【ワンクリック―ジェフ・ベゾス率いるAmazonの隆盛】レポート

【ワンクリック―ジェフ・ベゾス率いるAmazonの隆盛】
リチャード・ブラント (著), 滑川海彦 (解説) (その他), 井口 耕二 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4822249158/

○この本を一言で表すと?

 Amazon創業者に関する情報を集積したジェフ・ベゾス読本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・ベゾスが技術に詳しい人間として学生生活を過ごし、技術だけではダメだと考えて金融業界のSEとしての進路を選び、技術屋としてだけではなく、経営者としての考え方も学んで技術も経営もわかる人間になったというのは、マルチスペシャリストの凄みとその実績が分かるような気がしました。

・Amazonは先々の展望を投資家に説明していたために赤字続きでも投資家が離れなかったという話をよく聞き、私もそういう会社だったのだと思っていましたが、この本を読んで、ある程度はその展望によって支持されていたものの、それは上場初期だけで、利益が上がらないまでも売り上げが上がり続けていたために支持されていた会社という印象に変わりました。
投資家に説明できていたという点は特に怪しいなと思いました。
ベゾスが株価が90%下落するまで拡大路線、それから利益重視となったことを予め計算していたというのは話半分に考えるとしても、ある程度そうなったときのシナリオは考えていたのだろうなと思いますし、成長すること自体の重要視とその既存路線を切り替えることができたベゾスはすごいなと思いました。

・アメリカのAmazonと日本のAmazonは進展してきた経緯もサービスの内容も違うということがよく分かりました。

・何かを始める前にテストをして試すという手法が随所にあって(キンドルの前にネット上で書籍を読める機能、など)、リスクに挑む会社であり、かつリスクを最小限に抑える努力もしている会社なのだなと思いました。

・既存業界との競合と利害関係者へ与える損失などの話がよく出てきますが、新しい業態の企業が出現し、その企業が自社の利益のために最適な行動をとることで利害関係者に損失を与えることの功罪に対する価値判断は難しいものだなと改めて考えさせられました。

第3章 就職

・AppleのジョブズやFacebookのザッカーバーグと違って、ベゾスが何社かに就職してそのどこでも実績を上げていった人物だというのはジョブズたちとは違い、既存の場所でも自分で作った場所でも成功に繋げることができる人物なのだなと思いました。

第4章 ベゾス、インターネットを発見する

・P.69~73のオンラインに適合する商品として本を選んだ理由(よく知られた商品であること、市場が大きい、競争が激しい、仕入れが容易、販売書籍のデータベース作成、ディスカウントのチャンス、送料、オンラインの可能性)はよく考えられた検討内容だなと思いました。
事業を始める前にここまでメリットを洗い出せるのはそれまでにいくつもの会社での経験を経たからかなと思いました。

第5章 ガレージの4人組、第6章 優れた書店の作り方、第7章 苦労の波

・スタートアップ企業の最初の規模や無理を通しての作業、事業が拡大することででてくる問題などがいろいろ載っていて面白いなと思いました。
目先の業務に追われると新しいことに着手できないものですが、そんな中でカスタマーレビューやアソシエイトプログラムのようなサービスを考え出して導入できたのはベゾスが大局観を保ち続けることができたからかなと思いました。

第8章 軍資金の調達

・投資会社への働きかけや新規上場時の経緯が分かって面白いなと思いました。投資会社に最初は無理な額をふっかけて、相見積もりをとって評価額を上げるという手法はFacebookもやっていたようですが、かなり綱渡り的なやり取りながらもやっている当事者は面白かっただろうなと思いました。

・上場時に目論見書に「利益はしばらく出ないし損失は拡大していく」とはっきりと書き、その上での既存書店との競争にどう勝つかについて書くことで投資家の支持を得たというのはすごい説得力だと思いました。

第11章 クラッシュ

・ドット・コム・バブルがはじけ飛んで株価が90%下落するという衝撃の後で、コスト削減策に走るというのは当たり前な話ですが、その状態にあっても取扱品目の拡大やサービスの開始などを行っていったのは、すごくタフな経営者だなと思いました。

第12章 ベゾス、キンドルに賭ける

・AppleのiTunesのミュージックストアに影響を受けて、携帯端末の開発者をスカウトして「ラボ126」という研究チームを2004年に開始させ、2007年にキンドルを発売という、ある程度長期に渡る研究後の成果も見込んで動けるのはすごいなと思いました。

第16章 頭をクラウドに突っ込んで

・AmazonがEC2というクラウドコンピューティングサービスを行っているという話は以前クラウドに関するセミナーで聞き知っていましたが、その経緯が分かって良かったです。

第17章 一歩ずつ、果敢に

・ベゾスが「ブルーオリジン」という宇宙研究の会社を立ち上げたという話は知っていましたが、その設立時期がAmazonが設立以来最大の危機に陥っていた2000年だったというのは初めて知りました。
高校時代の夢に手を付けるというだけでなく、NASAから予算を得るほどまでに進めることができたというのはすごい話だなと思いました。

○つっこみどころ

・翻訳者が「スティーブ・ジョブズⅠ・Ⅱ」を訳した人なのでこの本もそれくらい踏み込んでいるのかと期待していましたが、それに比べるとかなりしょぼい印象を受けました。
ジョブズと違ってベゾスが自分の情報を出すことをかなり計画的に限定しているということなので仕方ないのかもしれませんが。

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