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【みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」】レポート

みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」
日経コンピュータ (著), 山端 宏実 (著), 岡部 一詩 (著), 中田 敦 (著), 大和田 尚孝 (著), 谷島 宣之 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4296105353/

○この本を一言で表すと?

 完成したみずほ銀行システム統合の提灯記事と、過去2度の大規模障害解説の本

○面白かったこと・考えたこと

・「みずほ銀行のシステム開発」と言えば、IT業界ではシステム面でもプロジェクト面でも地獄のような仕事内容だと半ば都市伝説のようになっていて、月の残業時間が200時間を超えても「みずほのプロジェクトよりマシ」と、更に底があるのだということが慰めになるような話題でした。
実際にどのようなシステムで、どのような開発の進め方がされているのかを知りたくてこの本を購入しましたが、当時の実態がわかってよかったです。

・第1部は別として、第2部と第3部はかなり踏み込んで、一雑誌社として限られた情報源から実態を分析し、記者会見でみずほ側の経営者層に突っ込んだ質問をしていたり、実態を明らかにするために労力が割かれていることがわかる良い記事だなと思いました。

第1部 IT業界のサグラダファミリア、ついに完成す

・古いシステムから切り替えできていなかったみずほグループのシステムを全面的に新しく作り直し、以降が完了するまでの話と、新システムの構成などについて書かれていました。

・業務要件の洗い出し、業務フローの整理、システム構成の再構築、一括処理から都度オンライン処理への切り替え、単体テストから結合テスト・総合テスト・ユーザー受け入れテストまでのスケジュールなど、プロジェクトの概要が述べられていました。

・開発完了からシステム移行にかけての計画が十分な期間を確保し、計画が練られた上で実施されていたこと、業務がかわることについて、講師の教育から全社的な教育・導入まで計画され、実施されていったことなどが述べられていました。

・まずグループ向けのAPIを用意し、社内用システム開発を容易にしたこと、外部業者向けのAPIも準備していること等、フィンテックや新サービス導入等への対応も検討されていることが印象に残りました。

・社長インタビューで、過去の失敗について経営陣の責任について曖昧にしているところは、先人の批判ができない古い体制の銀行の悲哀がにじみ出ているなと思いました。

第2部 震災直後、「またか」の大規模障害

・震災直後のテレビ局の呼びかけによる義援金の振り込みで、社内でも把握できていなかったシステムに設定されている限界値を超え、異常終了してバッチ処理が終了できず、その事後対応も誤ってATM停止・振込処理ミスなどに繋がっていった泥沼の様子が詳細に解説されていました。

・異常発生時、大規模障害時のマニュアル・対策等が用意されず、経営陣もどのような事態なのかを把握するのに時間がかかり、また手作業でフォローするなどの誤った対策が更なる障害を発生させていくなどの人的なミスの影響の大きさなどがよく伝わってくる内容でした。

・システム障害特別調査委員会が発足され、三十の不手際が指摘され、この不手際が「情報システムの仕様や設定についてのもの」「システム運用に関係するもの」「リスク管理についてのもの」「緊急体制に関連するもの」の四種類に分類され、それぞれ解説されていました。

・根本的な原因はシステム部門ではなく経営陣のIT軽視、ITへの理解不足だと断言されていて、費用とリスクを嫌いシステム刷新の先送り、組織としての基本動作の誤り、システム部門との対話の怠り等が指摘されていました。

第3部 合併直後、「まさか」の大規模障害

・合併発表時に「IT活用」を連呼し、情報システムの統合の困難さを軽視している三行の頭取の様子を日経コンピュータの記者が不安視し、記者会見で質問をしたもののまともな回答が返ってこなかったためにより不安になり、経過を取材していったという経緯は面白いなと思いました。

・三行の主導権争いや三行のシステム・ベンダーの仕事獲得争いで不毛な会議や報告を重ね、CIO不在の経営会議でシステム開発を主導するどころか意見がまとまらないままで、発表したシステム開発案が無理だとわかり、RC(リレーコンピュータ)で各システムを繋いで合併時はやり過ごそうとして、富士銀行のシステムだけがネットワークにアクセスできなくなり、大規模障害に繋がり、合併当初からの不安なスタートに繋がったことが書かれていました。

○つっこみどころ

・第1部は、IT業界の人から見ると技術やシステムの開発についての言及が弱く感じ、IT業界以外の人から見ると基本的な用語の説明が省略されていてわかりづらく感じるような、中途半端な深さの内容になっていると思いました。

・第1部は、関わった担当者の発言等が載っている分、みずほグループからの確認・校正を受けたからか、ネガティブな要素がほとんど載っておらず、みずほ側に忖度した内容の提灯記事のようだと思いました。

・第1部の、「MINORI」の工数35万人月の内訳、プロジェクトが延期した要因など、詳しく知りたい内容が載っていませんでした。
何か問題があったことを書いている部分でも「対立は慎重に調整した。苦労したが何とかなった」というような無味無臭な記述で誤魔化されていてがっくりきました。