【HUMAN+MACHINE 人間+マシン: AI時代の8つの融合スキル】
ポール・R・ドーアティ (著), H・ジェームズ・ウィルソン (著), 保科 学世 (監修)
https://www.amazon.co.jp/dp/4492762469/
○この本を一言で表すと?
人間とマシンの協働のあり方、未来とそのために必要な人間側のスキルについて述べた本
○面白かったこと・考えたこと
・AIが今後どのようにビジネスで利用されていくか、その傾向や今後について述べられている本でした。
RPAの本でも書かれていた方向性の延長にあるような印象も受け、こういった方向で世の中が動いていくのかなと思いました。
・実際にどのようなマシン・AIの導入がなされているのか、その実例が多く挙げられていてよかったです。
イントロダクション AI時代における人間の役割とは
・人とマシン・AIがどのように協働していくか、というこの本で伝えたいコンセプトの概要が紹介されていました。
・第1の波が「プロセスの標準化」、第2の波が「プロセスの自動化」で、今は第3の波「適応力のあるプロセス」がきているのだそうです。
<Part1 「人間+マシン」の未来を現在から考える>
・工場や倉庫で動いているロボット、バックオフィスで動くRPAとその延長のAI、R&D分野でも仮説やデザインの自動生成行うAI、顧客を認識し対応する店舗のAIやアレクサなどの顧客の下で動くAIなど、様々な分野で動くAIやロボットについて紹介されていました。
第1章 自己認識する工場
・工場でメンテナンスタイミング、製品の物理的変化の計測、オペレーションのモニタリングなどを自動化して成果を上げている事例や、倉庫で荷捌き、配置ができるロボット、サプライチェーンや農業も自動で状況に応じて動く仕組みなど、様々なシチュエーションでマシン・AIが活用されている様子が述べられていました。
第2章 会計業務をするロボット
・バックオフィスにおいて、業務の一部を自動化するRPAを超えて、自然言語を理解して作業できるロボットや、AIを中心においた業務改革などについて述べられていました。
第3章 究極のイノベーション・マシン
・仮説やデザインの自動生成や仮想空間における実験、製薬業界での薬の組み合わせのマッチングなど、R&D分野で活用されているマシン・AIについて述べられていました。
第4章 フロントオフィスにボットがやってくる
・小売業など、顧客との接点でも自動認識や、情報検索や分析などを実施し、店員の能力を拡張する方向でのマシン・AIの活用について述べられていました。
<Part2 ミッシング・ミドル―AIで業務プロセスを再考する>
・人間だけの活動(主導・共感・創造・判断)とマシンだけの活動(適応・予測・反復・トランザクション)の間にある人間とマシンのハイブリッド活動を「ミッシング・ミドル」として、人間によるマシンの補完(訓練・説明・維持)とAIによる人間へのスーパーパワー付与(増幅・相互作用・具現化)の2分野に分けて紹介していました。「MELDSフレームワーク(M:マインドセット、E:実験、L:リーダーシップ、D:データ、S:スキル)」が提唱され、ビジネスにAIやマシンを導入していくための考え方やスキルが挙げられていました。
第5章 アルゴリズムを正しく設計する
・人間がマシンに対して補完する方向で必要とされる事項が述べられていました。
マシン・AIの振る舞いをチェックして訓練すること、マシン・AIが利用されている内容や意味を他者に説明したり、提示された結果を解説すること、マシン・AIが継続して正しく動くかどうかをモニタリングし、メンテナンスすることなど、マシン・AIを活用する上での人間の役割について書かれていました。
第6章 普通の人々が素晴らしい結果を生み出す
・マシン・AIを活用して人間の能力を拡大する方向性について述べられていました。
ビッグデータからデータを検索し、分析したり、拡張現実でサポートすること、質問されたことに対する対応内容を生成したりすること、物を運ぶ力や作業をアシストすることなどが書かれていました。
第7章 業務プロセスを再設計する
・MELDSフレームワークのM(マインドセット)、E(実験)、L(リーダーシップ)、D(データ)の4つの要素について詳しく述べられていました。
・マインドセットについて、マシンやAIが活用できる場所を発見し、協働して解決できる方法を探し、解決方法を他の場所に展開していく能力だと述べられていました。
・実験はマシン・AIを取り入れられる場所に実験的に導入し、成功・失敗にかかわらずその結果から学べる能力だと述べられていました。
・リーダーシップはマシン・AIの導入が心理的に避けられるような場所や、倫理的な問題を検討して解決する能力だと述べられていました。
・データは様々な分野・範囲のデータを活用して問題を解決する能力だと述べられていました。
第8章 人間とマシンのコラボレーションを発展させる
○つっこみどころ
・大手コンサルティング企業のアクセンチュアが出版している本だからか、若干の我田引水な内容が散見されました。
日本法人の者が書いた本よりは知見がまだ客観的か広範なのでましでしたが。
・AI、マシンが雇用を奪うのではなく、人間の働き方が変わるというコンセプトでしたが、現在と近い未来はそうだとしても、その先はやはり人間が必要なくなる未来を示しているように感じました。
この本で人間が必要とされているところは、近々は人間のフォローが必要でも、いずれAI・マシンに代替できる内容ばかりだったように思えました。
アンマッチで必要な職種にむしろ雇用が足りていないという話が出ていましたが、逆に雇用されるニーズがなく職に就けない者の数は書かれていませんでしたが膨大な数になりそうです。
人と機械との競争ではなく、人の中で適応できる人と適応できない人の競争は激化し、後者が淘汰されていきそうに思いました。
・第8章で挙げられている8つのスキルの内容が重複していること、特に「判断プロセス統合スキル」はその名称と解説の文章がまったく一致しておらず、解説では「AIの振る舞いを判断する能力」とされていました。