【民法改正の真実─自壊する日本の法と社会】
鈴木 仁志 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4062181614/
○この本を一言で表すと?
民法改正手続に関われなかった人の怨みがこれでもかと込められた批判本
○この本を読んでよかった点・考えた点
・民法改正手続きがかなり強引に進められていることが、過剰なほどに集められた記録や言行録で裏付けられていて、民法改正手続きが一方的に進められている実態について知ることができました。
・会社法改正の時も三角合併を容易にする条文など、アメリカの圧力が分かるような内容がありましたが、民法改正においてもそういった圧力があったということを初めて知りました。
・第五章と終章と補論でかなり詳しく内田貴氏の意見を分析していて、確かに偏っている考えを持っているかもしれないなと思いました。
・約款に対する許容についての改正は確かに濫用される恐れがあって危険だなと思いました。
・ここで批判されている意見を踏まえても、民法を現代化すること自体には意義があると思えました。
その方法や改正内容については今の進め方でよいかどうか、確かに疑問に思えますが。
・アメリカ陰謀論を結論として展開しているところは孫崎氏の「戦後史の正体」に似ているなと思いました。
○つっこみどころ
・本文が250ページ強の本で、189ページまでひたすら揚げ足取りのための記録・雑誌・対談等の抜粋の紹介に終始していて、僻み本・ゴシップ本としか思えない軽い本になりかけていました。
読みやすさ、わかりやすさ、メッセージ性を意識したのかもしれませんが、大いに逆効果だと思われます。終盤の分析の方のボリュームを増やしてほしかったです。
・文章の抜粋や強調したいところを太字にしているところは、説得力を下げている効果しかなかったです。
・法改正で積み上げてきた判例等の実績が失われてしまうというのは言い過ぎではないかと思いました。
・明治時代の憲法の制定や法律の制定のプロセスの話を読んでいるからか、既得権益者を撥ね退けて法制定・法改正を実現するには多少は強引なことが必要になってくるようにも思いました。
この本の著者の主張するように関係者の合意を重視し過ぎると何も話は進まないと思います。
著者は改正反対派なのでそれでいいかもしれませんが。