【歴史が面白くなる ディープな戦後史】レポート

【歴史が面白くなる ディープな戦後史】
相澤 理 (著)
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○この本を一言で表すと?

 一橋大の試験問題をベースに戦後史を解説した本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・一橋大については、大学院がハーバードと提携していることや、一橋大の経営学者の本を読んだことがある程度で、あまり大学自体について詳しくなかったのですが、一橋大のレベルがかなり高く、実学を優先する校風ということを初めて知りました。

・試験問題とその解答を見て、この問題の答えをかけるだけの知識を身につけるのはかなり大変そうだと思いました。
「詳説 日本史研究」を読んでもここまでの内容は出ていなかったので、独自の勉強も必要で、かなりの難関ということが実感できました。

第1部 占領下の日本

・戦後のGHQと政府のやり取り、せめぎ合いに関してかなり詳細に述べられていました。
平和条約で、当時のアメリカと中華人民共和国、中華民国の関係で調印に参加しなかったり、状況が変わって別の条約では参加したりと、国家間のパワーバランスが如実に出ているなと思いました。
財閥解体の実施内容やその不徹底度合いについて詳細に触れているところも印象的でした。

第2部 保守政権の誕生

・自民党の結党理念が憲法改正と安保改定であったことは初めて知りました。後者の安保改正については、片務的な内容から双務的な内容に改定できたものの、その手段として強行採決を実施したせいで、日和見的だった国民が反発したという流れは、「空気」に左右されるいかにも日本らしいところだなと感じました。

第3部 高度成長期の内政と外交

・外貨の固定相場と戦争需要、財閥解体不徹底等によって経済成長できたことと、農地改革が徹底されたことで零細農家が現代まで残っていることの対比が皮肉られていました。

・沖縄返還と基地問題、ニクソン・ショックとオイル・ショックなど、各年代に大きな転換点があり、当時の政府がうまくいくかどうかがかなり外的要因に左右される大変な時代だなと改めて思いました。

・戦前に自作農や労使協調などの土台ができて、それが戦後に結実していったという話は初めて知り、なるほどと思いました。

○つっこみどころ

・吉田茂が安保条約の調印で、池田勇人の経歴に傷をつけない配慮を見せた箇所について、著者の見解では吉田茂が日米関係の構築という宿題を後の世代に託したとみているそうですが、深読みのし過ぎではと思えました。
単純に自分の後を継ぐ存在への配慮でしかなかったように思えます。

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