【孟子】レポート

【孟子】
貝塚 茂樹 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4061596764/

○この本を一言で表すと?

 「孟子」の抄訳と批判的な見方も含めた解説の本

○考えたこと

・「孟子」の全訳がないことが残念な気がしましたが、「論語」の全訳はかなり読むのが無駄と思えるような箇所が多かったこともあり、「孟子」もある程度抜粋して抄訳で理解しても問題ないのかなと思いました。

・孟子をよく研究している訳者が孟子をかなり批判的に見ていて新鮮でした。

・孔子にしても孟子にしても、他には韓非子などもそうですが、決して成功したわけではない人物の言行録や考えを書いた文書が自己啓発書として現代にまで残っているのは、現代の成功者と言われる人が書く自己啓発書と大きく異なっていて面白いなと思いました。

・「孔子がこんなことを言いました」のような言行録がほとんどの「論語」に対して、対談形式で理由や根拠まで説明しているところは興味深いなと思いました。その点がこの訳本に見られるような批判しやすさに繋がっているような気もしますが、こういったある程度論理的な流れで説明されているのは学ぶ者にとっては有用だったのだろうなと思いました。

・第四巻の「天の時・地の利・人の和」は、何となく「天>地>人」という優劣関係の印象を持っていましたが、逆の考えだったというのは初めて知りました。

・第十巻の「尚論・尚友」に書かれている過去の人物と対話するという考え方は大いに共感できます。

・第十一巻の性善説の話(他人の子供でも危うい状況にあれば助けたくなる)はなかなかうまい例えだなと思いました。反論の例えも同じようにいくらでもできそうですが、主張したいことを例えで表現するというのは効果的だと思わせる内容でした。

・「論語」だと前例主義的な、ある意味宿命論的な考え方が根底にあったように思いますが、「孟子」の第十三巻では人事を尽くした上での運命論的な考え方が書かれていてこちらの方が共感できるなと思いました。

○参考にならなかった所、またはつっこみどころ

・孟子の見栄っ張りぶり、意見の偏りぶりは「論語」で描かれる孔子と比べると人間的にかなり格が下だと思えました。どういう書かれ方をしているかで見方が変わっているだけかもしれませんが。訳者の訳仕方や解説によってよりそういう印象を持つのかもしれませんが、孟子は自分を大きく見せようという虚栄心が大きい小人物という印象を受けました。

・著者の解説はかなり偏っているところがあり、かなり違和感のある訳や解説も見受けられました。

・孟子と他者の対談で「その他者の意見は本来こういう意味も含んでいるから孟子が見当違いである」という解説が多かったですが、その後付け的解釈で孟子を批判すること自体に違和感がありました。

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