【LIFE SHIFT2 100年時代の行動戦略】レポート

【LIFE SHIFT2 100年時代の行動戦略】
アンドリュー・スコット (著), リンダ・グラットン (著), 池村 千秋 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4492534431/

○この本を一言で表すと?

 人生100年時代で個人や社会がどう動くべきかの提言の本

○よかったところ、気になったところ

・前作の「LIFE SHIFT」の続編ですが、2人の著者のメイン・サブが入れ替わっているからか、前作より現実的な路線の記述になっているように思いました。
前作が日本で売れたからか、金沢市の若者カップルがサンプルとして各章で登場し、日本の描写も多かったように思いました。

第1部 人間の問題

・テクノロジーの変化のスピード、長寿化から、過去の「教育→仕事→引退」の3ステージが通用しない時代になっていることが述べられていました。

第2部 人間の発明

・個人として検討すべき事項として、自分の人生のストーリー、学習と移行の繰り返し、人間関係づくりについてそれぞれ章立てて述べられていました。

・寿命が長くなり、健康寿命自体も長くなることから、暦年齢で考えるより身体年齢で考えること、長期スパンで考え、マルチキャリアにならざるを得ない時代に適応する必要があることについて述べられていました。

・20代前半までの教育に終わらず、繰り返し学習し、時代の環境に応じたキャリアの移行ができるようになる必要があると述べられていました。

・パートナー間の人間関係、コミュニティへの参加等、人間関係の構築がより重要になっていくと述べられていました。
世代で考えることの恣意性や、異世代間での交流の効用なども紹介されていました。

第3部 人間の課題

・社会に対する提言として企業、教育機関、政府についてそれぞれ章立てて述べられていました。

・3ステージでは通用しない時代になっても企業が3ステージに適した体制から変わらなければ、その歪で個人が苦労すること、企業も適応できなくなっていくこと等が述べられていました。
企業が長期的視野で年齢差別をやめ、家庭生活を応援し、学びを支援することについて述べられていました。

・繰り返し学習と支援を繰り返すことを教育機関が支援する方策と事例が述べられていました。

・政府が制度変革や方針を打ち出すことの重要性について述べられていました。
政府が社会に必要とされるスキル需要などについて調査し、それを公共財とすることなどは重要だと思いましたが、その能力を持った政府になれるかどうか、日本のデジタル関連の施策を見ていると厳しそうだなと思いました。

○つっこみどころ

・寿命が伸びるということと労働する期間が伸びることを直結し、教育は仕事のためにあるというこの本で言う3ステージの固定観念が100年時代でもそのまま適用しているように思いました。
教育・学習が仕事のためにあるとする考えは「文系不要論」などに繋がりそうだと思いました。

・良い事例として挙げられているイギリスやスウェーデン等の施策や企業の施策が随所に出てきますが、その効果の分析などはあまり出てこないので説得力が薄いように思いました。

・テクノロジーが雇用減少につながらないということが論拠になっているようですが、過去の技術革命が新たな雇用を生み出したことの延長で考えられていて、現代・近未来のテクノロジーが雇用を生み出さない可能性が検討されていないように思いました。

・中高齢者の強みとして高齢になっても蓄積を続ける結晶的知性が挙げられていましたが、これは知性を積み重ね続ける習慣を維持してきた者にしか当てはまらなさそうに思いました。
蓄積し続けるのは偏見や悪癖もあるでしょうし、価値のある結晶的知性を有する高齢者は希少なのではと思えます。

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