。

・イメージを数字や式に落とす

 世代交代をメインとしたゲームの開発に当たって、カールルイスの息子と自分の息子が50メートル走でどれくらい差が付くかを考え、アンケートを取ってみる。⇒遺伝によって伝わる素質のイメージをつかむため

 ※正しい答えがないイメージを何とかしなくてはならない状況でも何とかして答えを出す。

・ゲームにおけるシナリオの役割

 ゲームにシナリオを付ける一番の理由はユーザーが欲しているからだが、それ以外に制作側のやむにやまれぬ都合
  ゲーム中の「ありえないこと」を誤魔化す方便。

商品にストーリーをつけることで消費者に理解しやすくする役割。四角い点を画面の左右に打ち返すゲームに「テニス」「ホッケー」と名前を付けることで直感的に理解しやすくする。「アルプス」の水、「灘の」酒、「NASAで採用されている」「○○プロも使っている」商品

保険としての役割。長い時間ゲームをプレイし続けると投げ出したくなることもあるが、物語の先の展開や謎が残っていれば投げ出す可能性が低くなる。
ゲームを終わらせる方便とその際の達成感を大きくする役割。適当なところでゲームは終わりにしなければならないが、「あなたは世界を救った」で終わりにできる。

・キャラを立てる

 アニメや漫画の「キャラの立て方」はそのキャラの行動や言葉を見聞きした外からの情報だが、ゲームの手法はそれに加えてプレイヤーがキャラを操作してみて実感する内からの情報もある。

  持てる荷物を巨漢は小柄な女の子の二倍持てるようにして、荷物の欄を開くたびに二人の体格差をイメージできるようにする。

  小柄な女の子は戦闘で「攻撃」ができない設定として、戦争で両親を失ったことで他者を傷つけることを恐れていることを表現する。ただ、それだとただの使えないキャラになってしまうので、主人公よりも攻撃力のあるお供の犬をセットにし、女の子自身も専用の魔法を使えるように設置。最後の方でトラウマを克服し、「攻撃」ができるように変更。

  王道のアニメやマンガでは、主人公の決死の活躍+仲間の献身的な協力でピンチをしのぎきり強敵に辛勝する。
  ⇒戦闘の敗北条件を主人公の死亡とし、最終決戦用の武器を主人公専用で使うと体力が激減する設定に。
   ⇒最終決戦は設定として王道を実現する戦い方になる。
 ※工夫次第でいろんなやりようがある。

・珠玉のメッセージ

 「へんじがない ただのしかばねのようだ」は最高の汎用メッセージ

 ①基本情報:あなたが発した目の前をチェックするというコマンドは確かに受け取ったという返答。その結果有用な情報も目ぼしいアイテムも発見できなかったという報告

 ②キャラ立て:「へんじがない」でプレイヤーが声をかけたことがわかる。剣でつついたり軽率に直接触れたりするキャラではないことが分かる。

 ③世界観の情報:この世界にはただの屍ではなくゾンビのようなアクティブな屍もいること。この世界では迷宮に転がった屍はさほど珍しくなく、無茶な冒険は危険だということ

 ④行動のヒント:「今回は」有用な情報も目ぼしいアイテムも見つけられなかったが、得られる屍もある。

・原因を探る ―調整作業―

 開発の最終段階で「この敵が強すぎる」「この謎が難しい」という意見が上がった場合に手直しを考える。ここでいう手直しは単純に敵を弱くしたり謎を簡単にしたりすることではない。

例えば中ボスBBが強すぎる、という不満が上がった場合・・・

 BB戦に突入するとき、プレイヤーキャラは鋼の剣を装備していると想定していたが、実際に使っていたのは一ランク下の銅の剣だったため、BBに有効なダメージを与えられなかった⇒鋼の剣の値段を下げるか、BBの出現ポイントまでに遭遇する敵の落とす金を上げればいい。

 BBの連続攻撃はプレイヤーキャラの体力が4割以上あればしのげると想定していたが、実際には一撃で5割を奪っていた。⇒BBの連続攻撃はプレイヤーのうちその時点で一番体力が残っているキャラを狙うか、体力が5割以上あるキャラにしか連続攻撃が出ないように制限すること。安易に連続攻撃を弱めたり、無くしたりしないこと。

 敵の素早さを下げる補助的な魔法をかけることで、BBの連続攻撃を無効化するという戦術をプレイヤーは使うと想定していたが、プレイヤーは地味な補助魔法に目もくれなかった。⇒「BBは補助魔法に弱い」と攻略のヒントを教えてくれる人を最寄りの町に配置する。

 BBと遭遇するまでにプレイヤーキャラは30レベルまで成長していると想定していたが、実際は24だったため、全く歯が立たなかった。⇒この場合、修正が必要なのはBBではなく、BBと遭遇する前のエリアの敵。この前のエリアの敵を強化してその分経験値を増やすこと。さもないと、BB戦後のエリアでもっと耐え難いバランスになる。

 プロジェクトが切羽つまっていて、早急になんとかしないといけない場合の対処法⇒対BB専用兵器「BBキラー」を追加する。

 ※戦闘周りの仕様を各段階で、最終的なバランス調整の方針や起きそうなトラブルへの対処法も考慮しておくこと。

・欠点や失敗を活かす

 欠点や失敗を「個性」と捉え、その個性をユーザーに認めてもらう、できれば好きになってもらう方法を考える。その方法が見つかったら今度はそれをわかりやすい形にする方法を考える⇒広告のキーワードやキービジュアルを探す作業と同様。

 プレイステーションの導入期、3Dにシフトしていた時期で2Dというだけで「古くさい」「時代遅れ」という風潮の時、開発を担当する会社が3D周りの開発環境の整備が他社より遅れていた⇒開発会社にはこれまでに借りがあったため、変更することはしたくなかった⇒「古くさい」イメージを強調して逆にセールスポイントに⇒平面、戦闘、古い・・・から合戦絵巻風にした。

 プログラマーがユーザーの使い勝手を考えて取り入れたショートカットボタンが取扱説明書に載っていなかったことがあった(連絡を受けたのは取扱説明書の入稿日当日)⇒取説の欄外の余白に追加しようと提案したらデザイナーに反対された⇒余白に描きで書くことにした(いかにも後から追加したのがバレバレ、であること自体をユーザーに楽しんでもらうことにした)⇒プレイのコツや制作裏話も追加した⇒ユーザーに大ウケ

・失敗することについて

 桝田氏の失敗事例

  ボードゲームで常に緊張感を持たせられ、一度に考慮しないといけない要素が多すぎてプレイヤーの直感的な処理では戦術が追いつかなかった。CP(コンピュータ・プレイヤー)の思考ルーチンもついていけず処理が遅くなりテンポが悪くなった。

  サイコロを使った運の要素が多いボードゲームで、6:4の割合で勝利すれば優勝できるように調整したが、ユーザーは CPに4敗するのが我慢ならず、リセットしてやり直すケースが多く見られた。そのせいで予想プレイ時間より大幅に時間を取られるゲームとなった。

  主人公がお姫様をサポートする中間管理職というゲームで、中間管理職の苦労や悲哀をわざわざゲームで味わいたくないという感覚と、積極的な引き分けを戦術とする戦闘システムの面白さが伝わらなかったことで失敗。

  プレイヤー一人ひとりが唯一無二の竜を作り出すことをメインとしたゲームで、プロデューサーの意見を飲んで竜の種類を半分にし、他の要素を底上げすることに同意して失敗&後悔。
  

3.かんがえる ・・・哲学/裏技

・テレビゲームとは何か? その① 初めてのテレビゲーム

 桝田氏がはまったゲームは1976年前後の単純なテレビゲーム。ハマった理由は・・・

 ①ユーザーが介入できるのはテレビのスイッチのオンオフとチャンネルと音量の変更くらいだったのが、自分の意思を画面に反映される、という点

 ②自分のやったことの微妙な違いで、ミスや偶然も含めてその後の展開が変わる、という点

 ③勝敗の記録が累積され、自分の工夫や経験によってより良い点数が出る、という点

 ④友達や兄弟と対戦できる点

・テレビゲームとは何か? その② それは偶然か?

 テレビゲーム向きのネタ⇒「趣の異なる前向きなジレンマが適度なストレスをともなって、適当な頻度で繰り返しプレイヤーに提示され、状況が変わりえる構造を有する事象」

⇒その例は・・・

 「回転寿司」

胃の容量も財布の中身も有限。仮に10皿で満腹・予算2,000円以内で、メニューが50種類を超える場合、組み合わせだけでも1兆を超える。食べる順番まで考慮すればもっと。回転寿司の客はこの組み合わせの中から1通りの組み合わせを選択している。1皿あたりの意思決定は、寿司が目の前を通り過ぎる数秒間の間に行われる。たいていの客はそこそこ満足し、リピーターとなるが、完璧な選択はありえない。ハマチの皿を選ぼうと思ったら向こうから美味しそうなホタテが見えたら・・・今取らなければ来ないかもしれない、注文すればいいがそれまでにこの情熱は覚めるかもしれない・・・となった時にアナゴがきたり、そのアナゴで10皿目なら甘いもので〆るのか・・・という事象

 「野球」

投手の交代や打者の交代、その監督の采配などにハラハラしながら観る、ひいきチームが負けても「惜しかったなぁ、でも次こそ」と思う・・・という事象

 ⇒「回転寿司」や「野球」で起こる数々の事象は「偶然」だが、システム上当然引き起こされる「偶然」。そのシステムが重要。

・テレビゲームとは何か? その③ しょせんはゲームだ

 桝田氏はゲームが大事なことを疎かにすることが嫌い。「あまりに面白くて久しぶりに徹夜して、学校をサボっちゃいました」という手紙が来たら、不愉快になる。「このバカにも親がいて、その親はこのバカのために学費を稼いでいる。なのに、その苦労して稼いだ学費をたかがゲームのために無駄にしている。そして、おそらくはそのことを親は知らない。。。」

 ゲームはスイッチを切らない限りいつまでもプレイヤーの相手をしてくれる。パチスロなどと同様で、やめにくいような演出を意図的に組み込める。作り方遊び方を間違えると歯止めがきかない。⇒桝田氏はところどころにちょうどいい切れ目をいれ、今遊んでいるものがしょせんゲームであることを定期的にプレイヤーに意識させる工夫をしている。

・テレビゲームとは何か? その④ 小説や調査との比較

 小説との比較:小説は作者が「私はこんなことを考えているんです」という「私は」のメディア。テレビゲームは「あなたは」のメディア。「あなたはどんな人ですか?」「こんな状況になったとき、どう考えますか?どう動きますか?」と問いかける。ほとんどのエンターテイメントは「私は」のメディアであるなかで、テレビゲームは「あなたは」の珍しいメディア。気を遣うポイントは180度違う。

 調査の集計作業との比較:調査の集計作業とゲームデザインはアプローチが逆転しているだけでよく似ている。調査の集計作業は実際に起きた数字からそこで起きていること、起きようとしている状況を想像すること。ゲームデザインは想像した状況を数字で表すこと。

・思考のレッスン その① 幻の天外魔境Ⅲとハルカ

 天外魔境Ⅲの没シナリオを再構成して小説にした話。一度作ったものが没になっても別の形で実現することができる。

・思考のレッスン その② 最近気になっているテーマ“揺らぎ”

 限定性を持たせた三すくみの要素と、その要素を活用した市場を用意することで、一つの要素が減れば別の要素に影響する、また減るという噂を流すだけでも市場が動く、そんな揺らぎのあるゲームが当たるかもしれない。

・思考のレッスン その③ 面白いと感じる戦闘の条件

 「面白いと感じるゲームの条件」と言えるほど普遍性汎用性が高く、桝田氏もチェックシートとして使っている条件。

 ①バランス:敵味方の戦力バランスは、プレイヤー側がやや有利。ただし判断ミスや事故が2、3重なれば確実に敗北に追い込まれるくらいが理想的。

 ②情報:想定するプレイヤーの分析能力に見合う、戦闘前、中、後の判断に必要な敵味方の情報が適時、過不足なく提供され、かつ対応を考える余地が十分にある。

 ③参加意識:戦闘中、能動的、意識的に戦闘行動を選択でき、その結果が反映される。

 ④バリエーション:戦闘の条件(敵味方の構成、戦術、戦力)にバリエーションが多く、戦闘が単調にならない。

 ⑤操作環境:ボタン配置、コマンド配置がわかりやすく、レスポンスがよくテンポがいい。

 ⑥リターン:戦闘に勝利することで得られるものが、戦闘のリスク、戦闘前の投資にほぼ見合う。

 ⑦戦闘の位置づけ:戦闘以外のシステムとの循環的な相互作用があり、その作用が意識できる。逆に言えば、戦闘に通行の障害、経験値稼ぎ以外に意味がある。

 ⑧演出:グラフィック、動き、視点、色調、音楽、効果音、台詞、コマンドの配置等で、戦闘の臨場感を演出できている。

 ⇒この8項目に加えて他のゲームにないオリジナリティがあれば、完璧。

・遊びのルールを創造する

 子供のころにやっていた、参加するメンバーに応じて遊びのルールを柔軟に変更したり、ハンデをつけたり、新しいことを考えたりすることを思い返してみること。