【百年の孤独】
ガブリエル ガルシア=マルケス (著), 鼓 直 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4105090119/
○この本を一言で表すと?
ある一族の生滅の物語の本
○この本を読んでよかった点・考えた点
・南米文学というものを初めて読みましたが、これまで読んできた小説のお約束的なものと一致しないからか、かなり読み辛く感じました。
この著者特有なのか、南米文学特有なのかはわかりませんが。面白くないわけではなく、ある程度近代の南米の歴史に沿うように書かれているので、歴史的な流れも見えてとにかく重厚な物語だなと思いました。
・南米にある習俗のお約束なのか、予言や宙に浮く技や天に昇天する話など、現地化したキリスト教の話やキリスト教とは離れた迷信が結構出てくるなと思いました。
著者のオリジナルなのか、南米において一般的に伝えられている話なのか、注解に単語の説明だけでなく背景の説明もあれば親切だったのになと思いました。
・名前を重複してつけたりしているので、かなり登場人物の把握が難しく、「あれ? この人物は銃殺されると予言されていた人では?」と思って前のページを読み返すと別の人物だったりして紛らわしいなと思いました。
ただ、後半になると不思議と頭の中で登場人物が整理されてたまに最初にある家系図を見返すだけで人間関係を把握できるようになりました。
・登場人物の男性の不安定さに比べて、女性の強さがかなり際立っているなと思いました。
息子のために軍隊に立ち向かって面会を通したり独裁者になった孫を叩きまくったりするウルスラや、包容力がありまくるピラルの存在感が際立っていました。
スペインでは女性が全てを回している(イタリアなどでもそうですが)と聞いたことがありますが、スペイン語圏のブラジル以外の南米でも同じようなものかもしれないなと思いました。
・意地を頑固に貫き通す登場人物がたくさん出てくるなと思いました。また、恋愛に殉じて死ぬ男がどの年代でも出てくるなと思いました。
・ある人物が自分の感情の大きさに流されたりする話が全体的に散りばめられているなと思いました。
いかにも物語的なパターンもあれば、いかにも実際にもありそうなパターンもあり、喜怒哀楽や怠惰が大きすぎて身を滅ぼすということが身近に感じられるような物語だなと思いました。
・どこか人の死が軽いというか誰の傍にもあるという雰囲気が最初から最後まであったように思いました。
・村を開拓していくところなどはいかにもな辺境の風景というカンジでしたが、発展して鉄道が敷かれてバナナ工場ができて、それが寂れてまた辺境に戻っていくという流れが全体を通じて書かれていてこれも栄枯盛衰をうまく描いているなと思いました。
・物語スタートの100年前のできごとがスタートから100年後の物語のラストのできごとにつながるというのはすごい伏線の張り方だと思いました。